【R18】【短編読切】理想の夫婦〜もうひとつのエンディング〜

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クリスマスの贈り物 後編

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児童施設を出た頃には、空はすっかり夜になっていた。

クリスマスイブの街は、どこかやわらかい光に包まれている。

街路樹のイルミネーションがきらきらと輝き、遠くで鈴の音のような音楽が聞こえてくる。

車のドアが閉まる。

一平が運転席に座り、エンジンをかけた。

暖房の風が静かに流れ出す。

助手席では、まだ赤いラバーサンタの姿のままの麗子がシートに背を預けていた。

一平はハンドルを握りながら笑う。

「いやー」

軽く息を吐く。

「大成功だったな」

車はゆっくり施設の前を離れる。

バックミラーには、児童施設の建物が小さくなっていく。

窓の向こうで、まだ子ども達が手を振っているのが見えた。

麗子はその様子を見ながら、小さくうなずく。

「そうだね……」

声は穏やかだった。

けれど…どこか少し元気がない。

一平はちらりと横を見る。

赤いラバーマスクで表情はわからない。

だが、長い一日を終えた空気が漂っている。

一平は少し笑って言った。

「まあ…さっきのハイテンションのあとだしな…」

信号で車が止まる。

一平は肩をすくめる。

「疲れたんだろ。お疲れ様」

麗子はゆっくり首を動かした。

「うん……」

小さく息を吐く。

ラバーコートの胸元がわずかに上下する。

一平は続けた。

「でもさ」

少し楽しそうな声になる。

「演技力すごかったぞ」

「え?」

「ほんとにヒーローみたいだった」

「未来型スーパーマンサンタ…完璧だった」

麗子は少し沈黙する。

それから、小さく言った。

「……ありがとう」

その声は、さっきの元気なサンタの声とは違って、いつもの落ち着いた麗子の声だった。

車は大通りに出る。

イルミネーションがフロントガラスに流れていく。

一平は前を見ながら言った。

「子ども達めちゃくちゃウケてたぞ」

麗子は少しだけ笑う。

「うん」

「楽しそうだった」

「よかった」

一平は頷く。

「うん」

少し間が空く。

車内には静かなクリスマスソングが流れていた。

一平はふと思い出したように言う。

「そうだ!ラブホテル着いたら」

ハンドルを軽く回しながら続ける。

「ちょっと休憩しよう」

「今日は長かったし」

「まず一息だな」

麗子は助手席で静かにうなずいた。

赤いサンタ帽の先が小さく揺れる。

車はゆっくりとラブホテルの駐車場に入っていった。

ネオンの看板。
少し色あせた外壁。
入口の横に並ぶ小さな窓と部屋番号のランプ。

昔とほとんど変わっていない。

一平は思わず笑った。

「懐かしいな」

エンジンをかけたまま、周囲を見回す。

「相変わらず古い」

そのとき、少し眉を上げる。

「……でも」

駐車場には車が何台も停まっていた。

いつもより明らかに多い。

部屋のランプもかなり埋まっている。

一平は苦笑する。

「そりゃそうか…クリスマスイブだしな」

肩をすくめる。

「カップルは来るよな」

助手席では、赤いラバーに包まれた麗子が静かにその様子を見ていた。

いや。

