62 / 116
61話
しおりを挟む
デュオス先生と、家族として再会したもののぎこちなさは残ったままで上手く兄妹として話すことはできなかった。
ただ、ほんの少し思い出した記憶が彼をにいさまだと理解はできていた。
少しずつだけど私の中で変わっていけたら……氷のように冷めて凍りついてしまった心はなかなか溶けずにいるけど、レイモンド殿下やセリウス殿下、そしてカイさんのおかげで「笑う」ことを思い出せてくれた。
セリウス殿下がモリス国へ帰る前日、昼食に呼ばれた。
「レイン……」
「はい」
「僕は明日帰国する、君はこのままこの国にいたい?君がここにいるのが辛いならモリス国に来ないかい?父上が君を守ると言っている」
私の紫の瞳を欲する人はこの国よりもモリス国の方が多い。それは向こうの国に行けばさらに危険でもある。
だからと言って隠れて暮らすなんて嫌だ。王宮の中に閉じ込められて守られても幸せだなんて思えない。
「殿下……一度両親の墓参りには訪れたいと思っております。でも私はグリス国で文官として働きたいと思っております。もちろん仕事で他国へ行くこともあると思います。この瞳のせいで色々問題があるかもしれません。レイモンド殿下がカイさんと相談して、瞳の色を変えるガラスをある国から取り寄せてくださったんです」
「……うん、聞いてるよ。遠いルビラ王国には医術と魔術で大病すら治せると聞いたことがある。そしてイルーダ王国は魔力を持った者が多いと聞いている。ただ、この辺りの国とはあまり親交はなかったはずだけど?」
「はい、カイさんが私のためにと見つけ出してくれたんです」
「カイ殿が……うん、彼なら、そうか。レインは自分を偽って暮らすのに躊躇いは?」
「瞳の色が変わるくらいなんとも思わないです。この瞳のせいで周りに迷惑をかけてしまうくらいなら、いらないです。
まぁ、瞳を取り出すのはちょっと痛そうで無理だったし、取り変えることもできないと思っていたのに、ガラスで瞳の色を変えられるなんて、とっても素敵だと思いませんか?」
思わずワクワクしてしまい少し声が大きくなった。
「うん紫色じゃないレインも可愛いと思うよ」
「ふふっ、なんだかワクワクします!」
「君はカイ殿がとても好きなんだね?」
「はい!カイさんといるとお父様みたいでとても安心するんです」
カイさんのことを考えると不思議なくらい心があったかくなる。
「じゃあカイさんがもうすぐ帰国するから寂しいね」
「はい、でもいつでも遊びにおいでと言ってくださったので、いつか行ってみたいです」
今までの私なら多分カイさんについて行くと言っていたかもしれない。
でも今は……
「私、そろそろこの意地っ張りな性格から卒業しなきゃいけないと思っているんです。なかなかまだ素直にはなれないのですが……」
つい苦笑してしまう。
だけど……
「セリウス殿下が親戚なんだと仰ってくださったこと、とても嬉しかったです。私はもうどこにも居場所がないと思っていて仕事しかないと思っていました。自分には血のつながりのある人がいるんだと知った時、とても嬉しかったんです、私は一人ではないんだと、私にも家族がいたんだと知ることができたんです」
殿下のおかげで両親がいたんだと実感できた。
「お兄様がいることもわかったし……まぁ、まだまだ先生としてしかみられないんですけどね。なかなか兄様だと思えないというか……出会いが出会いだっただけに……」
思わず濁しながら言ったけど、殿下は苦笑した。
「聞いてるよ。デュオス殿はなかなかの女性好きらしいですね」
「………たまたまらしいのですが、見てしまったので……」
私は嫌なことを思い出したとつい顔を歪めてしまった。
「レイン、お墓参りに来る時は必ず僕にも会いにきてください。君はこれから仕事で外交をして行くことが増えると思うんだ。その時、君がモリス国の国王と親戚であるということは何かと便利だと思う。仕事で少しでも有利になるなら使えるものは使って、そして、身も守って欲しい」
「セリウス殿下……ありがとうございます」
「うん、幼い頃は遊びに来ると『セリウスにいさま』って言いながら僕の後を追っていたんだよ。セーラ、君を守ってあげられなくてごめんね。次に何かあったら守るからね」
初めて出会った時から私に優しくしてくださった殿下。
まさかのはとこで、幼馴染だったなんて。
「セリウス殿下、またお会いできる日を心待ちにしております」
「うん、セーラ、楽しみにしているよ」
「はい」
セリウス殿下と過ごした日々は短かったけど、仕事としてだけではなく有意義な日々を過ごさせてもらった。
殿下からいろんな方を紹介していただき挨拶をし名前を覚えてもらえた。
私にとってお金より大切なものをたくさんいただいた。人脈はこれからの仕事にとても活かせる。
「よし!仕事頑張ろう!」
また忙しい日常に戻っていった。
