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エピローグ
しおりを挟むその日は雲一つない晴天だった。
たくさんの鳩が二人をまるで祝っているように一斉に羽ばたく。
たくさんの人々に囲まれた二人が幸せそうに大聖堂の階段を降りていく姿を皆微笑みながら見守っている。
二人は囲まれた招待客達に笑顔を振り撒き手を振った。
二人が今日この日を迎えるまでには、途方のない苦労の日々があったことを知る招待客達は幸せそうな二人を心から祝福している。
「ついに結婚してしまいましたね。エレノア嬢。ルデオンは彼女に気持ちを伝えなくて良かったのですか?ずっと好きだったんでしょう?」
オースティンがルデオンをチラリと横目で見つめる。
「俺は一生この気持ちを伝えるつもりはなかったよ。俺の大好きな二人がやっと幸せを掴んだんだ···。心から祝福してるさ。そういうオースティンもエレノア嬢のこと好きだったんだろう?伝えなくて良かったのか?」
苦笑いをしながらルデオンはオースティンに同じ事を聞き返した。
「言える訳がないでしょう?あんなに幸せそうな二人を見たら一生言うつもりはありませんよ。墓場まで持っていくつもりです。私も大好きな人と、大事な友の良き日を心から祝福していますよ。」
ルデオン自身がエレノア嬢を好きだった事もあり、オースティンがいつも熱の篭った眼差しでエレノア嬢を見つめていた事に気付いていた。
今も失恋の心の痛みで悲しげな笑みを浮かべる友を心配していた。ルデオンも今同じ痛みを抱えているからこそ少しでも心が軽くなればと思ったのだ。
「でも良かったな。二人共。あんなにいい笑顔で笑えるようになって。色々ありすぎて···一時はダメになるかもって思ってたから···心底安心したよ。あんな幸せそうな笑顔を見せられたら祝わずにはいられないよな。もう誰にもあの幸せを壊させないように···俺達側近が二人を、これから生まれてくる二人の子達も守っていかないと···な?」
「そうですね。彼等の幸せはやっと始まったばかりです。これからも、この先も···二人が、これから生まれる二人の子供達が幸せに笑って過ごせるように私達も気合いを入れてお守りしていきましょう。」
ニカッとルデオンが笑い、普段めったに笑わない男オースティンも満面の笑みを浮かべた。
二人の目の前には、純白のドレスを身に纏い幸せそうに微笑む美しい新婦と、新婦を愛しそうに見つめ甘い笑みを浮かべる美しい新郎の姿があった。
「こんな晴れの日に言うのは何ですが···今夜一杯やりませんか?失恋記念に。祝福はしていても···やはり失恋は辛いので付き合ってくれませんか?」
オースティンの気持ちを察したルデオンはなるべく明るい声と表情で言葉を返す。
「いいなそれ!失恋記念か···。朝まで語り明かそうぜ。美味い酒と美味い飯も食いながらさ?」
ルデオンがいつもの調子で返すものだから思わずオースティンの体から力が抜けて笑ってしまった。
この日二人は、深酒をしすぎてしまい···翌朝同じベッドで目覚め、友情から違う感情が生まれてしまうのはまた別のお話···。
────
結婚式が終わり御披露目のパレードを終えた私達は、二人の為に新たに建築された“ブルースター宮”へ向かう。
ここが私達の新たな新居ブルースター宮。
名前の由来は、庭にたくさんのブルースターが植えられているからだ。
ブルースターの花言葉は「幸福な愛」「信じ合う心」という意味がある。
陛下や王妃様の気持ちが伝わって来る花言葉だった。
私達の結婚指輪にもデザインされている花だ。
「なんだか今日まであっという間だったね。」
エリックがタイを外しながらベッドに腰掛ける。
私もエリックの隣に腰掛けた。
「本当にあっという間の出来事で、正直まだ結婚したって実感がないわ。でも私達やっと結婚できたのね···。ここまで色々あったから、今日この日をエリックと迎えられて良かった。」
エリックに向けて微笑むとエリックもホッとしたように笑みを浮かべた。
「私もエレノアと今日という日を迎えられて良かった。一度はもうこんな日は来ないかもしれないって諦めかけていた事もあったから···今すごく安堵してる。今、私の目の前に君が妻としてそこにいてくれる事がどれだけ嬉しいか···結婚した実感がないなんて言えないほど君を愛すから覚悟して?」
そう言うとエリックが私をベッドに押し倒した。
エリックは私の両手を掴み私の姿を見下ろしている。
いつもの優しいエリックと違い、エリックの瞳には熱い熱を感じる。
妖艶な笑みを浮かべるエリックに胸がドキドキしてしまう。こんなエリックの姿はゲームでも見たことがなかった。
エリックに両手を掴まれてしまった為に身を捩る事が出来ずエリックと見つめ合うしか出来なかった。
「エレノア···君が好きだ。大好きだ。エレノア愛している···私が君を絶対に幸せにする。だからエレノア···君の全てが欲しい。」
熱い瞳に射抜かれた私は頷く事しか出来なかった。
見つめ合い触れあう唇、口づけはどんどん深くなった。
エリックの肌と私の肌が触れ合い一つになる。
その日私は、エリックに何度も何度も愛され···彼の愛情の深さと絶倫さを知る事になった。
翌日、侍女達がエレノアの身支度をする際にあまりのキスマークの多さに苦笑いし、エレノアは恥ずかしさのあまり穴に入りたくなった。
─────
とある夜会の中心には美しい王妃がいた。
周りの若い令息達は一目彼女の姿を見ようと彼女の周りを取り囲んでいる。
「エレノア王妃···どうか今夜私とダンスを一曲踊っていただけませんか?」
エレノアの美貌は年々輝きが増していた。
若く美しい令息達は、うっとりとした表情でエレノアの姿を見つめている。
「ごめんなさい。陛下がヤキモチを妬いてしまうからご遠慮するわ。」
国王となったエリックは愛妻家で有名だ。
エレノアとエリックの間には、長男のエイリークと長女リリノア、次女のエレジアともう3人の子供がいる。
「エレノア王妃はエリック陛下を今も愛しているのですか···?私は美しさと若さでは陛下に負けません。どうか今宵は私をダンスのお相手に選んでいただけませんか?」
なかなか諦めない令息にエレノアは美しい笑みを浮かべてこう述べた。
「私おじ専なのでお構いなく。今も昔も誰よりもエリックを愛しているわ。どんどん美しく年を重ねていくエリックに夢中だから他の男性は目に入らないの。ごめんなさいね。」
そう言うとエレノアは最愛のエリックの元へと去っていく。エレノアはエリック以外の男性とダンスを踊ることはありませんでした。
エリックは優理花好みの筋肉を維持し、美しく年を重ねていました。その“イケオジ”っぷりは、若い貴族令嬢の一部と同年代の夫人達からの人気は絶大でした。
もちろんエレノアもそんなエリックに夢中です。
優理花は夢を叶え、幸せの絶頂にいたのです。
素敵な夫と愛しい子供達に囲まれ、優理花はこの世界でハッピーエンドを迎えることができました。
これから先、もっともっと魅力が増していくエリックと子供達と幸せに暮らしていくのでした。
(完)
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