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61話
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デュオス先生と、家族として再会したもののぎこちなさは残ったままで上手く兄妹として話すことはできなかった。
ただ、ほんの少し思い出した記憶が彼をにいさまだと理解はできていた。
少しずつだけど私の中で変わっていけたら……氷のように冷めて凍りついてしまった心はなかなか溶けずにいるけど、レイモンド殿下やセリウス殿下、そしてカイさんのおかげで「笑う」ことを思い出せてくれた。
セリウス殿下がモリス国へ帰る前日、昼食に呼ばれた。
「レイン……」
「はい」
「僕は明日帰国する、君はこのままこの国にいたい?君がここにいるのが辛いならモリス国に来ないかい?父上が君を守ると言っている」
私の紫の瞳を欲する人はこの国よりもモリス国の方が多い。それは向こうの国に行けばさらに危険でもある。
だからと言って隠れて暮らすなんて嫌だ。王宮の中に閉じ込められて守られても幸せだなんて思えない。
「殿下……一度両親の墓参りには訪れたいと思っております。でも私はグリス国で文官として働きたいと思っております。もちろん仕事で他国へ行くこともあると思います。この瞳のせいで色々問題があるかもしれません。レイモンド殿下がカイさんと相談して、瞳の色を変えるガラスをある国から取り寄せてくださったんです」
「……うん、聞いてるよ。遠いルビラ王国には医術と魔術で大病すら治せると聞いたことがある。そしてイルーダ王国は魔力を持った者が多いと聞いている。ただ、この辺りの国とはあまり親交はなかったはずだけど?」
「はい、カイさんが私のためにと見つけ出してくれたんです」
「カイ殿が……うん、彼なら、そうか。レインは自分を偽って暮らすのに躊躇いは?」
「瞳の色が変わるくらいなんとも思わないです。この瞳のせいで周りに迷惑をかけてしまうくらいなら、いらないです。
まぁ、瞳を取り出すのはちょっと痛そうで無理だったし、取り変えることもできないと思っていたのに、ガラスで瞳の色を変えられるなんて、とっても素敵だと思いませんか?」
思わずワクワクしてしまい少し声が大きくなった。
「うん紫色じゃないレインも可愛いと思うよ」
「ふふっ、なんだかワクワクします!」
「君はカイ殿がとても好きなんだね?」
「はい!カイさんといるとお父様みたいでとても安心するんです」
カイさんのことを考えると不思議なくらい心があったかくなる。
「じゃあカイさんがもうすぐ帰国するから寂しいね」
「はい、でもいつでも遊びにおいでと言ってくださったので、いつか行ってみたいです」
今までの私なら多分カイさんについて行くと言っていたかもしれない。
でも今は……
「私、そろそろこの意地っ張りな性格から卒業しなきゃいけないと思っているんです。なかなかまだ素直にはなれないのですが……」
つい苦笑してしまう。
だけど……
「セリウス殿下が親戚なんだと仰ってくださったこと、とても嬉しかったです。私はもうどこにも居場所がないと思っていて仕事しかないと思っていました。自分には血のつながりのある人がいるんだと知った時、とても嬉しかったんです、私は一人ではないんだと、私にも家族がいたんだと知ることができたんです」
殿下のおかげで両親がいたんだと実感できた。
「お兄様がいることもわかったし……まぁ、まだまだ先生としてしかみられないんですけどね。なかなか兄様だと思えないというか……出会いが出会いだっただけに……」
思わず濁しながら言ったけど、殿下は苦笑した。
「聞いてるよ。デュオス殿はなかなかの女性好きらしいですね」
「………たまたまらしいのですが、見てしまったので……」
私は嫌なことを思い出したとつい顔を歪めてしまった。
「レイン、お墓参りに来る時は必ず僕にも会いにきてください。君はこれから仕事で外交をして行くことが増えると思うんだ。その時、君がモリス国の国王と親戚であるということは何かと便利だと思う。仕事で少しでも有利になるなら使えるものは使って、そして、身も守って欲しい」
「セリウス殿下……ありがとうございます」
「うん、幼い頃は遊びに来ると『セリウスにいさま』って言いながら僕の後を追っていたんだよ。セーラ、君を守ってあげられなくてごめんね。次に何かあったら守るからね」
初めて出会った時から私に優しくしてくださった殿下。
まさかのはとこで、幼馴染だったなんて。
「セリウス殿下、またお会いできる日を心待ちにしております」
「うん、セーラ、楽しみにしているよ」
「はい」
セリウス殿下と過ごした日々は短かったけど、仕事としてだけではなく有意義な日々を過ごさせてもらった。
殿下からいろんな方を紹介していただき挨拶をし名前を覚えてもらえた。