正確には、見ていなかった。

いつの間にか彼女は身をかがめていた。

上半身を前に倒し、顔を車のボンネットの方に隠すようにしている。

赤いラバーサンタが、ほとんどダッシュボードの下に隠れている。



一平は横を見て笑う。

「おい」

麗子の声がこもったまま聞こえる。

「ちょっと想定外ね……」

マスク越しの声は、さっきのヒーローサンタとは違い、少し小さい。

助手席で屈んだまま、麗子は言う。

「人……多い……」

一平は周囲を確認する。

駐車場の端では、ちょうど別のカップルが車から降りていた。

一平は落ち着いた声で言った。

「大丈夫だよ。タイミング見て合図する」

麗子はそのまま小さくうなずく。

「……うん」

ラバーコートがシートにこすれて小さく音を立てる。

一平はゆっくり車を奥のスペースに停めてエンジンを切る。

駐車場の空気が少し静かになる。

一平は窓から外を確認する。

右。
左。
駐車場の入り口。

今は誰もこちらを見ていない。

そして。

「……今だ」

小さく言う。

「行こう、麗子!」

麗子は素早く身体を起こした。

赤いラバーサンタが一瞬で姿を現す。

一平はドアを開け、荷物を手に取る。

麗子も車から降りる。

夜の空気がラバーコートに触れ、表面が街灯の光で艶やかに輝く。

二人は足早に入口へ向かう。

受付の横にあるパネルには、空室ランプがいくつか点いていた。

一平は指さす。

「あそこ」

「階段上がればすぐだ」

麗子は頷く。

ヒールの音をなるべく小さくしながら、二人は階段へ向かう。

階段を上り始める。

コツ。コツ。

赤いヒールがコンクリートの段に触れる。

もうすぐ二階。

あと少し。

そのときだった。

ガチャ。

階段の先。

廊下の扉が突然開いた。

一平は思わず顔を上げる。

そこから出てきたのは――若いカップル。

二十代前半くらいの男女だった。

そして目が合う。

次の瞬間、女性が小さく声を上げた。

「ワッ!」

目を丸くしている。

視線の先には――全身を赤いラバーで覆ったサンタ。

一平は反射的に動いた。

麗子の前に一歩出る。

自分の身体を盾にするように立つ。

「すみません――」

そう言いかけたとき。

後ろから静かな声が聞こえた。

「大丈夫よ、一平」

次の瞬間、麗子が一平の横をすっと通り抜ける。

赤いラバーコートが階段の光を反射する。

ヒールの音。

コツ。コツ。

一平を追い越し、麗子は堂々と階段を上った。

そして若いカップルの前で立ち止まる。

赤いマスクの顔が、二人の方を向く。

少し首を傾ける。

「どうかな?」

軽くポーズを取る。

ラバーサンタ帽が揺れる。



「この姿」

一瞬の沈黙。

そして若い男性が目を輝かせて言った。

「めちゃくちゃステキです!」

その声は本気だった。

驚きと、感心が混ざった表情。

麗子は少し嬉しそうに肩を揺らす。

「ありがとう」

そして赤いラバーマスクの目元がわずかに細くなる。

ウインク。

それだけ残して、麗子はヒールを鳴らして歩き出した。

コツ。コツ。

若いカップルの横をすっと通り過ぎる。

後ろで女性が小さく言う。

「すごい……」

男性も頷く。

「エロかっこよかったな……」

階段の上で、一平はまだ少し呆然としていた。

そして小さく笑う。

(未来型スーパーレディーサンタ……)

どうやら。

この夜は、ここでもしっかりヒーローらしかった。





ーーーーーーーーーーーーーー


部屋のドアが静かに閉まった。

カチリ、と鍵の音がする。

外の廊下の気配が遠ざかり、部屋の中には落ち着いた照明と静かな空気だけが残った。

昔とあまり変わらない内装。
少し古いソファ。
壁の間接照明。
厚いカーテン。

一平は荷物をテーブルの上に置き、ふっと息をついた。

「はあ……」

そして苦笑しながら言う。

「見られちゃったね」

麗子の方を見る。

赤いラバーサンタの姿のまま、部屋の中央に立っている。

一平は頭をかいた。

「ごめんね」

麗子は――無言だった。

マスクで覆われた顔は動かない、赤いラバーコートも静かに光っているだけ。

一平は少し気まずそうに笑う。

「でもさ」

軽く手を振る。

「さっきの麗子、すごかったよ。堂々としてた」

思い出して笑う。

「見られても全然平気って感じで」

麗子は――まだ何も言わないーーただ静かに立っている。

一平はそこで、ようやく何かに気づく。

空気が少し違う。

さっきまでの元気なサンタでも、施設から帰る車の中の静かな麗子でもない。

何か別のものが混ざっている。

一平は少し声をやわらげる。

「……ちょっと…ゆっくりしよう」

部屋のテーブルの方を見る。

「何か飲み物注文するね」

そう言って、フロントに繋がる電話へ歩き出そうとした。

そのとき。

「一平……」

声が背中に届く。

一平は振り向いた。

赤いラバーサンタがそこに立っている。

そしてゆっくりと近づいてくる。

ヒールの音。

コツ。コツ。

その声はさっきまでとは違っていた。

甘く、低く、どこか熱を含んでいる。

「もう……」

少し息を含んだ声。

「…我慢の限界……。」

一平は思わず目を瞬かせる。

麗子は一歩、また一歩と近づく。

赤いカラコンの瞳が照明を受けて艶やかに光る。



そして一平のすぐ前で止まった。

マスクの奥の視線が、まっすぐ向けられている。

麗子は、うっとりした声で言った。

「私……」

ゆっくり息を吐く。

「ずっと……この姿を見られてた……」

言葉の一つ一つが、どこか震えている。

「いろんな人に……」

施設の子ども達。
駐車場。
階段のカップル。

今日一日、赤いラバーサンタの姿は、ずっと人の視線の中にあった。

麗子は続ける。

「恥ずかしくて……」

小さく笑うような吐息。

「嬉しくて……」

ラバーグローブの手が、そっと自分の胸元に触れる。

「本当は」

声がさらに低くなる。

「こんなこと……言っちゃダメなんだけど……」

少し顔を上げる。

赤いマスクが光を受ける。

「もう……」

吐息のような声。

「興奮して…我慢の限界なの……」

その声は、完全にうっとりしていた。

いつもの理性的な麗子ではない。

人に見られたこと、注がれた視線。

それが彼女の中で、何かのスイッチを強く押してしまった。

一平は、その変化を黙って見ている。

目の前には、未来型スーパーマンサンタでもなく、研究者の麗子でもなく、ただ赤いラバーに包まれた、倒錯したほどの高揚の中にいる麗子が立っていた。

部屋の照明が、静かに二人を照らしていた。

「ねえ、一平……」

麗子の声は熱に浮かされているようだった。

ホテルの窓から差し込む夕方の光が、彼女の赤いラバーマスクを艶やかに輝かせている。

彼女はゆっくりと椅子から立ち上がり、コートの裾を指先で摘んだ。

赤い指先の間から零れるような動きで、床に長く伸びた赤い布が波打つ。

「今日は、この姿でずっと…」

麗子は甘く囁いた。

赤い唇の端から覗く歯列が光る。

「車の中でも……児童施設でも……みんな私を見てた…」

一平は息を呑んだ。

マスクの隙間から覗く赤い瞳は、情欲で潤んでいる。

「どう感じた?」

一平はソファから身を乗り出した。

「興奮してた…。」

麗子は正直に答えた。

「施設で…太腿の……」

彼女はコートの裾を僅かに持ち上げ、黒い網タイツに包まれた脚線を見せた。



「コートの下から手を入れて触れてくる子供もいたわ…」

一平は続けて言う。

「それで?」

「ドキっと…しちゃった…」

麗子は意味ありげに微笑んだ。

「でも…子供だから深い意味はないの…」

「だってラバーコートの中の大事なところはずっと隠してた……」

彼女はゆっくりとソファに近づき、一平の前に立った。

赤いコートのボタンが触れ合う音が、静かな室内に響く。

「ねぇ…この中がどうなっているか……一平に見てほしいの…」

麗子の息が一平の耳元を擽る。

「一平……恥ずかしいけど……見て……」

指先が優雅にコートの一番上のボタンに触れる。

ポチッと音を立てて外れると、赤い生地の間から僅かに赤い網タイツのようなインナーが覗いた。

「あれ?」

一平は眉を上げた。

「この前の家のときとは違う……」

「…そう…」

麗子は得意げに目を細めた。

「この前は中は普通の服だったけど……」

彼女は二つ目のボタンを外す。

 「今日は特別なものを着て来たの…」

三つ目のボタンが外れると、赤い網の上に透けた乳房の輪郭が見えた。

光沢のある素材が照明に反射し、艶めかしい光沢を放っている。

「これ……」

麗子は囁いた。

「透け透けで……おっぱいが全然隠せてないのよ」

四つ目のボタンが外れると、完全に露わになった。

ラバーレオタードの生地は辛うじて乳首を隠しているものの、魅惑的な谷間や乳房のラインまでもが鮮明に見える。

「コートの中はこんな姿で……ケーキを配ったり……カップルにこの姿どうって……」

麗子の声は震えていた。

赤いラバーマスクの中で興奮しているのが分かる。

「きっと誰も気づかない…」

一平は言葉を失っていた。

彼女の大胆さと倒錯した快感に圧倒されながらも、股間が疼き出すのを感じる。

「見て……」

麗子は最後のボタンに指を掛けた。

「…ラバーサンタの…本当の姿……」

ゆっくりと解かれる結び目。

赤いレザーコートの生地が左右に開き、彼女の全身が一気に露わになる。



「どう?」

麗子は恥じらいと誇らしさが入り混じった表情で尋ねた。

「ずっとこれを隠して過ごしてきたのよ……一日中……いろんな人が近くにいる中で」

一平の手が無意識に伸び、黒い網タイツに包まれた太腿に触れた。

「そうだったんだ…」

麗子の赤い瞳が妖しく細くなる。

「あなたのために……とっておいたの」

「見て……これが本当のラバーサンタ…」

麗子は赤いラバーマスクの下で妖しく囁いた。

クリスマスイブの午後、ホテルの一室に漂う静寂を破るように、彼女の赤いコートが床に落ちる。



赤いラバーのサンタ衣装—襟元に白いファーが施され、胸の部分は大胆にカットアウトされている。

ラバー製のグローブが指先まで覆い、黒い網タイツが太腿を艶めかしく引き立てている。

「顔まで全部ラバーなのよ」

麗子はゆっくりと銀色のハーフマスクの頬に触れた。

呼吸で湿った銀色のハーフマスク越しに、赤い瞳が光っている。

「窒息しそうなくらい息苦しい……でもそれが堪らないの」



彼女の手がスカートの内側に滑り込む。

湿った音が静かに響く。

「あぁ……」

麗子の声が甘く歪む。

「誰かに見られるかもしれないって思ったら……こんなに……」

一平の指が彼女の腰に触れる。

「濡れてるの?」

「もっと酷いわ」

麗子は挑発的に笑った。

「下着を履いてないのよ…網タイツと…このラバーだけで……直接感じちゃってる」

一平の喉が鳴る。

彼女の股間部分のラバーが湿気を帯びて光っている。

麗子は一平の耳元で囁いた

「このサンタさんはプレゼントが欲しいの…」

彼女の指先が一平の腹筋を辿る。

ラバーグローブの冷たい感触が肌を刺激する。

「ねえ」

麗子は腰を押し付けた。

湿ったラバーの生地越しに、彼女の体温と鼓動が伝わってくる。

「わかるでしょう?どれだけ待ってたか…」

一平が息を詰まらせる。

「一日中で……この格好で……」

「そうよ…」

麗子の声が熱を帯びる。

「車の中でも……施設でも……ずっと我慢してきたの」

彼女はラバーマスクの下で微笑んだ。

「みんな未来型サンタを笑顔で見てたけど……誰も想像しなかったでしょうね」

一平の指が彼女のラバーの襟元をなぞる。

「…さすがに誰も中はこんな風になってるなんて…」

「ふふっ…でしょ…」

麗子は一平の手を自分の胸元に導いた。

「サンタさんがこんなエロい姿をしてるなんて……」

冷たいラバーの下から伝わる熱に、一平の指が止まる。

「外は寒かったよ…」

麗子の声が柔らかくなる。

「あの赤いコートだけ羽織って……凍えそうな外を歩いてきたの…」

一平が彼女の腰に腕を回す。ラバーと肌の境界線を指先でなぞりながら。

「何考えてた?」

「……一平との夜…」

麗子の呼吸が速くなる。

赤いラバーマスクの上から二重にシルバーのマスクを被って口を覆っている。

中が湿って間から水滴がこぼれる。

「それにラバーコートの下に……誰にも見せられない秘密を持ってるって」

彼女は突然身体を起こし、窓際に立った。

カーテンの隙間から冬の陽光が差し込み、赤いラバーの衣装を艶めかしく光らせる。

「見て」

麗子は両腕を広げた。

「普通のサンタさんと違うところ」

一平はソファから立ち上がり、彼女の背後から抱きしめた。

「どこが違う?」

「ここ」

麗子は右手で赤いマイクロミニスカート捲りあげての股間部分を撫で下ろした。

「私のアソコ…濡れて光ってるでしょう?」

「そうだね…」

一平は低く囁いた。

彼の指が慎重に動く。

「ずっとこうしたかった?」

麗子の背中が小さく震える。

マスクの中から漏れる吐息が、彼女の興奮を物語っていた。

「いろんな人たちが……未来型サンタの私を見てるのに」

彼女の声は熱っぽく震える。

「誰も想像しなかったでしょうね……」

一平の指が彼女の腰の縁をなぞる。

ラバーの冷たさと肌の温もりの対比が鮮明だ。

「こんな風に……」

麗子は腰を一平に押し付けた。

濡れたラバーの下から、彼女の湿り気が伝わってくる。

「私が熱くなって……期待してることを」

一平の息が荒くなる。

「コートの中は、ずっとこんなに濡れてたの?」

「うん…」

麗子の声は甘く歪む。

「施設を出てからはずっと……興奮しっぱなしだったわ」

「だから……もうこのラバーを脱ぎたくない!」

麗子は突然声を上げた。

マスクの中で目が輝いている。

「このぐちゃぐちゃのままの私を……犯してほしいの…」

一平の呼吸が浅くなる。

彼女の異常な欲望と献身が彼を魅了する。

「でも…そのままじゃ息苦しいだろう?」

「それも興奮するの」

麗子は一平の腰に手を回した。

「息苦しいから……触覚が研ぎ澄まされて……」

彼女の赤いラバーブーツが床を鳴らす音だけが部屋に響く。

マスクの内側で蒸れた空気が二人の間に立ち込める。

「お願い……」

麗子の声が震える。

「今日だけは……普通じゃないやり方で愛して」

一平の指が彼女のラバーマスクの縁をなぞった。

「本当にいいのか?」

「うん…」

麗子は腰を押し付けた。

湿った音が二人の間に響く。

「ぐちゃぐちゃになりたい……めちゃくちゃにして」

一平はゆっくりと彼女の腰を掴んだ。

冷たいラバーと熱い肌のコントラストが手のひらに刻まれる。

「ああ……」

麗子のマスクの中で息が熱を帯びる。

赤いラバーのサンタ衣装を纏ったまま、ベッドに押し倒された彼女の体が大きく震えた。

一平の手が彼女のミニスカートを剥ぎ取り、網タイツをさらに引き裂いて、麗子の下半身が丸見えになる。

すると麗子は逃げるようにベッドの横の小さなソファに腰を下ろして、小さくつぶやいた。



「やめて……全部脱がさないで」

「どうして?」

一平の声は抑えきれない欲望に震えている。

「このままの方が良いの?」

「うん…」

麗子は首を振った。

「このラバーで顔を覆って……私が誰だか分からないまま……」

一平の唇が彼女の赤いネット越しの乳首に触れた。

「本当に見知らぬサンタを襲ってるみたいだ…」

麗子の赤いラバーマスクの中が汗で充満していく。

「そう……あなたは知らないサンタさんを犯してるの……誰にも言えない秘密を共有してる……」

一平の指が彼女の陰部に滑り込んだ。

