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第46話 二人の約束
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夜の23時を少し回ったころ。
倶楽部での仕事を終えた順子は、ようやく寮の自室に戻ってきた。
玄関の鍵を閉めると、ふうっと長い息をつく。
「今日も一日、お疲れさま、私……」
狭いワンルームの中央には、いつものキャリーケース。
順子はそれをベッドの上に置き、手慣れた仕草で開ける。
中には、黒く輝くラバーの衣装たちが整然と並んでいた。
手袋を外しながら、順子は優しくスーツを取り出す。
まだほんのりと温もりを残した素材の感触が指に伝わる。
倶楽部で過ごした時間の余韻――笑い声、照明、そして仲間の顔――が頭をよぎる。
「アキさん……じゃなかった、麗子さんも、もう寝てるかな……」
と呟いたその瞬間、コン、コン。
部屋のドアを叩く軽いノック音が響いた。
順子はピクリと反応する。
(えっ……。やばい、ラバー広げたまんまだ……!! )
慌てて衣装をベッドの端に寄せ、覗き穴を覗く。
そこに立っていたのは、まさかの――麗子。
白いポロシャツ姿、髪をまとめ、微笑んでいる。
(れ、麗子さん!?)
嬉しさが一気にこみ上げ、順子は反射的にドアを開けた。
「麗子さん!」
声のトーンが思わず上がる。
麗子は、少し笑いながら頷いた。
「おかえり、順子。倶楽部からそろそろ帰る頃だと思って、寄ってみたの。」
順子は、頬を紅潮させながら笑顔を見せた。
「嬉しい……! どうぞ、入ってください!」
麗子は部屋の中を見る。
隠しきれなかったラバーの光沢が、ベッドの端に少しだけ覗いている。
しかし、何も言わずに部屋へ上がり込むと、ふっと口角を上げた。
「……ちゃんとお手入れしてるのね。」
その言葉に、順子の肩の力が抜ける。
「あ……バレちゃいました?」
麗子は軽く笑いながら言った。
「あなたがあの“ハルカ”の姿になるラバーを真面目に磨いてるの、目に浮かぶもの。」
順子も釣られて笑う。
「だって大事なんです。倶楽部の制服でもあるし、もう、私の一部みたいで。」
麗子は頷き、テーブルに腰を下ろす。
「いいこと。そういう子だから、私は安心して引き継げたの。」
順子は胸がいっぱいになって、小さく「ありがとうございます」と呟いた。
その声に、麗子は優しく笑って続けた。
「お礼なんていらないわよ。――それより、せっかくだから見せて。どんな手入れしてるのか。」
「え? あ、はい!」
順子は慌ててベッドの上のラバーセットを整える。
黒光りしたスーツ、手袋、ブーツ、そしてマスク。
どれも丁寧に扱われているが、まだ磨ききれない部分も残っていた。
麗子は袖をまくり、順子の隣に腰を下ろした。
「ふふっ、やっぱりね。頑張ってるのは分かるけど、少し力を入れすぎてるのよ。」
「力……ですか?」
「そう。ラバーは“磨く”より“撫でる”の。まるで恋人の肌を触るみたいに。強くやると傷がつくし、空気が入って白く濁るのよ。」
そう言いながら、麗子はクロスを手に取り、順子の目の前で実演してみせた。
指先で軽く布を滑らせると、黒い表面が息を吹き返すように艶を増していく。
「ほら、見て。光が均一でしょ? これが“生きてるラバー”。」
