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じゃあ子作りに励もうか
しおりを挟む赤子と出会ってから3日目。
「もう行っちゃうんだな」
最初は面倒くさいと思ったが、こうずっと一緒にいると可愛く思えてくる。
ぼくが守らなくてはならないような、そんな気持ちになるのだ。
もう帰ってしまうのがなんだか寂しくて、柔らかい腕をふにふにと指で確かめた。
「シオン様」そこに、教育係がふわりと現れる。
「アル、早かったな」
アルは姿勢を正すと、では、と改めてぼくを見る。
「答えは、出ましたか」
「ああ。答えは、姉様の子ども!だ!」
ぼくはびしっと効果音が出るほどの勢いで指を指して答えた。
「大正解ー」
するとそこへ姉様が現れ、ぼくを抱き締めた。
抜け羽根がすごい。
腰の辺りまで伸びた柔らかい髪は美しく輝き、それはぼくの髪の色にも似ているし、あの赤子とそっくりだ。
「結婚、おめでとう」
「ふふ、ありがとう。どう、赤ちゃん可愛かった?」
いつの間にか、姉様の腕のなかで赤子は大人しく寝息を立てていた。
「ああ、とっても」
これはお世辞でもなんでもない。
本当にとても可愛い。
自分と血が繋がっていると思うと、余計に愛おしく感じた。
「それではシオン様、お父上には課題達成の旨お伝えしておきます」
「ぼくの天才っぷりをよく伝えといてくれ」
「寧ろ、初日の時点で気が付いても良さそうなものでしたけどね」
アルめ。いつも一言二言多いんだよな。
終わりよければ全てよしなんだよ!
「じゃあそろそろ帰るわね。パパもママも、シオンが顔出すの待ってるわよ。たまには遊びに来なさいね」
「失礼致します」
二人は来たときと同じようにふわりと人間界を去っていった。
天使が天界に戻る様はとても眩しく美しい。
「嵐が過ぎ去っていったな」
「お疲れ様」
ことんと、温かいお茶がテーブルに置かれた。
「あ。ありがと」
「いなくなると寂しい?」
「そうだな、もう少しいても良かったのにな」
浩人は肯定をし、お茶を啜りながら優しく微笑んでいる。赤子を思い出しているのだろうか。
どこが可愛かった、あれが可愛かったと思い出話が尽きない。
浩人はスマホの待受を見て、いい思い出になったな、と目を細める。
ぼくも隣に座り、画面を覗き込んだ。なんて幸せそうな写真だろうか。
「ねえ、シオン」
「あ?、うわ」
声をかけられて、この距離の近さに気が付いた。しまった。
「もう、いいでしょ?」
浩人は目を閉じ、何かを待っている。
何か、それは分かっているのだが。
別に初めてのことではない。
浩人はこれが好きだから。
キスは天使の祝福。いやらしいものではない。けして。恩返しの一環だ。
無防備に閉じられた瞼にどきりと高まるのを気付かないふりして、そっと祝福を送る。
と、腰を引き寄せられ身じろいだが、抵抗のポーズなど何の役にも立たないと知っている。
軽くリップ音を立てながら何度もキスを重ねる。この音が、ぼくの体温をより高めていく。
やがて浩人の唇はぼくの唇をはむりと包み込み、ちゅ、と音を立てて吸い付かれれば腰がぞくぞくと震えた。
「子ども、ほしくなった?」
「このタイミングで、なに」
急に止められたキスにもどかしく思い、ぼくは無意識のうちに離れた唇をねだった。
目の下の赤くなったのを親指で撫でながら、浩人はくすりと笑みふいにぼくのシャツに手をかけた。
「じゃあ子作りに励もうか」
「だから、男だって、言ってるだろ」
男だという枷がなければ、流されていたかもしれない。一瞬、いっかな、と思ってしまいそうな目で見てくるから。
「ねえ、知ってる?人間界では性別に関係なくそういうことしていいんだよ」
そんな!嘘だろ?天界と変わらないのか。そんな馬鹿な。
「ね?」
「ね、じゃな、」
目線が交わり、再度口付けを交わそうかというその時。
鳴り響くラッパの音。
舞散る大量の羽根。
「ま、またか」さすがの浩人も頭を抱える。
「ちがうから!良いムードとかじゃないから、やめて!」
これはただの祝福だぞ。ちがうんだぞ。
天使がいい雰囲気になった時、決まって小さな天使達がラッパを吹き鳴らしにやってくる。
律儀に人間界にまでやってくるのだ。
「……寝ようか」
「うん」
また羽毛布団が作れそうだな。
ぼく達の素晴らしい3日間が、これにて収束を迎えた。
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