湿った感触が指先に絡みつく。

「ぐちゃぐちゃだね……」

「だって……」

麗子の声が掠れる。

「ずっと我慢してたから……車の中でも……信号待ちでも……」

「想像してた?」

一平の息が荒くなる。

「してた…」

麗子は恥じらいもなく告白した。

「今日一日……誰かに見られるかもしれないって……興奮してる自分がいた…」

一平の指が彼女の中心を刺激する。

陰部の中から漏れる音が淫靡に響く

「ゴムはつけないで」

麗子は突然言った。

赤いラバーマスクの中で彼女の目が真剣に光る。

「ねえ……そろそろ二人目を作りましょう…」

一平の動きが一瞬止まった。

予期せぬ提案に戸惑いと興奮が入り混じる。

「……本気?」

「もちろんよ」

麗子は自信たっぷりに答えた。

彼女は一平の手を取り、自らの下腹部へと導いた。

「この中に……もう一人欲しいの」

一平の指が彼女の肌に触れる。

ラバーの生地越しに伝わる温もり。

「でも準備はできてる?柴崎さんには……」

「全部済んでるわ」

麗子はくすりと笑った。

「あなたの精子が欲しいの……今すぐに…」

一平の喉が鳴る。

彼女の大胆な提案と倒錯した状況に体が反応する。

「本当に?」

「だって」

麗子の声が甘く歪む。

「今日は特別な日でしょう?聖なる夜に……新しい命を授かるのよ」

一平が彼女の足を掴みさらに開く。

冷たいゴムと熱い肌のコントラストが彼の欲望を掻き立てる。

「ああ……」

麗子が息を呑んだ。

「あなたの熱が……感じられる」

「子供が欲しい?」

一平は確認するように聞いた。

「欲しくない理由がある?」

麗子は挑戦的に微笑んだ。

赤いラバーマスクの中で彼女の目が妖しく光る。

「それとも……怖いの?」

一平は息を飲んだ。

彼女の直接的な挑発に胸が高鳴る。

「怖いわけないだろ……でも突然すぎて……」

「突然?」

麗子は小さく笑った。

彼女の指が一平の胸板を這う。

「ずっと考えてたことなのに」

一平の手が彼女の腰を掴んだ。

冷たいラバーと熱い肌のコントラストが鮮明だ。

一平は決意を固める。

「分かった……麗子と一緒に」

彼は麗子のラバーマスクの額にキスした。

ラバーの生地越しに伝わる温もりが彼の決意を示している。

「本当に?」

麗子の声が震えた。

「嬉しい……」

一平は冗談めかして笑った。

「今度は女の子がいいな…」

麗子が突然笑い出した。

その振動がラバーを通して伝わる。

「欲張りすぎよ」

「本当のことだろ?」

一平は彼女の濡れた股間を激しく腰を打ちつける。

「もう準備万端じゃないか」

「あぁ……」

麗子が身悶えした。

「早く……」

彼女の赤いラバーコスチュームの一部が剥がれ落ち、露わになった肌が照明に照らされる。

そのコントラストが二人の欲望を加速させる。

「このまま」

一平は囁いた。

「麗子の中に……」

「お願い……」

麗子の声が切実さを帯びる。

「この気持ちを永遠にしたいの」

「ああぁっ……」

麗子の背中が弓なりに反った。

赤いラバーマスクの中から漏れる喘ぎ声が部屋に響く。

「麗子…ずっとこうされたいのを我慢してたんだろ?」

一平が彼女の腰を掴みながら訊ねた。

彼の動きに合わせて、湿ったラバーの衣装が擦れる音が卑猥に響く。

「ええ……ずっと……」

麗子はマスクの中で唾を飲み込んだ。

「車の中でも……さっきのカップルの前でも……」

彼女の爪先がシーツを掻く。

一平の息が荒くなる。

彼女の倒錯した興奮が彼をさらに昂らせる。

「一平に……」

麗子は腰を動かし一平のペニスが奥に突き刺さるように押し付けた。

麗子のラバーと肌の狭間から滲む汗が一平を誘う。

「こんな風にされたくて……」

一平の指が彼女の首筋を撫でた。

ラバーと皮膚の境界線が熱を持っている。

「ずっと妄想してた?」

「してた……」

麗子の声が震える。

「あなたのことばかり考えて……」

彼女の足が一平の腰に絡みつく。

「みんなが見てる前で……こんな風に……」

「変態だね…」

一平が囁く。

「そうだよ……」