ただ、ほんの少し思い出した記憶が彼をにいさまだと理解はできていた。
少しずつだけど私の中で変わっていけたら……氷のように冷めて凍りついてしまった心はなかなか溶けずにいるけど、レイモンド殿下やセリウス殿下、そしてカイさんのおかげで「笑う」ことを思い出せてくれた。
セリウス殿下がモリス国へ帰る前日、昼食に呼ばれた。
「レイン……」
「はい」
「僕は明日帰国する、君はこのままこの国にいたい?君がここにいるのが辛いならモリス国に来ないかい?父上が君を守ると言っている」
私の紫の瞳を欲する人はこの国よりもモリス国の方が多い。それは向こうの国に行けばさらに危険でもある。
だからと言って隠れて暮らすなんて嫌だ。王宮の中に閉じ込められて守られても幸せだなんて思えない。
「殿下……一度両親の墓参りには訪れたいと思っております。でも私はグリス国で文官として働きたいと思っております。もちろん仕事で他国へ行くこともあると思います。この瞳のせいで色々問題があるかもしれません。レイモンド殿下がカイさんと相談して、瞳の色を変えるガラスをある国から取り寄せてくださったんです」
「……うん、聞いてるよ。遠いルビラ王国には医術と魔術で大病すら治せると聞いたことがある。そしてイルーダ王国は魔力を持った者が多いと聞いている。ただ、この辺りの国とはあまり親交はなかったはずだけど?」
「はい、カイさんが私のためにと見つけ出してくれたんです」
「カイ殿が……うん、彼なら、そうか。レインは自分を偽って暮らすのに躊躇いは?」
「瞳の色が変わるくらいなんとも思わないです。この瞳のせいで周りに迷惑をかけてしまうくらいなら、いらないです。
まぁ、瞳を取り出すのはちょっと痛そうで無理だったし、取り変えることもできないと思っていたのに、ガラスで瞳の色を変えられるなんて、とっても素敵だと思いませんか?」
思わずワクワクしてしまい少し声が大きくなった。
「うん紫色じゃないレインも可愛いと思うよ」
「ふふっ、なんだかワクワクします!」
「君はカイ殿がとても好きなんだね?」
「はい!カイさんといるとお父様みたいでとても安心するんです」
カイさんのことを考えると不思議なくらい心があったかくなる。
「じゃあカイさんがもうすぐ帰国するから寂しいね」
「はい、でもいつでも遊びにおいでと言ってくださったので、いつか行ってみたいです」
今までの私なら多分カイさんについて行くと言っていたかもしれない。
でも今は……
「私、そろそろこの意地っ張りな性格から卒業しなきゃいけないと思っているんです。なかなかまだ素直にはなれないのですが……」
つい苦笑してしまう。
だけど……
「セリウス殿下が親戚なんだと仰ってくださったこと、とても嬉しかったです。私はもうどこにも居場所がないと思っていて仕事しかないと思っていました。自分には血のつながりのある人がいるんだと知った時、とても嬉しかったんです、私は一人ではないんだと、私にも家族がいたんだと知ることができたんです」
殿下のおかげで両親がいたんだと実感できた。
「お兄様がいることもわかったし……まぁ、まだまだ先生としてしかみられないんですけどね。なかなか兄様だと思えないというか……出会いが出会いだっただけに……」
思わず濁しながら言ったけど、殿下は苦笑した。
「聞いてるよ。デュオス殿はなかなかの女性好きらしいですね」
「………たまたまらしいのですが、見てしまったので……」
私は嫌なことを思い出したとつい顔を歪めてしまった。
「レイン、お墓参りに来る時は必ず僕にも会いにきてください。君はこれから仕事で外交をして行くことが増えると思うんだ。その時、君がモリス国の国王と親戚であるということは何かと便利だと思う。仕事で少しでも有利になるなら使えるものは使って、そして、身も守って欲しい」
「セリウス殿下……ありがとうございます」
「うん、幼い頃は遊びに来ると『セリウスにいさま』って言いながら僕の後を追っていたんだよ。セーラ、君を守ってあげられなくてごめんね。次に何かあったら守るからね」
初めて出会った時から私に優しくしてくださった殿下。
まさかのはとこで、幼馴染だったなんて。
「セリウス殿下、またお会いできる日を心待ちにしております」
「うん、セーラ、楽しみにしているよ」
「はい」
セリウス殿下と過ごした日々は短かったけど、仕事としてだけではなく有意義な日々を過ごさせてもらった。
殿下からいろんな方を紹介していただき挨拶をし名前を覚えてもらえた。
私にとってお金より大切なものをたくさんいただいた。人脈はこれからの仕事にとても活かせる。
「よし!仕事頑張ろう!」
また忙しい日常に戻っていった。
1,432
あなたにおすすめの小説
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる