『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道

文字の大きさ
1 / 25

第1話「赤い点とドロップ率」

しおりを挟む
 気がつくと、俺は深い森の中に立っていた。  足元には湿った土の感触があり、風が木々を揺らす音が聞こえる。  そして目の前には、場違いなほど美しい女性が立っていた。透き通るような銀髪に、白いドレス。裸足で地面に立っているのに、少しも汚れていない。

「起きましたか」

 鈴を転がすような声だった。  俺は身体を起こし、服についた土を払う。見慣れない革の鎧と、腰には剣。どうやら俺の持ち物らしい。

「ここは異世界です。貴方は転移しました」

 彼女は淡々と告げる。  混乱はない。むしろ、不思議と頭は冴えていた。  俺は彼女を見る。女神と呼ぶべき存在なのだろう。

「単刀直入に言います。貴方にはこの世界で生きていただきます。元の世界に戻る方法はありません」 「……そうか」

 俺は短く答えた。  未練がないわけではないが、どうにもならないことを嘆いても仕方がない。それに、目の前の現実感は圧倒的だった。

「貴方には『生きる力』を授けます。この世界には魔物が存在し、それらを倒すことで強くなれます」

 彼女が俺の額に指先を触れる。  熱い何かが流れ込んでくる感覚があった。

「授けたのは【鑑定】のスキル。そしてもう一つ、魔物の『急所』を見抜く眼です」 
「急所?」 
「はい。この世界の魔物は、倒されると稀に魔力を結晶化させた『アイテム』や『スキル』を落とします。本来は運次第ですが、貴方の眼に見える『赤い点』――そこを攻撃して絶命させれば、確実にその魔物が持つ最高位の品を手に入れられます」

 確定ドロップ。  俺の脳裏にその言葉が浮かぶ。  つまり、欲しいものを狙って手に入れられるということだ。

「生き延びてください。貴方の物語を期待しています」

 言い残し、彼女の体が光の粒子となって霧散する。  後には静寂だけが残った。

 俺は自分の手を見る。  腰の剣を抜き放つ。ずっしりとした鉄の重み。安物だが、刃は研ぎ澄まされている。  とりあえず、状況を確認しよう。

 その時だった。  木々の奥から、悲鳴が聞こえた。

「いやっ、来ないで!」

 若い女の声だ。  俺は反射的に駆け出していた。  草をかき分け、声のした方へ向かう。  開けた場所に出ると、そこには異様な光景があった。

 豚の顔をした巨漢――オークだ。  身長は二メートルを超えている。丸太のような腕を振り回し、一本の木の根元に獲物を追い詰めていた。  追い詰められているのは、長い耳を持つ少女。  エルフだ。  金色の髪が乱れ、緑色の狩猟服は泥で汚れている。彼女は折れた弓を構え、震えながら後ずさりしていた。

「グオオオオッ!」

 オークが涎を垂らしながら咆哮する。  俺は足を止め、オークを見据えた。  意識を集中する。  女神に言われた通り、【鑑定】を念じた。

 直後、オークの頭上に文字が浮かび上がる。

【種族:オーク】 
【討伐推奨レベル:5】 
【ドロップアイテム:汚れた布、オークの肉、剛力の腕輪(SR)】

 情報が流れ込んでくる。  俺の目は、最後の一行に釘付けになった。

 『剛力の腕輪(SR)』  
効果:装備者の攻撃力を+500する。

 攻撃力プラス500。  今の俺の攻撃力がどれほどかは分からないが、この安物の鉄剣より遥かに価値があることは直感で理解できた。  欲しい。  強烈な渇望が湧き上がる。  この世界で生き抜くには力が要る。あの腕輪があれば、序盤の攻略が劇的に楽になるはずだ。

 俺はオークを見る。  視界が変わった。  オークの喉元に、小さな『赤い点』が輝いている。  あれが女神の言っていた急所か。

 オークがエルフに襲い掛かろうと腕を振り上げた瞬間、俺は飛び出した。  恐怖はない。  俺の意識は、あの一点の輝きだけに吸い寄せられている。

「ふっ!」

 俺は地面を蹴り、無防備なオークの背後に回る音もなく接近する。  オークが気配に気づいて振り向こうとした時には、もう遅い。  狙うのは喉元。赤い点の中心。

 ズブリ。

 鉄の剣が、吸い込まれるようにその点を貫いた。  肉を断つ感触がない。まるで豆腐に針を通したかのように、抵抗なく刃が埋まる。

「ギ、ガ……?」

 オークの動きが止まる。  次の瞬間、巨体が光に包まれた。  断末魔を上げる暇もなく、オークの体はポリゴン状の光の粒子となって弾け飛んだ。

 カラン、と乾いた音がする。  オークがいた場所に、銀色に輝く輪が落ちていた。

「本当に出たな」

 俺は剣を鞘に納め、その輪を拾い上げる。  ずしりとした金属の質感。表面には精緻な彫刻が施されている。  再び【鑑定】する。

【剛力の腕輪】 
【レアリティ:SR】 
【効果:物理攻撃力+500。装備者に怪力を与える】

 間違いない。  俺は迷わずそれを左手首にはめた。  途端に、全身の筋肉が熱くなるような感覚が走る。  試しに近くの手頃な岩を片手で掴んでみた。バスケットボール大の岩が、まるで発泡スチロールのように軽く持ち上がる。  指に少し力を込めると、岩はボロボロと砕け散った。