「わぁ……全然違う……!」
順子は息を呑んだ。
麗子は少し得意げに微笑む。
「ふふ、慣れたら簡単よ。でも、この“息づかい”は感覚で覚えるしかないわね。」
順子はその言葉にうなずき、隣で同じようにクロスを動かす。
「こう……ですか?」
「うん、いい感じ。もう少しゆっくり。焦らないで。」
二人の指が同じスーツの上をすべる。
静かな部屋の中に、ラバーを撫でる微かな音が続いた。
麗子は、ふっと優しく視線を向ける。
「ねえ順子。ラバーってね、着るときも脱ぐときも、その人の“呼吸”を映すのよ。だから焦って着れば苦しいし、丁寧に触れれば落ち着く。あなたがあの姿で強く、美しく見えるのは、たぶんその呼吸が整ってるから。」
順子は、手を止めて麗子を見る。
マスク越しのあの声と違い、今の麗子の声は驚くほど柔らかかった。
「……アキさん、じゃなくて……麗子さん、優しいですね。」
「誰かがそうしてくれたのよ、昔。だから今は、私があなたに渡す番。」
順子はまた胸が熱くなる。
クロスを持つ手が少し震え、思わず笑ってしまった。
「麗子さんにお手入れ習うなんて、なんだか不思議です。」
「ふふ、今だけ特別。でも明日からは、あなたが“教える側”になるんだからね。」
「えっ、私が……?」
「そうよ。ハルカが次の誰かにバトンを渡すとき、きっと同じことをしてあげるの。」
順子は、クロスを持つ手を止めて、ちらりと隣を見る。
麗子は黙々とスーツの肩のあたりを磨いていた。
照明の光が、ラバーの黒い面に映り込み、まるで水面のように艶めく。
その動きがあまりに自然で、まるで彼女の指先がラバーと会話しているようだった。
「……あの、麗子さん。」
順子は、少し迷いながら声をかける。
「ん?」
麗子は手を止めずに、優しい声で応える。
「また……ラバー、着たくならないんですか?」
その言葉に、麗子は手を止めた。
光の反射の中で、彼女の横顔が少しだけ遠くを見つめるように柔らかくゆがむ。
「そうねぇ……」
磨いていたクロスを膝に置き、ふっと小さく笑った。
「今はね、あんまりそういう気持ちはないかな。毎日のように着てたから。しばらくは、お腹いっぱいって感じ。」
「お腹いっぱい……」
順子は小さく笑いながら、その言葉を繰り返す。
「でもね」
麗子はラバーの袖口を指で撫でながら、ぽつりと続けた。
「きっと、そのうち着たくなると思うの。あれはね、ただの衣装じゃないから。一度でも本気で自分と向き合った人は、またあの感覚を恋しく思うのよ。」
「どこで……着るんですか?」
順子は、真剣な顔で聞いた。
「倶楽部じゃなくて……たとえば、ひとりのときとか?」
その質問に、麗子は思わず「ぷっ」と吹き出した。
「一人で部屋で? そんなこと、考えたこともなかったわ。」
順子もつられて笑う。
「だって、麗子さんのラバー姿、すごく綺麗だったから……また見たいなって、ちょっと思っちゃいました。」
麗子は頬を少し染め、クロスを持ち直して照れ隠しのようにラバーの表面を撫でる。
「どうしようかなぁ……」
彼女は微笑みながら、いたずらっぽく言った。
「もし着るとしたら……その時は、順子にも見せてあげようか?」
「えっ!? 本当に?」
順子の目がぱっと輝いた。
その無邪気な反応に、麗子は思わず吹き出す。
「なに、その顔。ほんとに期待してるじゃないの。」
