【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

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117話

 ◇ ◇ ◇  ラフェ

 わたし達は明日グレン様と、王都を発つ。

 その前に……足を運んだのは王妃様の眠るお墓。

 普通なら簡単に来れる場所ではない。王城の外れにある薔薇の庭園。
 亡くなった王妃様が愛した場所らしい。
 この場所で生前王妃様は何を思って過ごしたのだろう。たくさんの薔薇が咲いていて、しっかりと手入れされた場所なのに……今はとても寂しく感じる。

 その中に王妃様の眠る墓がある。
 陛下が特別に許可をしてくださって、この場所に来ることができた。

 
 グレン様のお母様はこの王城には眠らていない。亡くなった後ご実家の子爵家の墓に入られたと聞いた。
 陛下の愛人でしかなかったセリーヌ様は、亡くなった後陛下のそばにいることは許されなかったらしい。

 陛下を愛したセリーヌ様。そして二人の愛に苦しみ亡くなった王妃様。

 わたしとアルバードはそんな王妃様の激しい愛の犠牲者になった。被害者だったけど、何故か恨めない。

 人を愛するって綺麗なものではない。

 わたしも……エドワードを愛していた。亡くなったと聞いた時絶望しかなかった。
 ーーーいっそ死んでしまおうか。

 そう思った時、アルバードがお腹にいることに気がついた。

 だからなんとか生きていこうと思った。

 それでも…何度もエドワードが居ないことが辛くて、泣いた。いつも不安でこれから先のことを考えると孤独だった。

 エドワードのご両親が優しくしてくれても心から頼ることはできなかった。お義母様からお金のことを言われあの屋敷を出て行く時も、本当は不安だった。

 だけど所詮他人でしかないわたしは、どこかホッとしていた部分もあった。もう気を遣わなくていい。辛くてもアルバードと二人で生きていこう。

 そう思ったのに、生きることは大変だった。乳飲み子を抱えてできる仕事はほんの僅かで。友人の手助けがあってなんとか日銭を稼ぐことができた。

 それでも食べることが精一杯だった。貯金はあったけど、それはいずれアルバードに必要になるからと手をつけなかった。

 どんなに貧乏でもアルバードのためならどんな苦労も耐えられた。

 近所のおばちゃん達が声をかけてくれて、孤独だった生活から誰かと会話をする生活に変わった。

 みんなの優しさがわたしの孤独で頑なな心を癒してくれた。

 それでも男の人には常に警戒した。

 未亡人のわたしは男の人にとって簡単に遊べる女でしかない。何度も身の危険を感じた。だからあまり関わらないようにしていたのに……あの時、アレックス様とグレン様が助けてくれなければ今頃どうなっていただろう。

 二人との出会いが、わたしの生活を一変させた。

 何も求めずわたしに施してくれる。それは哀れみなのか同情なのか。貴族の人たちの驕りなのか、自己満足なのか。

 全てを怪しんでしか見れなかった。卑屈で頑なで意地っ張り。グレン様の態度に何度も腹が立った。

 必死で生きてるだけなのに!邪魔しないで!

 そう思っていた。彼の不器用すぎる優しさに素直になれなかった。

 そしてアルバードが死にかけた時、もうそばにいないグレン様に助けを求めてしまった。

 そばにいて欲しい、会いたい。
 助けて!

 グレン様がいなくなって寂しかった。だけどその気持ちごと蓋をしてアルバードと二人で生きようと思ったのに……彼に心の中で助けを求めていた。

 そして………王妃様が主犯でグレン様を苦しめるため、わたし達親子を狙ったと聞いて驚いた。

 もしアルバードが助かっていなければ、許すことはできなかっただろう。だけど、王妃様の歪んでしまった陛下への愛情を知って、何も言えなかった。

 わたしもグレン様がいなければ、エドワードに対して怒り傷ついていただろう。

 エドワードは記憶を失い新しい家庭を築いていた、聞いた話では、わたし達親子のことを聞いても全く会いにくることもなく、アルバードが苦しんでいる時も気にしていなかった。それに彼があの薬を売った商会を領地に受け入れてしまい、アルバードは死にかけたのだ。

 彼がわざとしたわけではない。それでも、もし彼がシャーリー様の意見を簡単に聞いて領地に受け入れなければアルバードは苦しまなくて済んだかも……と思ってしまう。その商会は叔父だったと聞いて驚いたけど。

 いくつかの偶然が重なり悪い方へと全てが向かった。

 そして最後に王妃様は自らの命を断つことで、罪を償うことにした。


 王妃様はこの場所で安らかに眠られているのだろうか。あまりにも辛い過去。


 グレン様がいたから乗り越えられた。エドワードのことも彼がいたから責めるよりも許すことができた。

 時間が彼への愛情を思い出に変えてくれていた。そう出来たのはグレン様がわたしの前でいつも大きな声で笑い、明るく接してくれたから。

 王妃様………グレン様がいなければ、わたしもエドワードに対して歪んで酷い言葉を言っていたかもしれません。生きていたと聞いて、彼の家庭を壊していたかもしれません。

 だから貴女の気持ちが少しだけわかる…なんてそんな烏滸がましいことは言えないけど……


 人を愛するってそんな綺麗事ではないのだと思う。

 ぐちゃぐちゃでどうしようもなくて、自分を抑えられなくて……しんどくて…だけど彼しか見えなくて……
 わたしもエドワードを愛していた。

 とてもモテる彼がいつも心配だった。誰にでも優しい彼。いつかわたしなんか捨てられてしまうのではと不安だった。

 捨てられるかもなんて思っていた。それなのに突然わたしの目の前から消えていなくなった。
 悲しくて辛くて……わたしの心は綺麗でも純粋でもなくなっていた。ただ辛かった、現実と向き合うことが上手くできなかった。



 お墓の前でわたしは膝を折り両手を重ね握りしめて冥福を祈った。


もし生まれ変われるなら……

 次の世界では幸せになって欲しい。





「君は………」
振り返ると後ろに陛下が立たれていた。







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