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102話 エドワード
◆ ◆ ◆ エドワード
俺が王都に行き、義父である伯爵の屋敷で帳簿を探し出すこと。
アレックス様からの命令は頭を抱えるものだった。
伯爵はかなり疑い深い人だ。
それでも行くしかない。
俺は前触れとして、辺境伯領の鉱山で鉱石が見つかったことを伯爵に手紙で告げた。実はこれは本当の話でまだ王都には伝わっていないが、辺境地周辺ではもう話題になっていた。
そしてコスナー領の鉱山でも、鉱石が見つかるかもしれないと今調べ始めていたところだ。
その話を上手く利用して義父に会いに行くことにした。コスナー領は元々宝石の加工が出来る職人が多い。これは我が領に限らず、鉱山を持っている領地に職人が多いのは普通だ。
うちは特に優れた職人が多いのが強みだ。
辺境伯領と鉱山のことで仕事を共同で始める話が出たので伯爵とも一度話を詰めて辺境伯と話し合いをしたいと伝えれば、喜んで俺を王都へ呼んだ。
普段の伯爵なら王都に俺を近づけようとしなかったのに、とても機嫌が良かった。
思えば王妃様からの命令を上手くこなせたし、麻薬のおかげで大金が転がり込んできたし、さらに辺境伯と共同経営が出来ればさらに大金が入ってくる。
俺を王都に近づけないようにしていたけど、今は警戒心も緩んできているのかもしれない。
俺が記憶を失ってから四年が過ぎ、伯爵も俺が王都に来ても大丈夫だろうと安易に思ったようだ。
コスナー領に住み始めて、伯爵からの命令で髪の色も変えたし、年月が多少俺の容貌も変わっているだろう。
俺はそんなことも知らずに伯爵に言われるがまま貴族らしく生きるために見た目を変えていた。
と言ってもアダムさんは俺を見て気がついたから、わかる人にはわかるものなのだろうが。
王都に着くとすぐにコスナー伯爵の屋敷へと向かった。そこで数日伯爵と話し合いをすることになった。
コスナー領にある屋敷より広い屋敷。
何度か執務室にも入ってそこで話し合いをした。
ある程度家具の配置も覚えたし、書類などをどこに置いてあるかも確認は取れた。
隙を狙って帳簿を探し出さなければならない。屋敷の中が寝静まった深夜、小さな灯りを頼りに執務室へ向かった。もちろん部屋の鍵は掛かっている。
俺は記憶にはないが不思議に鍵がなくても扉を開けられる事をわかっていた。
ピンさえあれば簡単な鍵なら開けることができる。記憶はないが騎士の時、多分覚えたのだろう。
そして、俺は見つけ出すことに成功した。
机の下にあった床板が一箇所だけ蓋になっていた。そこに帳簿……裏帳簿があった。そして王妃様からの手紙も残してあった。
多分何かあった時に自分の身を守るために王妃様からの命令だと言えるように取っておいたのだろう。
もうコスナー伯爵家はどちらにしろ終わりだ。
あまりにも罪を重ね過ぎた。
金に目が眩んで領民を苦しめてしまった。
シャーリーも俺も巻き込まれたのではない、加害者だった。言い訳をしてなんとか自分達は何も悪くないと思おうとしたが、現実は罪から逃げる事は出来ない。
俺はそれを持って部屋を出た。
すぐにアレックス様の使いの者に渡した。
次の日は伯爵と何食わぬ顔で朝食を共にしたが、まだバレてはいないようだ。「」
あと少しここの屋敷にいればコスナー伯爵の罪は確定され捕まるだろう。その時は俺たちも共に罪を問われることになる。
牢に入る事はないかもしれないが、コスナー領で起きた事件の責任者としてなんらかの罰は下される。
今日は少し時間に余裕がある。伯爵は俺が王都で外出するのを嫌がるが、大の大人の俺を無理やり拘束する事は出来ない。
アレックス様の屋敷に俺が忘れてしまった妻だった人がいると聞いた。
どんな人なのか、俺のもう一人の息子はどんな子なのか、どうしても気になってそっと見に行くことにした。
もちろん会えるなんて思っていない。だけど……もしかしたらひと目だけでも見ることができるかもしれない。
そんな期待をしてアレックス様のタウンハウスへと向かった。
王都の街並みは一度結婚前にシャーリーの護衛で来た時以来だが、何も思い出す事はない。
記憶を取り戻したとしても、シャーリーとオズワルドを選んだ俺に、今更以前の俺の生活を求める事は出来ない。
もし、シャーリーではなく妻だったラフェという女性を愛していた事を思い出してしまったら、俺は……どうすればいい?
切り捨てたはずの過去、今更思い出すような事はやめた方がいい。わかっていても足は忘れた記憶を取り戻したいと言っているかのように彼女の元へと歩を進めた。
そして、門の前へ行くと門兵に止められた。
「ここは前もって約束した方のみしか入る事は出来ません。貴方はどちら様でしょうか?」
「わたしは……リオ・コスナーと申します。昨日アレックス様に書類を渡した者です、確認していただければわかります」
「ではしばらくお待ちください」
俺は門の前で待たされた。中に入れたとしても誰かに会う必要なんてない。アレックス様はまだ辺境伯領にいるはずだ。
書類を渡した人が誰なのかもわからない。グレン様に会ったところで仕方がない。
それでもタウンハウスの中にいる二人が気になって門からつい中を窺ってしまう。
「ギュレン!ねぇ、はやく」
楽しそうにはしゃぐ子供の声が聞こえてきた。
多分アルバード……俺の息子だろう。
声は聞こえるが姿は見ることができない。
そして戻って来た門兵に「約束を取り付けてまた来てください」と追い返された。
その夜アレックス様の部下が俺の部屋に忍び込んできた。
「今日タウンハウスに顔を出したそうですね?」
「ああ、ちょっと渡した書類が気になったんだ」
「貴方が来てももうあの二人はいません。何かあったらいけないので二人には安全な場所に移ってもらいました。今が一番大切な時期です、あまりウロウロしないで伯爵の動きを見張っていて下さい。貴方自身も騎士だったのですから自分の身は守ってください。
これは忠告です、これから何が起こるかわかりませんので」
そう言われてからしばらくして伯爵が使用人に襲われることになった。
切られてかなりの出血で急いで医者に診て貰うことになった。
そのあとこの屋敷の使用人が数人捕まった。
王妃の息のかかった者達が紛れ込んでいたようだ。
「くそっ、なんでわたしがこんな目に遭わなければいけないのだ」と伯爵はベッドの上で悪態をついていた。
グレン様達は伯爵の部屋の周囲に見張の騎士を置いて逃げられないようにしている。
治療がすめば負傷したまま牢へ連れていかれるそうだ。かなりの傷なのに痛みで弱るどころかなぜ捕まらなければならないのかわからず腹を立てているようだ。
自分は王妃が背後にいるから何をしても捕まるわけがないとまだ思い込んでいるようだ。
もうすぐ王妃も一緒に破滅の道へと向かうのに……
俺が王都に行き、義父である伯爵の屋敷で帳簿を探し出すこと。
アレックス様からの命令は頭を抱えるものだった。
伯爵はかなり疑い深い人だ。
それでも行くしかない。
俺は前触れとして、辺境伯領の鉱山で鉱石が見つかったことを伯爵に手紙で告げた。実はこれは本当の話でまだ王都には伝わっていないが、辺境地周辺ではもう話題になっていた。
そしてコスナー領の鉱山でも、鉱石が見つかるかもしれないと今調べ始めていたところだ。
その話を上手く利用して義父に会いに行くことにした。コスナー領は元々宝石の加工が出来る職人が多い。これは我が領に限らず、鉱山を持っている領地に職人が多いのは普通だ。
うちは特に優れた職人が多いのが強みだ。
辺境伯領と鉱山のことで仕事を共同で始める話が出たので伯爵とも一度話を詰めて辺境伯と話し合いをしたいと伝えれば、喜んで俺を王都へ呼んだ。
普段の伯爵なら王都に俺を近づけようとしなかったのに、とても機嫌が良かった。
思えば王妃様からの命令を上手くこなせたし、麻薬のおかげで大金が転がり込んできたし、さらに辺境伯と共同経営が出来ればさらに大金が入ってくる。
俺を王都に近づけないようにしていたけど、今は警戒心も緩んできているのかもしれない。
俺が記憶を失ってから四年が過ぎ、伯爵も俺が王都に来ても大丈夫だろうと安易に思ったようだ。
コスナー領に住み始めて、伯爵からの命令で髪の色も変えたし、年月が多少俺の容貌も変わっているだろう。
俺はそんなことも知らずに伯爵に言われるがまま貴族らしく生きるために見た目を変えていた。
と言ってもアダムさんは俺を見て気がついたから、わかる人にはわかるものなのだろうが。
王都に着くとすぐにコスナー伯爵の屋敷へと向かった。そこで数日伯爵と話し合いをすることになった。
コスナー領にある屋敷より広い屋敷。
何度か執務室にも入ってそこで話し合いをした。
ある程度家具の配置も覚えたし、書類などをどこに置いてあるかも確認は取れた。
隙を狙って帳簿を探し出さなければならない。屋敷の中が寝静まった深夜、小さな灯りを頼りに執務室へ向かった。もちろん部屋の鍵は掛かっている。
俺は記憶にはないが不思議に鍵がなくても扉を開けられる事をわかっていた。
ピンさえあれば簡単な鍵なら開けることができる。記憶はないが騎士の時、多分覚えたのだろう。
そして、俺は見つけ出すことに成功した。
机の下にあった床板が一箇所だけ蓋になっていた。そこに帳簿……裏帳簿があった。そして王妃様からの手紙も残してあった。
多分何かあった時に自分の身を守るために王妃様からの命令だと言えるように取っておいたのだろう。
もうコスナー伯爵家はどちらにしろ終わりだ。
あまりにも罪を重ね過ぎた。
金に目が眩んで領民を苦しめてしまった。
シャーリーも俺も巻き込まれたのではない、加害者だった。言い訳をしてなんとか自分達は何も悪くないと思おうとしたが、現実は罪から逃げる事は出来ない。
俺はそれを持って部屋を出た。
すぐにアレックス様の使いの者に渡した。
次の日は伯爵と何食わぬ顔で朝食を共にしたが、まだバレてはいないようだ。「」
あと少しここの屋敷にいればコスナー伯爵の罪は確定され捕まるだろう。その時は俺たちも共に罪を問われることになる。
牢に入る事はないかもしれないが、コスナー領で起きた事件の責任者としてなんらかの罰は下される。
今日は少し時間に余裕がある。伯爵は俺が王都で外出するのを嫌がるが、大の大人の俺を無理やり拘束する事は出来ない。
アレックス様の屋敷に俺が忘れてしまった妻だった人がいると聞いた。
どんな人なのか、俺のもう一人の息子はどんな子なのか、どうしても気になってそっと見に行くことにした。
もちろん会えるなんて思っていない。だけど……もしかしたらひと目だけでも見ることができるかもしれない。
そんな期待をしてアレックス様のタウンハウスへと向かった。
王都の街並みは一度結婚前にシャーリーの護衛で来た時以来だが、何も思い出す事はない。
記憶を取り戻したとしても、シャーリーとオズワルドを選んだ俺に、今更以前の俺の生活を求める事は出来ない。
もし、シャーリーではなく妻だったラフェという女性を愛していた事を思い出してしまったら、俺は……どうすればいい?
切り捨てたはずの過去、今更思い出すような事はやめた方がいい。わかっていても足は忘れた記憶を取り戻したいと言っているかのように彼女の元へと歩を進めた。
そして、門の前へ行くと門兵に止められた。
「ここは前もって約束した方のみしか入る事は出来ません。貴方はどちら様でしょうか?」
「わたしは……リオ・コスナーと申します。昨日アレックス様に書類を渡した者です、確認していただければわかります」
「ではしばらくお待ちください」
俺は門の前で待たされた。中に入れたとしても誰かに会う必要なんてない。アレックス様はまだ辺境伯領にいるはずだ。
書類を渡した人が誰なのかもわからない。グレン様に会ったところで仕方がない。
それでもタウンハウスの中にいる二人が気になって門からつい中を窺ってしまう。
「ギュレン!ねぇ、はやく」
楽しそうにはしゃぐ子供の声が聞こえてきた。
多分アルバード……俺の息子だろう。
声は聞こえるが姿は見ることができない。
そして戻って来た門兵に「約束を取り付けてまた来てください」と追い返された。
その夜アレックス様の部下が俺の部屋に忍び込んできた。
「今日タウンハウスに顔を出したそうですね?」
「ああ、ちょっと渡した書類が気になったんだ」
「貴方が来てももうあの二人はいません。何かあったらいけないので二人には安全な場所に移ってもらいました。今が一番大切な時期です、あまりウロウロしないで伯爵の動きを見張っていて下さい。貴方自身も騎士だったのですから自分の身は守ってください。
これは忠告です、これから何が起こるかわかりませんので」
そう言われてからしばらくして伯爵が使用人に襲われることになった。
切られてかなりの出血で急いで医者に診て貰うことになった。
そのあとこの屋敷の使用人が数人捕まった。
王妃の息のかかった者達が紛れ込んでいたようだ。
「くそっ、なんでわたしがこんな目に遭わなければいけないのだ」と伯爵はベッドの上で悪態をついていた。
グレン様達は伯爵の部屋の周囲に見張の騎士を置いて逃げられないようにしている。
治療がすめば負傷したまま牢へ連れていかれるそうだ。かなりの傷なのに痛みで弱るどころかなぜ捕まらなければならないのかわからず腹を立てているようだ。
自分は王妃が背後にいるから何をしても捕まるわけがないとまだ思い込んでいるようだ。
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