「だって……!」
順子は椅子の上で身を乗り出し、
「就職前の春休みに、記念撮影とセットで――ミニ旅行、行きませんか!」
「……は?」
麗子は思わず目を瞬かせ、次の瞬間――ぷっと噴き出した。
「なにそれ!?(笑)」
「麗子さんの大学の卒業旅行ですよ!」
順子は嬉しそうに続ける。
「せっかくなんだから、アキさん――じゃなくて麗子さんの“ラバー姿の卒業記念”っていうのはどうです? 私が演出します!」
麗子は椅子の背もたれに体を預けて、大笑いした。
「ちょっと待って、それ、どこで撮影するつもり?」
順子は真顔で、でもどこか楽しそうに言う。
「誰もいない森の中とか?」
「ギャハハハハ!!!」
麗子は声をあげて笑い、机に手をついて身を折った。
「ちょ、ちょっと、やめて……お腹痛い……! 森って! まさか木陰でポーズとかとる気!?」
「ちゃんと構図も考えます!」
順子は目を輝かせたまま、ノートを引き寄せてメモを取るふりをする。
「……はぁ~、あんたほんと面白い子ね。」
麗子は笑いながら髪をかき上げ、
「でも、そういうの……嫌いじゃないかも。」と目を細めた。
「えっ、じゃあ……!」
順子が勢いよく身を乗り出すと、麗子は人差し指を立てて制した。
「ただし――どうせなら、順子も着なさい。」
「え、えぇぇぇっ!?」
順子の声が裏返る。
「私ひとりで着てたら、なんか恥ずかしいじゃない。」
麗子は意地悪く笑いながら、順子の顔を覗き込む。
「え、でも……私が着たら、並んだとき変じゃないですか?」
「いいのよ、二人でセット。後輩と先輩の“卒業記念ラバー旅”。」
順子は顔を真っ赤にしながら考え込み――そして、急に何かを思いついたように手を打った。
「……あっ! ぴったりの撮影係がいる!」
麗子は笑いながら首を傾げる。
「へぇ、誰よそんな物好き。」
二人は顔を見合わせ――同時に声をそろえた。
「悟!!!」
部屋に二人の声が響き、次の瞬間、二人はまた顔を見合わせて、けらけらと笑い出した。
「もう……あの子、引くどころか喜ぶわよね絶対。」
「ですよね!」
「ま、撮影係にはもってこいか。」
笑いながら、麗子は丁寧にラバーの袖を畳み直した。
光沢が灯りを受けて、黒曜石のように艶やかに輝いていた。
――春の旅と撮影の約束を包み込むように。
倶楽部での仕事を終えた順子は、ようやく寮の自室に戻ってきた。
玄関の鍵を閉めると、ふうっと長い息をつく。
「今日も一日、お疲れさま、私……」
狭いワンルームの中央には、いつものキャリーケース。
順子はそれをベッドの上に置き、手慣れた仕草で開ける。
中には、黒く輝くラバーの衣装たちが整然と並んでいた。
手袋を外しながら、順子は優しくスーツを取り出す。
まだほんのりと温もりを残した素材の感触が指に伝わる。
倶楽部で過ごした時間の余韻――笑い声、照明、そして仲間の顔――が頭をよぎる。
「アキさん……じゃなかった、麗子さんも、もう寝てるかな……」
と呟いたその瞬間、コン、コン。
部屋のドアを叩く軽いノック音が響いた。
順子はピクリと反応する。
(えっ……。やばい、ラバー広げたまんまだ……!! )
慌てて衣装をベッドの端に寄せ、覗き穴を覗く。
そこに立っていたのは、まさかの――麗子。
白いポロシャツ姿、髪をまとめ、微笑んでいる。
(れ、麗子さん!?)
