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119話 ラフェ
◇ ◇ ◇ ラフェ
「…………酷い」
「酷いか………わたしはもっと酷いことを彼女にした。
セリーヌはグレンを産んで亡くなった。わたしは悲しみのあまりフランソアに当たってしまった。
王妃としてではなく、妻としてのうのうとわたしの横で過ごしている妻に対してだ。
わたしの横に並ぶのはセリーヌだけなのに。腹が立った。憎くて仕方がなかった。
セリーヌが妊娠している時にフランソアが一度接触してきた。何をされるかたまったものでは無いとフランソアを叱り飛ばした。だからわたしは……何もしていない彼女に……全ての恨みを彼女にぶつけたんだ」
『セリーヌが死んで嬉しいか?わたしからセリーヌとの子を離すことができて嬉しいか?』
「セリーヌが死んですぐにセリーヌの遺体は実家の子爵家に返された。わたしのそばに眠らせることすらさせて貰えなかった。そして生まれたばかりのグレンは辺境伯領の中にある貴族の子爵家の養子に出された。
わたしの息子として生まれたのに……会うこともそばに置くことも許されなかった。その恨みを全てフランソアにぶつけたんだ。
後で知ったんだが全て父上である前国王がしたことだったのに……わたしは父上に逆らうこともできず隠していた。だから王妃である妻がグレンを里子に出したのだと思ったんだ。
弱い妻であるフランソアに怒りをぶつけた…………酷い夫だった、わたし達は白い結婚だったのに、わたしは怒りと憎しみから彼女を犯した。どんなに泣いても許さなかった……………」
少し間を置きまた話し出した。
「『やめて』
フランソアの瞳には涙が溢れ恐怖の中無理矢理抱いたんだ」
ーーー酷い。酷すぎる。王妃様のことを考えると涙が溢れた。
陛下はどんな顔をして話しているのだろう。
そう思ってそっと見ると、悲痛な面持ちだった。
「……結婚して3年経ってフランソアが妊娠した。
フランソアは暗い顔をしていた。セリーヌはお腹の子供を愛おしそうにしていた。なのにフランソアはお腹の子供を望んでいなかったようだ。仕方なく子供を産む、そんな感じだった。
淡々と過ごしていた。
そして生まれてきた我が子を見た時、突然彼女は大きな声を出して泣いた。
『あっ、あ、あーーー』
あんなに泣いたのを見るのは初めてだった。
わたしは彼女の近くにいたのに声すらかけられなかったんだ。
彼女は悔やむように生まれたばかりのミハインに謝っていた。
『ごめんなさい、生まれてこないでなんて思ってごめんなさい。生まれてきてくれてありがとう』
フランソアは人目も憚らず大きな声で息子に謝った。泣きながら必死で謝っていた。
小さな小さな体で必死で生きようとする我が子に愛おしそうに。
わたしは初めて彼女がどんなに辛い思いをして子供を産んだのかやっと気がついたんだ」
陛下の手は硬く握りしめられていた。まるで自分を傷つけるように。
「愚かだった。自分だけが辛いと思っていた。愛する人と引き裂かれて無理やり結婚させられて、愛する人を亡くし、その子供まで引き離された。
悠々とわたしの横にいるフランソアを恨むしかなかった。壊して傷付けて、無理やり抱いて、そして……彼女には心すらないと思っていた。
王妃という座が欲しいだけの冷たい女なんだと。
彼女にも心があり、傷つくこともわかっていたのに、気がつかないふりをしていた。
彼女が壊れてしまったのは全てわたしのせいだ。
気がついた時にはもうどうすることもできなかった。
わたし達の関係は修復不可能になっていたんだ。
だが表面上は上手くいっていた。
ミハインはフランソアにとても似ていた。
可愛らしくわたしによく懐いていたから息子を王太子として大切に育てた。
夫婦としての愛情はなくとも息子の親としてお互い過ごすことはできた。
そしてこの国の王と王妃として互いに尊重し合い仕事として関わる関係が続いた。
閨は息子が生まれてから全て拒絶された。
『陛下に新しい愛妾が出来ようと側妃を娶ろうと構わないのでもう二度と彼と閨を共にすることはない』と宣言された。
わたしはもう側妃も愛妾も必要なかった。
フランソアはセリーヌを愛しているからだろうと思っていたようだが、わたしの心はいつの間にかフランソアを愛していたんだ。
憎んで傷付けてしまったフランソアを今更愛しているなど言えるわけがない」
ーーーわたしだったら信じないし受け入れられないわ。
「そんな中フランソアの心をかき乱したのは16歳になって現れたわたしによく似たグレンだった。
フランソアは何かとグレンに冷たく当たっていた。
『わたくしの前に顔を出さないでちょうだい』
『貴方の顔を見るとイライラするの』
いつもならどんな時でも優しい王妃の仮面を外すことはないのに、グレンに対してはどうしてもそれが出来なかったようだ。
グレンへの多少の嫌がらせも意地悪も、わたしは見逃すしかなかった。
フランソアに対して負い目があるから何も言えなかった。わたしを困らせるために、そして自身の苛立ちをグレンにぶつけるように彼への嫌がらせを度々行った。わたしはそれを見て見ぬ振りをし続けた。
それがいつの間にか憎悪から執着へと変わり、そして歪んだ愛情へと変化した。
グレンが結婚したとフランソアが聞いて、幸せになることを許せなかったようだ。
そして彼の子を妊娠した妻のマキナに対して激しい嫉妬をしたらしい……殺したいほどの。
そんな報告を「影」から聞いて内心焦っていた。
だがフランソアが殺さなくても彼女は亡くなった。
グレンが嘆き悲しむ姿をフランソアは悦び嗤ったんだ」
ーーーグレン様は王妃様の嫌がらせにずっと苦しんだのね。
