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第14話 偶然
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翌朝、順子――
順子は寮の自室でスマホを手にしていた。
昨日控室で見た新聞記事がどうしても頭から離れず、ついネットで「悟(19) 東北 料理」と検索してみる。
画面には、昨日の記事と同じ写真が表示される。
真剣な目で料理を盛り付ける姿。
立派に成長した高校時代の同級生の面影も、確かに残っている。
順子は画面に触れるように手を添え、そっと写真を撫でる。
「悟……頑張ってるんだ」
胸の奥にじんわりと温かいものが広がる。
昨日は、フロアでの自分のラバー姿を思い出して、嫉妬のような感情で眠りについてしまった。
でも今は、素直に悟のことを思い出してしまう。
「……やっぱり、私は……悟のことが好き」
小さな声で呟き、順子は画面に映る料理の写真に目を細めた。
「いつか……この人の作った料理、食べてみたいな」
ラバー姿の自分と、昔の自分、そして今の思い。
二重生活の中で心が揺れる瞬間だったが、順子は素直な感情を抑えられなかった。
ハルカとしての夜の配信もある。だが今は、現実の「順子」として、悟を思う心に支配されていた。
ーーー夜。
順子は寮の自室で倶楽部から借りているラバースーツを再び身にまとい、ラバーマスクガールとしての配信を始めた。
黒光りのラバーに包まれ、目だけがマスクからのぞく洗練されたビジュアル。
画面にはコメントが次々と流れ、リスナーの熱量が一目でわかる。
「こんばんは、みんな。今日も新しいビジュアルのラバーマスクガールで登場です!」
順子は微かに緊張しながらも、画面越しに身体を揺らし、昨夜のフロア勤務の興奮を少しずつ思い出す。
コメント欄は殺到していた。
「妖艶すぎる!」
「プロフェッショナル!」
「目が離せない!」
その中に、プッシュ通知で知らせを受けて駆けつけた悟のコメントも混ざることになる。
スマホの小さな画面で、ラバーマスクガールの妖艶な動きに見とれ、思わず息をのむ悟。
「今日はね、ニュースで見たある人の話をしたいの」
ラバーマスクガールは少し顔を傾け、声をマスク越しに響かせた。
「高校のとき大好きだった同級生の記事を見つけちゃったの……」
コメント欄はさらに荒れた。
「それ誰!?」
「教えて!」
とリスナーが騒ぐ中、悟は目を見開いた。
記事の内容と、ラバーマスクガールの話のニュアンスが重なり、自分に当てはまる部分が多いことに戸惑う。
(まさか……冗談だよな……?)
心臓が高鳴り、手が震える。
思わず、コメント欄に半分冗談、半分面白半分で書き込む。
「食べに帰っておいでよ。J子」
画面の向こうでは、コメントが一斉に乱立する。
ラバーマスクガールはその中にひときわ目立つコメントを見つける。
──これは……誰のコメント?
胸が高鳴り、頬が熱くなる。
画面越しの視線に、順子の心は揺れ、ハルカとしての自覚と、ラバーマスクガールとしての高揚感が同時に襲った。
画面いっぱいにコメントが流れ続ける中、ラバーマスクガールは指を止め、ひとつのコメントに目を留めた。
「東京に行って看護師目指して頑張ってるJ子に、いつか食べてほしい。だから頑張れる!」
順子はその文字を読み、息が止まるような感覚に襲われた。
──J子……。
私の名前…順子…。
ハルカとして、ラバーマスクガールとして、スクリーンの向こうにいる見知らぬ誰かのつもりで配信していた自分。
でも、このコメントは、まるで直接自分に届いたように胸を打つ。
「……え……」
小さな声で呟き、目を大きく見開く。
画面の向こうのリスナーたちは喧騒のようにコメントを乱立させているが、順子には悟の言葉だけが鮮明に響いた。
胸の奥で、抑え込んでいた感情が一気に湧き上がる。
嬉しさと、切なさと、忘れられなかった想い。
ラバーマスクの下の顔は、知らず知らず微かに赤く染まった。
「……私……やっぱり、好き……」
心の中で、順子は小さく、しかし確かに呟いた。
画面越しの高揚感と、現実の思い。