嬉しさが一気にこみ上げ、順子は反射的にドアを開けた。
「麗子さん!」
声のトーンが思わず上がる。
麗子は、少し笑いながら頷いた。
「おかえり、順子。倶楽部からそろそろ帰る頃だと思って、寄ってみたの。」
順子は、頬を紅潮させながら笑顔を見せた。
「嬉しい……! どうぞ、入ってください!」
麗子は部屋の中を見る。
隠しきれなかったラバーの光沢が、ベッドの端に少しだけ覗いている。
しかし、何も言わずに部屋へ上がり込むと、ふっと口角を上げた。
「……ちゃんとお手入れしてるのね。」
その言葉に、順子の肩の力が抜ける。
「あ……バレちゃいました?」
麗子は軽く笑いながら言った。
「あなたがあの“ハルカ”の姿になるラバーを真面目に磨いてるの、目に浮かぶもの。」
順子も釣られて笑う。
「だって大事なんです。倶楽部の制服でもあるし、もう、私の一部みたいで。」
麗子は頷き、テーブルに腰を下ろす。
「いいこと。そういう子だから、私は安心して引き継げたの。」
順子は胸がいっぱいになって、小さく「ありがとうございます」と呟いた。
その声に、麗子は優しく笑って続けた。
「お礼なんていらないわよ。――それより、せっかくだから見せて。どんな手入れしてるのか。」
「え? あ、はい!」
順子は慌ててベッドの上のラバーセットを整える。
黒光りしたスーツ、手袋、ブーツ、そしてマスク。
どれも丁寧に扱われているが、まだ磨ききれない部分も残っていた。
麗子は袖をまくり、順子の隣に腰を下ろした。
「ふふっ、やっぱりね。頑張ってるのは分かるけど、少し力を入れすぎてるのよ。」
「力……ですか?」
「そう。ラバーは“磨く”より“撫でる”の。まるで恋人の肌を触るみたいに。強くやると傷がつくし、空気が入って白く濁るのよ。」
そう言いながら、麗子はクロスを手に取り、順子の目の前で実演してみせた。
指先で軽く布を滑らせると、黒い表面が息を吹き返すように艶を増していく。
「ほら、見て。光が均一でしょ? これが“生きてるラバー”。」
「わぁ……全然違う……!」
順子は息を呑んだ。
麗子は少し得意げに微笑む。
「ふふ、慣れたら簡単よ。でも、この“息づかい”は感覚で覚えるしかないわね。」
順子はその言葉にうなずき、隣で同じようにクロスを動かす。
「こう……ですか?」
「うん、いい感じ。もう少しゆっくり。焦らないで。」
二人の指が同じスーツの上をすべる。
静かな部屋の中に、ラバーを撫でる微かな音が続いた。
麗子は、ふっと優しく視線を向ける。
「ねえ順子。ラバーってね、着るときも脱ぐときも、その人の“呼吸”を映すのよ。だから焦って着れば苦しいし、丁寧に触れれば落ち着く。あなたがあの姿で強く、美しく見えるのは、たぶんその呼吸が整ってるから。」
順子は、手を止めて麗子を見る。
マスク越しのあの声と違い、今の麗子の声は驚くほど柔らかかった。
「……アキさん、じゃなくて……麗子さん、優しいですね。」
「誰かがそうしてくれたのよ、昔。だから今は、私があなたに渡す番。」
順子はまた胸が熱くなる。
クロスを持つ手が少し震え、思わず笑ってしまった。
「麗子さんにお手入れ習うなんて、なんだか不思議です。」
「ふふ、今だけ特別。でも明日からは、あなたが“教える側”になるんだからね。」
「えっ、私が……?」
「そうよ。ハルカが次の誰かにバトンを渡すとき、きっと同じことをしてあげるの。」
順子は、クロスを持つ手を止めて、ちらりと隣を見る。
麗子は黙々とスーツの肩のあたりを磨いていた。
照明の光が、ラバーの黒い面に映り込み、まるで水面のように艶めく。
その動きがあまりに自然で、まるで彼女の指先がラバーと会話しているようだった。
「……あの、麗子さん。」
順子は、少し迷いながら声をかける。
「ん?」
麗子は手を止めずに、優しい声で応える。
「また……ラバー、着たくならないんですか?」
その言葉に、麗子は手を止めた。