私にとってお金より大切なものをたくさんいただいた。人脈はこれからの仕事にとても活かせる。
「よし!仕事頑張ろう!」
また忙しい日常に戻っていった。
ただ、ほんの少し思い出した記憶が彼をにいさまだと理解はできていた。
少しずつだけど私の中で変わっていけたら……氷のように冷めて凍りついてしまった心はなかなか溶けずにいるけど、レイモンド殿下やセリウス殿下、そしてカイさんのおかげで「笑う」ことを思い出せてくれた。
セリウス殿下がモリス国へ帰る前日、昼食に呼ばれた。
「レイン……」
「はい」
「僕は明日帰国する、君はこのままこの国にいたい?君がここにいるのが辛いならモリス国に来ないかい?父上が君を守ると言っている」
私の紫の瞳を欲する人はこの国よりもモリス国の方が多い。それは向こうの国に行けばさらに危険でもある。
だからと言って隠れて暮らすなんて嫌だ。王宮の中に閉じ込められて守られても幸せだなんて思えない。
「殿下……一度両親の墓参りには訪れたいと思っております。でも私はグリス国で文官として働きたいと思っております。もちろん仕事で他国へ行くこともあると思います。この瞳のせいで色々問題があるかもしれません。レイモンド殿下がカイさんと相談して、瞳の色を変えるガラスをある国から取り寄せてくださったんです」
「……うん、聞いてるよ。遠いルビラ王国には医術と魔術で大病すら治せると聞いたことがある。そしてイルーダ王国は魔力を持った者が多いと聞いている。ただ、この辺りの国とはあまり親交はなかったはずだけど?」
「はい、カイさんが私のためにと見つけ出してくれたんです」
「カイ殿が……うん、彼なら、そうか。レインは自分を偽って暮らすのに躊躇いは?」
「瞳の色が変わるくらいなんとも思わないです。この瞳のせいで周りに迷惑をかけてしまうくらいなら、いらないです。
まぁ、瞳を取り出すのはちょっと痛そうで無理だったし、取り変えることもできないと思っていたのに、ガラスで瞳の色を変えられるなんて、とっても素敵だと思いませんか?」
思わずワクワクしてしまい少し声が大きくなった。
「うん紫色じゃないレインも可愛いと思うよ」
「ふふっ、なんだかワクワクします!」
「君はカイ殿がとても好きなんだね?」
「はい!カイさんといるとお父様みたいでとても安心するんです」
カイさんのことを考えると不思議なくらい心があったかくなる。
「じゃあカイさんがもうすぐ帰国するから寂しいね」
「はい、でもいつでも遊びにおいでと言ってくださったので、いつか行ってみたいです」
今までの私なら多分カイさんについて行くと言っていたかもしれない。
でも今は……
「私、そろそろこの意地っ張りな性格から卒業しなきゃいけないと思っているんです。なかなかまだ素直にはなれないのですが……」
つい苦笑してしまう。
だけど……
「セリウス殿下が親戚なんだと仰ってくださったこと、とても嬉しかったです。私はもうどこにも居場所がないと思っていて仕事しかないと思っていました。自分には血のつながりのある人がいるんだと知った時、とても嬉しかったんです、私は一人ではないんだと、私にも家族がいたんだと知ることができたんです」
殿下のおかげで両親がいたんだと実感できた。
「お兄様がいることもわかったし……まぁ、まだまだ先生としてしかみられないんですけどね。なかなか兄様だと思えないというか……出会いが出会いだっただけに……」
思わず濁しながら言ったけど、殿下は苦笑した。
「聞いてるよ。デュオス殿はなかなかの女性好きらしいですね」
「………たまたまらしいのですが、見てしまったので……」
私は嫌なことを思い出したとつい顔を歪めてしまった。
「レイン、お墓参りに来る時は必ず僕にも会いにきてください。君はこれから仕事で外交をして行くことが増えると思うんだ。その時、君がモリス国の国王と親戚であるということは何かと便利だと思う。仕事で少しでも有利になるなら使えるものは使って、そして、身も守って欲しい」
「セリウス殿下……ありがとうございます」
「うん、幼い頃は遊びに来ると『セリウスにいさま』って言いながら僕の後を追っていたんだよ。セーラ、君を守ってあげられなくてごめんね。次に何かあったら守るからね」
初めて出会った時から私に優しくしてくださった殿下。
まさかのはとこで、幼馴染だったなんて。
「セリウス殿下、またお会いできる日を心待ちにしております」
「うん、セーラ、楽しみにしているよ」
「はい」
セリウス殿下と過ごした日々は短かったけど、仕事としてだけではなく有意義な日々を過ごさせてもらった。
殿下からいろんな方を紹介していただき挨拶をし名前を覚えてもらえた。
私にとってお金より大切なものをたくさんいただいた。人脈はこれからの仕事にとても活かせる。
「よし!仕事頑張ろう!」
また忙しい日常に戻っていった。
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