二重生活の中で、初めて、現実の順子と、ラバーマスクガールの自分が重なる瞬間だった。
順子は寮の自室でスマホを手にしていた。
昨日控室で見た新聞記事がどうしても頭から離れず、ついネットで「悟(19) 東北 料理」と検索してみる。
画面には、昨日の記事と同じ写真が表示される。
真剣な目で料理を盛り付ける姿。
立派に成長した高校時代の同級生の面影も、確かに残っている。
順子は画面に触れるように手を添え、そっと写真を撫でる。
「悟……頑張ってるんだ」
胸の奥にじんわりと温かいものが広がる。
昨日は、フロアでの自分のラバー姿を思い出して、嫉妬のような感情で眠りについてしまった。
でも今は、素直に悟のことを思い出してしまう。
「……やっぱり、私は……悟のことが好き」
小さな声で呟き、順子は画面に映る料理の写真に目を細めた。
「いつか……この人の作った料理、食べてみたいな」
ラバー姿の自分と、昔の自分、そして今の思い。
二重生活の中で心が揺れる瞬間だったが、順子は素直な感情を抑えられなかった。
ハルカとしての夜の配信もある。だが今は、現実の「順子」として、悟を思う心に支配されていた。
ーーー夜。
順子は寮の自室で倶楽部から借りているラバースーツを再び身にまとい、ラバーマスクガールとしての配信を始めた。
黒光りのラバーに包まれ、目だけがマスクからのぞく洗練されたビジュアル。
画面にはコメントが次々と流れ、リスナーの熱量が一目でわかる。
「こんばんは、みんな。今日も新しいビジュアルのラバーマスクガールで登場です!」
順子は微かに緊張しながらも、画面越しに身体を揺らし、昨夜のフロア勤務の興奮を少しずつ思い出す。
コメント欄は殺到していた。
「妖艶すぎる!」
「プロフェッショナル!」
「目が離せない!」
その中に、プッシュ通知で知らせを受けて駆けつけた悟のコメントも混ざることになる。
スマホの小さな画面で、ラバーマスクガールの妖艶な動きに見とれ、思わず息をのむ悟。
「今日はね、ニュースで見たある人の話をしたいの」
ラバーマスクガールは少し顔を傾け、声をマスク越しに響かせた。
「高校のとき大好きだった同級生の記事を見つけちゃったの……」
コメント欄はさらに荒れた。
「それ誰!?」
「教えて!」
とリスナーが騒ぐ中、悟は目を見開いた。
記事の内容と、ラバーマスクガールの話のニュアンスが重なり、自分に当てはまる部分が多いことに戸惑う。
(まさか……冗談だよな……?)
心臓が高鳴り、手が震える。
思わず、コメント欄に半分冗談、半分面白半分で書き込む。
「食べに帰っておいでよ。J子」
画面の向こうでは、コメントが一斉に乱立する。
ラバーマスクガールはその中にひときわ目立つコメントを見つける。
──これは……誰のコメント?
胸が高鳴り、頬が熱くなる。
画面越しの視線に、順子の心は揺れ、ハルカとしての自覚と、ラバーマスクガールとしての高揚感が同時に襲った。
画面いっぱいにコメントが流れ続ける中、ラバーマスクガールは指を止め、ひとつのコメントに目を留めた。
「東京に行って看護師目指して頑張ってるJ子に、いつか食べてほしい。だから頑張れる!」
順子はその文字を読み、息が止まるような感覚に襲われた。
──J子……。
私の名前…順子…。
ハルカとして、ラバーマスクガールとして、スクリーンの向こうにいる見知らぬ誰かのつもりで配信していた自分。
でも、このコメントは、まるで直接自分に届いたように胸を打つ。
「……え……」
小さな声で呟き、目を大きく見開く。
画面の向こうのリスナーたちは喧騒のようにコメントを乱立させているが、順子には悟の言葉だけが鮮明に響いた。
胸の奥で、抑え込んでいた感情が一気に湧き上がる。
嬉しさと、切なさと、忘れられなかった想い。
ラバーマスクの下の顔は、知らず知らず微かに赤く染まった。
「……私……やっぱり、好き……」
心の中で、順子は小さく、しかし確かに呟いた。
画面越しの高揚感と、現実の思い。
二重生活の中で、初めて、現実の順子と、ラバーマスクガールの自分が重なる瞬間だった。
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