【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

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103話

 ◆ ◆ ◆  エドワード

 自分は何も悪くないと悪態をついていた伯爵の容態が急変した。

 ベッドの上には呼吸が荒く生きているのがやっとのように見える伯爵がいた。

「義父上、大丈夫ですか?」
 一応心配しているかのように声をかけた。

「お前……裏……切ったな?」

 今にも死にそうな様子なのに俺を見る目はギラギラとして今にも俺に飛びかかりそうなほどだった。

 多分俺が裏切ったことにより血圧が上昇して怒りがピークに達して呼吸が荒くなっていたのだ。

 この人は簡単には死なないだろう。心の中で苦笑するしかなかった。
 もう同情すらない。

「わたしは貴方を裏切ったかもしれませんがコスナー領の民を裏切ってはおりません。彼らのためにわたしは努力してきました。シャーリーの願いでもありましたが彼らにとって良いと思ったからサリナル商会を領地に受け入れたのです。
 まさか麻薬を売ることになり領民を苦しめることになるなんて……さらに貴方が領民達に薬を売って私腹を肥やすなんて思ってもいませんでした。貴方のした事は許せません。
 それに俺を貴方はいいように利用していたのですね?」

 俺がサリナル商会を受け入れた事は取り返しがつかない。そのために沢山の人たちが苦しんだことも事実。
 俺ももう目を逸らさずに自分の罪と向き合うと決めた。

「ふんっ、わたしには守ってくれるお方がいるんだ。簡単に手出しは出来ない。
 お前の才能をかって娘婿にしてやったんだ。美しい妻を迎えられて贅沢できたし幸せだっただろうが!そんなわたしを裏切りやがって!」

 いつもにこにこと笑う人の良さそうな顔をしていた伯爵がまるで人が変わったように醜悪な姿を曝け出していた。

「一緒に牢へ行きましょう。向こうで治療は継続してくれるでしょう。貴方に死なれては困るでしょうから」

 俺の話が終わるのを待ち構えていた騎士達は部屋の中に入り喚き散らす伯爵を数人で抱き抱えて連れて行った。俺はもちろん抵抗することなく王城にある騎士団の建物へとついて行く。

 俺自身は罪には問われることになるが牢には入れられなかった。

 俺と……そしてシャーリーはこれから裁判で何かしらの罰を与えられることになる。

 シャーリーは訳が分からず泣き叫んでいた。

 彼女に王都に来てもらうことになるため、彼女には手紙で義父のことや俺たちが罪に問われることも書いて知らせたが、本人には全く罪の意識はなくただ泣き崩れていた。

 俺は彼女の我儘を聞き入れ、ただ甘やかして愛するだけだった。もっと彼女としっかり向き合っていれば。
 婿の立場で遠慮もあり甘やかすだけの愛情しか与えることができなかった。互いに尊重し合い、話し合える関係を作らなければいけなかったのに。

 俺とシャーリーは使用人が居なくなった屋敷でオズワルドと三人で暮らしている。伯爵は爵位をもうすぐ奪われることになるだろう。俺たちも平民となりこの屋敷を出ていかなければいけなくなる。

 義弟も義母ももうこの屋敷にはいない。二人は義母の実家を頼り出て行った。だがそこでの生活も義父の事件のこともあり安心して過ごす事は出来ないだろう。親戚たちから白い目で見られているようだ。

 二人はいずれ実家の遠く離れた領地の片隅に追いやられることになるだろう。問題を起こした親戚に優しくする貴族は少ない。

 自分たちにまで醜聞がついて回ることをとても嫌がるから、二人を助ける者は少ないだろう。

 かく言う俺たちもこれから親子三人で平民となり暮らさなければならない。

 俺は仕事ならどんなことでも頑張れる自信はある。ただ平民になれば稼ぎなんて貴族の生活からしたら僅かな金額でしかない。

 シャーリーがどこまで耐えられるか……今でも使用人が居ない生活は彼女にとって地獄のようなものだ。

「リオ、ねえ、シーツが汚れているの。服だって、着替えはどうしたらいいの?
 お腹が空いたしオズワルドだってうるさいくらい泣くのよ。誰か一人くらい使用人を雇ってせめて身の回りのことだけでもしてもらいましょうよ」

「シャーリー、君は何度言ったらわかるんだ?もうすぐ平民になる俺たちがどうやって人を雇うんだ?
 これからは自分のことは自分でしないといけない。オズワルドの面倒をみるのは君の仕事なんだから少しずつ努力をしてくれ。
 俺は残務に追われているんだ。伯爵領は一旦国に返還される、今までの領地での運営状況も報告しないといけない。悪いが俺は今忙しいんだ、いいかい?もう君は伯爵令嬢でも伯爵夫人でもない。ただのシャーリーになったんだ」

「いやよ、いや!わたしはずっと貴族として令嬢として華々しく過ごして来たのよ!平民なんて絶対に嫌!」
 彼女にとって平民落ちは一番の罰になるのかもしれない。まだ罰は下されていないが。

「確かにそうだ。だがこうなったのは俺たちが今までして来た行動だ。受け入れるしかないんだ」

「リオ、貴方と離婚するわ。そして他の貴族と結婚するわ」

ーーーはっ?

「君はこれからまだ罪を償わないといけない。そんな君を受け入れてくれる人がいるのか?」
 俺はシャーリーの言葉に腹を立てることも無く呆れながら聞いた。

 俺はシャーリーの何を愛していたのだろう?




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