(完結)乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、私オジ専なのでお構いなく

海野すじこ

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親友の異変(ルデオンside)

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今までずっと一緒に過ごしていた親友でもあり、上司でもあり、家族のような存在。

そんな大事な存在がエリックだった。

そんなエリックがいつから俺の前で笑わなくなったのだろうか?

王太子の身分故に仕方がないことなのかもしれない。

でも政治的に巻き込まれたエリックと、エリックが自分よりも大事にしている婚約者のエレノア嬢は深く傷付き、愛する二人の関係は歪んでしまった。

エリックは間違った方向に努力を続けてしまうし、エレノア嬢も笑わなくなってしまった。

二人はいつも悲しそうな表情をしていた。

それがエレノア嬢が大ケガをした事がきっかけに、やっと歪んでいた状態から戻り、二人の関係が前に進み始めた矢先にこの事件だ。

頼むからもう二人を巻き込まないでくれよ。
やっと二人は前を向けるように、自然に笑えるようになったんだ。

もう二人が傷つく様を見たくねぇんだよ。

あの女は学園に入学して来るとまずはエリックに接触した。
そしてオースティン、次に俺。

しつこいくらいに避けても絡んで来るあの女が本当に不快で仕方なかった。

でも、たまにあの女が呟くと、頭がボーッとして何を話したかわからない、何をしたか覚えていない時があった。

それをおかしいと思った俺は、オースティンに相談した。

頭の良いオースティンに聞けば、何かわかるだろうと思ったのだが···聞いて正解だった。

なんと、オースティンはあの女が禁術を使っている可能性まで見抜いていた。

しかし、この国で禁術を使おうとするようなバカな奴が本当にいるのか?

禁術の罰と言えばみんな恐ろしいものだと子供でも知っている。

だからこの国では、一度も禁術を用いた事件は起きていない。

本当に、そんなものを使おうとする奴がいるのか?

俺は半信半疑だった。

今は急ぎ、禁術を防ぐ為の魔道具が出来上がるのを待っている状態。

それが出来上がる前に事件が起きなければいいが···。


しかし、恐れていたことが起きてしまった。

それは王妃主宰のパーティーで起きた。

俺は久しぶりに、二人がパーティーに来るのを知っていたので、二人を待っていた。

ずっとエリックが俺達に紹介をしてくれなかったが、エレノア嬢の事は知っていた。

エリックが紹介してくれないから、話した事はなかったけど。


王城に、エリックに会いに来ているであろう姿を何回も見た。迷っていた彼女を実は助けたこともある。

きっと彼女は、覚えていないとは思うが···。

エレノア嬢は···俺の初恋の人だから。

大事なエリックの婚約者だから、この気持ちは一生彼女に告げるつもりはない。

だから、大事なエリックの為に、大事なエリックの婚約者の為に···俺は命をかけて二人を守ると決めている。

しかし、なんて事だ···。

あの女の姿を見た時、全力であの女を止めようとした。

だけどあの女が、「かきんあいてむ使用」と呟いた瞬間···体が動かなくなった。

「かきんあいてむ」ってなんなんだ?

その瞬間の記憶がボーッとしか思い出せない。

しかし、あの女が何かをぶつぶつと呟いているのだけは覚えていた。

「かきんあいてむを使い過ぎてもう後がないのよ···!心配だからって何度も試し過ぎたわ。一回使うごとに※100万ゴールドも使わないといけないなんて···。しかも、あんなに短時間の効き目しかないなんて···完全に詐欺じゃない!おかげで何回も使うハメになるし···没落寸前よ···。もうこれ以上迂闊に使えないのに···。」

※こちらの世界のお金に換算すると100万円くらいです。


あの女は、そんな事をぶつぶつ呟いていた。

そして、俺が動けない間にエリック達の方へ行ってしまう。


ボーッとする頭でも、あの二人を守らないと!と必死に抵抗していたその時、オースティンが俺の首に何かネックレスみたいなものを掛けた。

すると、あんなに頭がボーッとしていたのが嘘のようにクリアになる。

オースティンは「やはりか···。」と苦々しい苦悶の表情を浮かべていた。見れば、オースティンの首にも同じネックレスが
かかっている。

俺はエリックとエレノア嬢の元へ走るが、間に合わなかった。

エレノア嬢が、今にも泣き出しそうな表情で広間を駆け出して行く。

どちらへ行くか···迷ってしまった。

エレノア嬢を追いかけるか、エリックを救出するかで···。
困った俺はオースティンの方を見る。

オースティンは指でエリックを指差しパクパクと口を動かした。

オースティンの唇の形が「止めてください!」と動いたのが見えて、俺はエリックの肩を掴む。

まだ動けないと思っていた俺が動けた事に驚いたのか、あの女は「どうして動けるのよ···話が違うじゃない!」と呟いた。

やはりこの女は···。

思い切りあの女を睨み付けて、「エリック様は急ぎの仕事が入りましたので、商談の最中ですが失礼します!」と言い無理矢理控え室へ連れ帰った。

周りの貴族達は、「なんだ···商談だったのね。あまりに近い距離感で何事かと思ったわ。ランバート公爵令嬢は、商談の為に席を外したのね。まあ殿下があれほどランバート公爵令嬢を大事にされてるのだから···こんな公共の場で浮気なんてあり得ないわよね···。だいたいあの女性が、無理矢理商談を通そうと色仕掛けしようとなさったんでしょうけど···ねぇ?クスクスッ。」

ギリギリ悪評が広がる前に止めることができたのは不幸中の幸いだ。

あのまま···あの女とファーストダンスを踊ってなんかいたら···あいつの努力がすべて無駄になっちまう所だった。

今までにない程の怒りが湧いた。

無理矢理引き摺るようにエリックを連れて来たが、明らかに様子がおかしい。

虚ろな表情に何も映していない瞳。

無理矢理引き摺るように引っ張っているのに、抵抗すらしない。

急いでオースティンの待つ控え室へエリックを押し込んだ。

オースティンは部屋に鍵をかけて、盗聴と覗き見防止の魔法をかける。

そして先ほどのネックレスをエリックの首に掛ける。

すると、徐々に焦点の合わなかったエリックの目に光が戻ってくる。

「私は···一体···?ここは···?」

まだ禁術が解けたばかりで意識がハッキリしていないようだ。

「ハッ···!?おい!!エレノアは?エレノアは一体何処にいるんだ?彼女は私と····私と一緒にいたはずなのに···!!」

エレノア嬢が側にいないことに気付いたエリックが、エレノア嬢を探しに行こうと暴れ出した。

俺とオースティンは、気まずそうに顔を合わせた。

「エリック。落ち着いて今から私が言う事を聞いて下さい。エレノア様には王家の影がついているので安全です。今から何が起きたか、すべて話しますから···。落ち着いて下さいね。」

オースティンの言葉に頷くエリック。

そしてオースティンは、エリックに何が起きたのか、事細かに話し始めた。












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