光の反射の中で、彼女の横顔が少しだけ遠くを見つめるように柔らかくゆがむ。
「そうねぇ……」
磨いていたクロスを膝に置き、ふっと小さく笑った。
「今はね、あんまりそういう気持ちはないかな。毎日のように着てたから。しばらくは、お腹いっぱいって感じ。」
「お腹いっぱい……」
順子は小さく笑いながら、その言葉を繰り返す。
「でもね」
麗子はラバーの袖口を指で撫でながら、ぽつりと続けた。
「きっと、そのうち着たくなると思うの。あれはね、ただの衣装じゃないから。一度でも本気で自分と向き合った人は、またあの感覚を恋しく思うのよ。」
「どこで……着るんですか?」
順子は、真剣な顔で聞いた。
「倶楽部じゃなくて……たとえば、ひとりのときとか?」
その質問に、麗子は思わず「ぷっ」と吹き出した。
「一人で部屋で? そんなこと、考えたこともなかったわ。」
順子もつられて笑う。
「だって、麗子さんのラバー姿、すごく綺麗だったから……また見たいなって、ちょっと思っちゃいました。」
麗子は頬を少し染め、クロスを持ち直して照れ隠しのようにラバーの表面を撫でる。
「どうしようかなぁ……」
彼女は微笑みながら、いたずらっぽく言った。
「もし着るとしたら……その時は、順子にも見せてあげようか?」
「えっ!? 本当に?」
順子の目がぱっと輝いた。
その無邪気な反応に、麗子は思わず吹き出す。
「なに、その顔。ほんとに期待してるじゃないの。」
「だって……!」
順子は椅子の上で身を乗り出し、
「就職前の春休みに、記念撮影とセットで――ミニ旅行、行きませんか!」
「……は?」
麗子は思わず目を瞬かせ、次の瞬間――ぷっと噴き出した。
「なにそれ!?(笑)」
「麗子さんの大学の卒業旅行ですよ!」
順子は嬉しそうに続ける。
「せっかくなんだから、アキさん――じゃなくて麗子さんの“ラバー姿の卒業記念”っていうのはどうです? 私が演出します!」
麗子は椅子の背もたれに体を預けて、大笑いした。
「ちょっと待って、それ、どこで撮影するつもり?」
順子は真顔で、でもどこか楽しそうに言う。
「誰もいない森の中とか?」
「ギャハハハハ!!!」
麗子は声をあげて笑い、机に手をついて身を折った。
「ちょ、ちょっと、やめて……お腹痛い……! 森って! まさか木陰でポーズとかとる気!?」
「ちゃんと構図も考えます!」
順子は目を輝かせたまま、ノートを引き寄せてメモを取るふりをする。
「……はぁ~、あんたほんと面白い子ね。」
麗子は笑いながら髪をかき上げ、
「でも、そういうの……嫌いじゃないかも。」と目を細めた。
「えっ、じゃあ……!」
順子が勢いよく身を乗り出すと、麗子は人差し指を立てて制した。
「ただし――どうせなら、順子も着なさい。」
「え、えぇぇぇっ!?」
順子の声が裏返る。
「私ひとりで着てたら、なんか恥ずかしいじゃない。」
麗子は意地悪く笑いながら、順子の顔を覗き込む。
「え、でも……私が着たら、並んだとき変じゃないですか?」
「いいのよ、二人でセット。後輩と先輩の“卒業記念ラバー旅”。」
順子は顔を真っ赤にしながら考え込み――そして、急に何かを思いついたように手を打った。
「……あっ! ぴったりの撮影係がいる!」
麗子は笑いながら首を傾げる。
「へぇ、誰よそんな物好き。」
二人は顔を見合わせ――同時に声をそろえた。
「悟!!!」
部屋に二人の声が響き、次の瞬間、二人はまた顔を見合わせて、けらけらと笑い出した。
「もう……あの子、引くどころか喜ぶわよね絶対。」
「ですよね!」
「ま、撮影係にはもってこいか。」
笑いながら、麗子は丁寧にラバーの袖を畳み直した。
光沢が灯りを受けて、黒曜石のように艶やかに輝いていた。
――春の旅と撮影の約束を包み込むように。
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