「すげえ……」

 これなら戦える。  俺はこの世界でやっていける。確かな手応えがあった。

「あ、あの……」

 怯えたような声に、俺は振り返る。  木の根元でへたり込んでいたエルフの少女が、信じられないものを見る目で俺を見ていた。

「助けて……くれたんですか?」 
「ああ。怪我はないか」

 俺は短く返す。  正直に言えば、俺の目的はオークのドロップ品だった。だが、結果的に彼女を助けたことには変わりない。

「あ、ありがとうございます! 死ぬかと思いました……」

 彼女は涙目で立ち上がろうとするが、足に力が入らないようだ。  俺は手を差し出す。

「立てるか?」 
「は、はい。すみません」

 彼女はおずおずと俺の手を掴む。  その手は震えていた。  引き上げると、彼女は改めて俺の顔を見て、それから地面に砕け散った岩の残骸に視線を移した。

「すごい……オークを一撃で倒すなんて。それに、あの腕輪……」 
「これか?」

 俺は左手首を見せる。

「はい。オークがそんな綺麗な装備品を落とすなんて、聞いたことがありません。普通は汚れた皮とか、肉片くらいしか……」 
「運が良かっただけだ」

 俺は嘘をつく。  『急所』のことは誰にも言うつもりはない。

 少女は姿勢を正し、深々と頭を下げた。

「私はリーナといいます。エルフの里から来ました。危ないところを救っていただき、本当にありがとうございました」 
「俺は……カズヤだ。今はただの冒険者ってところだな」

 適当な肩書きを名乗る。まだギルドにも登録していないが、これからそうなる予定だ。

「カズヤさん……」

 リーナは俺の名前を反芻し、決心したような顔で顔を上げた。

「ご迷惑でなければ、森の出口まで同行させていただけないでしょうか。武器が壊れてしまって、一人では心細くて」

 彼女は折れた弓を悲しげに見つめる。  俺は少し考えた。  この森の地理は分からない。案内人がいるのは助かる。それに、エルフならこの世界の常識にも詳しいだろう。  さらに言えば、彼女も戦力になるかもしれない。弓使いなら、後方からの支援が期待できる。

 俺はリーナを【鑑定】した。

【名前:リーナ】 
【種族:エルフ】 
【職業:射手】 
【状態:疲労、武器破損】 
【スキル:弓術Lv3、風魔法Lv1、精霊視】

 悪くない。武器さえあれば十分な戦力だ。

「いいだろう。俺も街へ行きたいと思っていたところだ」 
「本当ですか! ありがとうございます!」

 リーナの表情がぱっと明るくなる。  俺たちは並んで森を歩き始めた。

「あの、カズヤさんはどこから来られたんですか? その服装、この辺りのものではないですよね」 
「遠くからだ。ずっと東のな」 
「東……東方諸国ですか。通りで、雰囲気が違うと思いました」

 異世界転移のことは伏せておく。  俺は歩きながら、周囲の気配に集中する。  視界の端に、リスのような小動物が横切るのが見えた。  その頭上にも、文字が表示されている。

【種族:フォレストラット】 
【ドロップアイテム:小動物の毛皮、薬草】

 そして、その背中には小さな赤い点が光っていた。  なるほど、魔物以外にも適用されるのか。  俺は道端の石を拾い、何気なく投げつけた。  『剛力の腕輪』の補正が乗った投擲は、弾丸のような速度で赤い点を射抜く。

 ピシッ。  小動物は光となって消え、その場には一束の草が落ちていた。

「えっ!?」

 リーナが驚きの声を上げる。

「今、石を投げただけで……それに、またドロップ品が……」 
「晩飯の足しにはならないか。薬草だ」

 俺は薬草を拾い、ポケットに突っ込む。  ドロップ率100%。  この能力があれば、素材集めも金稼ぎも思いのままだ。  俺の中で、この世界での生き方が明確に定まっていく。

 魔物を狩る。  赤い点を突く。  最強の装備とスキルを奪い取る。

 シンプルで、分かりやすいルールだ。

「行くぞ、リーナ。日が暮れる前に森を抜けたい」 
「は、はい!」

 俺の背中を追ってくるエルフの少女。  とりあえずは彼女を守りながら、街を目指すとしよう。 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界に召喚されたら職業がストレンジャー(異邦”神”)だった件【改訂版】

ぽて
ファンタジー
 異世界にクラスごと召喚された龍司だったが、職業はただの『旅人』?  案の定、異世界の王族貴族たちに疎まれて冷遇されていたのだが、本当の職業は神様!? でも一般人より弱いぞ、どゆこと?  そんな折に暗殺されかけた挙句、どさくさに紛れてダンジョンマスターのシータにプロポーズされる。彼女とともに国を出奔した龍司は、元の世界に戻る方法を探すための旅をはじめた。……草刈りに精を出しながら。 「小説家になろう」と「ノベルバ」にも改定前版を掲載中です。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

処理中です...