麗子がうっとりと答えた。

「でもあなたもそうでしょ?」

彼女の赤いマスク越しの目が一平を見つめる。

「こんな姿の私に……興奮してる…」

「興奮するにきまってる…」

一平の腰の動きが加速する。部屋に湿った音と布擦れの音が響き渡る。

「ああ……そろそろイキそうだ」

一平の動きが荒くなり、部屋に湿った音が響く。

「麗子……今どんな顔してる?ラバーに覆われて見えないよ‥」

彼の指がラバーマスクの縁をなぞる。

内側から滲んだ汗で、プラスチックが僅かに曇っている。

「見なくていい…」

麗子は首を振った。

「変態な顔をしてる……だから見せたくない…」

一平の腰の動きが早まる。

彼の肌に触れるラバーの冷たさと彼女の内側の熱さが対照的だ。

「あぁっ……イクっ」

麗子の全身が硬直し、今日何度目かの絶頂に達した。

一平が彼女の耳元に唇を寄せる。

「なあ、マスク脱がしてもいい?」

ピストンのリズムが変わる。

深く挿入した状態で止めると、互いの体内で鼓動が共鳴する。

「……うん…」

麗子は震える声で答えた。

「そのかわり……中に出して」

一平の手が躊躇いがちにマスクを外す。



解放された麗子の顔は赤く上気し、涙と汗で濡れている。

普段より艶かしく見えるのは気のせいではない。

「こんな顔だったのか」

一平の声に感嘆が混じる。

「お願い!一緒に!子供ほしい!」

麗子の叫びが部屋に響き渡る。

素顔になった彼女の瞳から漏れる涙が一平の肩を濡らす。

「ああ……」一平は深く息を吐いた。

二人の動きが最高潮に達している。

「本当に……いいんだな?」

「いいの!」

麗子は必死に頷いた。

「今日は特別な日……だから……」

彼女の赤いラバーサンタコスチュームが二人の汗と体液で濡れ光る。

一平は彼女の腰を両手でしっかりと掴んだ。

「いくぞ……」

彼の声が震える。

「受け取ってくれ……」

二人の身体が同時に痙攣し、熱い波が押し寄せる。



麗子の内部が収縮し、一平の放出を受け止める。

「あぁ……あったかい……」

麗子は放心したように呟いた。

彼女の目尻から新たな涙が溢れる。

一平がゆっくりと身体を離すと、彼女の陰部から白濁した液体が滴り落ちる。

「赤ちゃん……できるといいね」

麗子は静かに微笑んだ。

一平は彼女の手を握った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


部屋の照明は少し落とされていた。

天井の灯りではなく、壁の柔らかな間接照明だけがついている。

その光がベッドのシーツに静かに広がっていた。

さっきまでの激しい気配は、もう落ち着いている。

窓の外からは遠くに車の音が聞こえる。

ベッドの上。

一平は枕にもたれるように横になっていた。

隣には麗子。

赤いラバーコートはベッドの端に無造作に置かれている。

ヒールも床に転がっていた。

そして麗子はまだ赤いラバーのボディスーツを身につけている。

けれど、ラバーマスクは外されている。

長い髪が少し乱れて、枕に広がっている。

頬はほんのり赤く、呼吸はまだ少しだけ早い。

天井を見ていた麗子は、ゆっくり息を吐いた。

「……」

しばらく何も言わない。

その沈黙の中で、さっきまでの感覚が少しずつ遠ざかっていく。

興奮。
衝動。
あの倒錯したような高揚。

それが、潮が引くように静かに消えていく。

そしてその代わりに、別の感情がゆっくり顔を出してくる。

麗子は突然、両手で顔を覆った。

「……っ」

小さな声。

一平が横を向く。

「どうした?」

麗子は手で顔を隠したまま、枕に顔を埋める。

「……やばい……」

声が小さい。

一平は少し笑う。

「何が?」

麗子は顔を隠したまま言う。

「恥ずかしい……」

さらに枕に顔を押し付ける。

「ものすごく恥ずかしい……」

一平は思わず笑いをこらえる。

さっきまでの麗子は、完全に別人だった。

あれほど堂々としていたのに。

麗子はもごもご言う。

「私……」

「何言ってた……?」

一平は肩をすくめる。

「いろいろ」

麗子は枕から顔を上げる。

「やっぱり!」

また顔を隠す。

「もう思い出したくない……」

耳まで赤くなっている。

「見られて嬉しいとか……」

「我慢できないとか……」

小さくうめく。

「私ほんと何言ってたの……」

一平はその様子を見て、静かに笑った。

そして手を伸ばす。

麗子の髪をそっと撫でる。

「でもさ」

優しい声。

「最高だったよ」

麗子は手の隙間から目だけ出す。

「……え?」

一平は微笑む。

「最高のクリスマスプレゼント」

そのまま続ける。

「ありがとう」

その言葉は、からかいではなく本当に穏やかだった。

麗子はしばらく一平を見つめていた。



それから小さく息を吐く。

「……もう」

苦笑する。

「一平ってそういうところずるい」

一平は首を傾げる。

「そう?」

麗子はゆっくり体を横に向けて一平の胸に額を軽く当てた。

さっきまでの倒錯しきったラバーサンタではない。

ただの、少し照れている妻の顔だった。

「でも……」

小さな声で言う。

「嬉しい」

一平は麗子の肩に腕を回す。

「今日いろいろあったな」

麗子はうなずく。

「うん」

子どもたちの笑顔。
赤いラバーサンタ。
駐車場のカップル。

そして、この部屋。

麗子は少し笑った。

「……ほんと」

「忘れられないクリスマスだね」

一平も笑う。

「間違いない」

静かな部屋の中で、二人はしばらく寄り添ったままだった。

部屋の時計は、もう夜のかなり遅い時間を指していた。

窓の外のネオンも少し静かになっている。

さっきまで満ちていた熱気はすっかり落ち着き、部屋には柔らかな余韻だけが漂っていた。

ベッドの端に腰掛けながら、一平が背伸びをする。

「さてと……」

軽く肩を回してから、隣にいる麗子を見る。

「そろそろ帰ろうか」

穏やかな声だった。

「明日は仕事だろ?」

麗子はぼんやりしていた。

ラバーのボディスーツの上からガウンを羽織り、ベッドにもたれている。

髪は少し乱れていて、まだ夢の余韻の中にいる顔だ。

しかし――その言葉を聞いた瞬間。

麗子の目がパチッと開いた。

「……あ」

一秒。

二秒。

そして突然、身体を起こす。

「そうだ!!」

一平がびっくりする。

「どうした?」

麗子は両手で額を押さえた。

「明日!」

「朝から!」

声が一段階大きくなる。

「看護婦長にオペの手伝い頼まれてた!!」

一平は思わず吹き出す。

「今思い出したのかよ」

麗子はベッドの上で頭を抱える。

「完全に忘れてた……」

「サンタとかラバーとか研究発表とかで頭いっぱいだった……」

一平は笑いながら立ち上がる。

「大丈夫か名医」

「寝不足でメス落とすなよ」

麗子はジロッと見る。

「ちゃんとやるわよ」

一平は靴を履きながら、わざとらしく言う。

「でもさ」

「オペ中に今日のこと思い出してニヤニヤするなよ」

麗子の動きが止まる。

一秒沈黙。

そして。

「……」

ニヤッ。

完全に悪い顔だった。

「そっちこそ」

ゆっくり立ち上がりながら言う。

「仕事中にまた事故して死にそうにならないでよ」

一平が振り向く。

「おい」

麗子は腕を組む。

「もうこれ以上の奇跡はあの病院で隠し通せないからね!」

一平は苦笑する。

「確かにな」

少し間。

そして二人とも、同時に笑った。

部屋の空気が一気に軽くなる。

一平はドアに手をかける。

「よし!帰るか!」

麗子もバッグを持ち、赤いコートを腕に抱える。

ドアの前で一平が言う。

「メリークリスマス」

麗子は小さく笑った。



「メリークリスマス」

そして二人は、並んでホテルの廊下へ歩き出す。

少し古いネオンの灯りの向こうへ。

騒がしくて、奇妙で、でも確かに幸せな、そんな二人の人生の続きを歩いていくように。 




~~「理想の夫婦」本編完結記念特別エピソード~~

ーー「理想の夫婦~もうひとつのエンディング」ーー完結ーー





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