「…………酷い」
「酷いか………わたしはもっと酷いことを彼女にした。
セリーヌはグレンを産んで亡くなった。わたしは悲しみのあまりフランソアに当たってしまった。
王妃としてではなく、妻としてのうのうとわたしの横で過ごしている妻に対してだ。
わたしの横に並ぶのはセリーヌだけなのに。腹が立った。憎くて仕方がなかった。
セリーヌが妊娠している時にフランソアが一度接触してきた。何をされるかたまったものでは無いとフランソアを叱り飛ばした。だからわたしは……何もしていない彼女に……全ての恨みを彼女にぶつけたんだ」
『セリーヌが死んで嬉しいか?わたしからセリーヌとの子を離すことができて嬉しいか?』
「セリーヌが死んですぐにセリーヌの遺体は実家の子爵家に返された。わたしのそばに眠らせることすらさせて貰えなかった。そして生まれたばかりのグレンは辺境伯領の中にある貴族の子爵家の養子に出された。
わたしの息子として生まれたのに……会うこともそばに置くことも許されなかった。その恨みを全てフランソアにぶつけたんだ。
後で知ったんだが全て父上である前国王がしたことだったのに……わたしは父上に逆らうこともできず隠していた。だから王妃である妻がグレンを里子に出したのだと思ったんだ。
弱い妻であるフランソアに怒りをぶつけた…………酷い夫だった、わたし達は白い結婚だったのに、わたしは怒りと憎しみから彼女を犯した。どんなに泣いても許さなかった……………」
少し間を置きまた話し出した。
「『やめて』
フランソアの瞳には涙が溢れ恐怖の中無理矢理抱いたんだ」
ーーー酷い。酷すぎる。王妃様のことを考えると涙が溢れた。
陛下はどんな顔をして話しているのだろう。
そう思ってそっと見ると、悲痛な面持ちだった。
「……結婚して3年経ってフランソアが妊娠した。
フランソアは暗い顔をしていた。セリーヌはお腹の子供を愛おしそうにしていた。なのにフランソアはお腹の子供を望んでいなかったようだ。仕方なく子供を産む、そんな感じだった。
淡々と過ごしていた。
そして生まれてきた我が子を見た時、突然彼女は大きな声を出して泣いた。
『あっ、あ、あーーー』
あんなに泣いたのを見るのは初めてだった。
わたしは彼女の近くにいたのに声すらかけられなかったんだ。
彼女は悔やむように生まれたばかりのミハインに謝っていた。
『ごめんなさい、生まれてこないでなんて思ってごめんなさい。生まれてきてくれてありがとう』
フランソアは人目も憚らず大きな声で息子に謝った。泣きながら必死で謝っていた。
小さな小さな体で必死で生きようとする我が子に愛おしそうに。
わたしは初めて彼女がどんなに辛い思いをして子供を産んだのかやっと気がついたんだ」
陛下の手は硬く握りしめられていた。まるで自分を傷つけるように。
「愚かだった。自分だけが辛いと思っていた。愛する人と引き裂かれて無理やり結婚させられて、愛する人を亡くし、その子供まで引き離された。
悠々とわたしの横にいるフランソアを恨むしかなかった。壊して傷付けて、無理やり抱いて、そして……彼女には心すらないと思っていた。
王妃という座が欲しいだけの冷たい女なんだと。
彼女にも心があり、傷つくこともわかっていたのに、気がつかないふりをしていた。
彼女が壊れてしまったのは全てわたしのせいだ。
気がついた時にはもうどうすることもできなかった。
わたし達の関係は修復不可能になっていたんだ。
だが表面上は上手くいっていた。
ミハインはフランソアにとても似ていた。
可愛らしくわたしによく懐いていたから息子を王太子として大切に育てた。
夫婦としての愛情はなくとも息子の親としてお互い過ごすことはできた。
そしてこの国の王と王妃として互いに尊重し合い仕事として関わる関係が続いた。
閨は息子が生まれてから全て拒絶された。
『陛下に新しい愛妾が出来ようと側妃を娶ろうと構わないのでもう二度と彼と閨を共にすることはない』と宣言された。
わたしはもう側妃も愛妾も必要なかった。
フランソアはセリーヌを愛しているからだろうと思っていたようだが、わたしの心はいつの間にかフランソアを愛していたんだ。
憎んで傷付けてしまったフランソアを今更愛しているなど言えるわけがない」
ーーーわたしだったら信じないし受け入れられないわ。
「そんな中フランソアの心をかき乱したのは16歳になって現れたわたしによく似たグレンだった。
フランソアは何かとグレンに冷たく当たっていた。
『わたくしの前に顔を出さないでちょうだい』
『貴方の顔を見るとイライラするの』
いつもならどんな時でも優しい王妃の仮面を外すことはないのに、グレンに対してはどうしてもそれが出来なかったようだ。
グレンへの多少の嫌がらせも意地悪も、わたしは見逃すしかなかった。
フランソアに対して負い目があるから何も言えなかった。わたしを困らせるために、そして自身の苛立ちをグレンにぶつけるように彼への嫌がらせを度々行った。わたしはそれを見て見ぬ振りをし続けた。
それがいつの間にか憎悪から執着へと変わり、そして歪んだ愛情へと変化した。
グレンが結婚したとフランソアが聞いて、幸せになることを許せなかったようだ。
そして彼の子を妊娠した妻のマキナに対して激しい嫉妬をしたらしい……殺したいほどの。
そんな報告を「影」から聞いて内心焦っていた。
だがフランソアが殺さなくても彼女は亡くなった。
グレンが嘆き悲しむ姿をフランソアは悦び嗤ったんだ」
ーーーグレン様は王妃様の嫌がらせにずっと苦しんだのね。
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