スキル『吸収』で魔物の力を奪い尽くす ~人間がスキルを使えない異世界で俺だけが理外の強さを手に入れる~

仙道

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第10話 力の差

「ブモォォッ!」

剛腕オーガが俺に向かって咆哮した。
カリアを甚振(いたぶ)る楽しみを邪魔された怒りが、その全身から湯気のように立ち上っている。
丸太ほどもある腕を振り上げ、俺を叩き潰そうと迫る。
速い。
あの巨体からは想像できない瞬発力だ。カリアが翻弄されたのも無理はない。

「危ないッ!」

倒れ伏したカリアが叫んだ。
彼女の目には、俺がただ無防備に突っ立っているように見えたはずだ。
騎士の技量をもってしても受け流せなかった豪腕。
それを、俺は正面から迎え撃った。

ドォォン!!

衝撃音が大気を震わせる。
橋の石畳が蜘蛛の巣状にひび割れた。

「……な?」

カリアが息を呑む音が聞こえた。
俺は一歩も退いていない。
オーガの巨大な拳を、左手一本で受け止めていた。

「嘘だ……」

カリアの口から乾いた音が漏れる。
無理もない。俺の腕は、オーガの腕の太さの数分の一しかない。
だが、その皮膚は黒光りし、鋼鉄の硬度に変質していた。
スキル『硬質化』。
それに加え、昨日オークから奪った『怪力』を全開にしている。

「ブ、ブオッ!?」

オーガが驚愕に目を見開く。
押し込もうと力を込めるが、俺の腕は微動だにしない。
単純な腕力勝負で、人間がオーガを圧倒している。
その事実が、魔物の本能に恐怖を植え付けた。

「これで終わりか?」

俺はニヤリと笑った。

「なら、次はこっちの番だ」

俺は掴んでいたオーガの拳を、万力のような握力で握り潰した。
メキメキッ、と骨の砕ける音が響く。

「ギャアアアッ!!」

オーガが絶叫し、腕を引こうとする。
だが、遅い。
俺は空いた右手を固く握りしめ、がら空きになった胴体へと突き出した。
狙うは心臓ではなく、その分厚い腹筋だ。
カリアの剣を弾き返した、自慢の天然鎧。

「壊れろ」

ドゴッ!!

重く、低い音が腹の底に響いた。
俺の拳はオーガの腹筋を紙のように貫通し、背中まで突き抜けていた。
内臓を破裂させ、脊椎を粉砕する一撃。
衝撃波がオーガの背後へ抜け、川の水面が爆ぜた。

オーガは白目を剥き、口から泡を吹いて崩れ落ちた。
ピクリとも動かない。即死だ。

『――対象の沈黙を確認。スキル《剛腕》を獲得しました』
『――対象の沈黙を確認。スキル《威圧》を獲得しました』

俺は血に濡れた腕を引き抜き、死体を見下ろした。
カリアが一生をかけて磨き上げた剣技。
それを、俺の暴力があっさりと凌駕した瞬間だった。

「……あ……」

カリアは腰を抜かしたまま、震える唇で何かを呟こうとしていた。
言葉にならないのだろう。
自分の信じてきた「強さ」の概念が崩壊したのだから。

「立てるか」

俺はカリアに手を差し伸べた。
彼女はビクリと肩を震わせ、恐る恐る俺の手を取った。
その手は氷のように冷たく、汗ばんでいる。

「……貴様は、一体何者なんだ」

「ただの人間だ。少しズルをしているだけだがな」

俺は彼女を引き立たせ、肩を貸した。
カリアの足取りは重い。ダメージのせいだけではないだろう。
彼女は俺の横顔を盗み見ながら、得体の知れない怪物を見るような目をしていた。

「行くぞ。日が暮れる」

俺たちは静まり返った橋を渡り、対岸の町へと向かった。
ルミナが「さすがタケル様!」と抱きついてくるが、カリアは無言のままだった。



町に入り、宿を取った。
安宿だが、森での野宿に比べれば天国だ。
カリアの治療を済ませ、食事を摂る。
彼女は出されたシチューを一口も食べず、ただテーブルの木目を睨んでいた。

「……悔しいか?」

俺が声をかけると、カリアは顔を上げた。
その瞳には、涙が溜まっていた。

「悔しいさ……! 私は、幼い頃から剣を振ってきた。血の滲むような努力をして、騎士団に入った。それなのに……」

彼女は拳を握りしめ、震える声で叫んだ。

「貴様のような、技も構えもない暴力に……あんなにも簡単に追い抜かれるなんて! 私の努力は、騎士の誇りは、何だったんだ!」

涙が頬を伝い、テーブルに落ちる。
それは嫉妬であり、絶望であり、そして憧れでもあった。

「理不尽だろ」

俺は淡々と言った。

「だが、それがこの世界のルールだ。スキルを持たない人間は、どう足掻いても魔物には勝てない。努力で埋まらない差がある」

「なら、私は……一生、敗北者のまま生きろと言うのか?」

「違う」

俺は立ち上がり、彼女の隣へ移動した。
そして、彼女の涙で濡れた頬に手を添え、強引にこちらを向かせた。

「お前には俺がいる。俺の力を使え」
「貴様の……力?」
「ああ。俺の『吸収』は、倒した魔物の力を奪う。そして、その恩恵は俺の所有物にも及ぶ。俺に従えば、お前も強くなれる」

嘘ではない。俺が強くなれば、より良い装備を与えられるし、より安全な環境を提供できる。
それに、俺の『威圧』スキルがあれば、雑魚魔物程度ならカリアでも無双できる環境を作れるはずだ。

「俺の騎士になれ、カリア。そうすれば、お前が欲しかった『絶対的な強さ』を、俺が代わりに振るってやる」

カリアの瞳が揺れた。
彼女の騎士道精神は、俺のような外道に仕えることを拒んでいる。
だが、本能は理解していた。
この男についていけば、見たこともない景色が見られると。

「……卑怯な男だ」

カリアは小さく呟き、俺の胸に額を押し付けた。

「だが……今は、その強さに縋(すが)るしかない。私の剣は折れたままだ」

「新しい剣を買ってやる。最強の剣をな」

俺は彼女の背中を撫でた。
鍛え上げられた筋肉が、俺の手の下で強張りを解いていく。
彼女は堕ちた。
プライドをへし折られ、俺の力に依存する道を選んだ。
これでいい。
俺は満足し、残ったシチューを平らげた。
明日は武器屋だ。この敗北した元騎士に、身の丈に合わない凶器を買い与えてやろう。
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