【R18】【挿絵多い】ラバーマスクガール

まへまへ

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第55話 二人での夕食

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夕暮れの街が、少しずつ夜の色を帯びていく。

レンタカーを返した帰り道、二人は肩を並べて歩いていた。

「今日、すごく頑張ったよな」

悟がハンドルを手放したあとの解放感をそのままに、ふっと笑った。

「うん。楽しかったけど……お腹すいちゃった」

順子はお腹をさすりながら、ちょっと拗ねたような顔をする。

悟は思わず笑いながら言った。

「じゃあさ、夕飯は順子の好きなものにしよう。日本料理はナシで!」

「えっ、日本料理ナシ?」

順子が少し首を傾げて笑う。

「うん。俺、いつも仕事で食べてるからさ。今日は“順子が食べたいもの”にしようよ」

順子は一瞬だけ考えるふりをして、指先を唇に当てる。

「うーん……じゃあ――回転寿司!」

悟は吹き出した。

「回転寿司⁉一応日本料理じゃん!まいっか!行っちゃいますか!」

「ほんと? やった!」

順子の目が一気に輝く。

二人はそのまま笑いながら歩き出し、街の明かりの中にある回転寿司チェーン店へ。

暖簾をくぐると、湯気と酢飯の香りがふわっと迎えてくれた。

「いらっしゃいませー!」

店員の明るい声。

カウンター席に並んで座ると、順子はタッチパネルを前に目を輝かせた。

「わぁ、いろんなネタある! 期間限定メニューまで!」

悟はそんな順子の横顔を、少し離れたところから眺めていた。

彼女がメニューをめくるたび、指先が楽しそうに動く。

まるで子どものように無邪気で、心からの笑顔。

「ねぇ悟、これ見て。炙りサーモンチーズ! えっ、すごい……ローストビーフ寿司なんてある!」

「なんでもありだな、もはや寿司の概念が自由すぎる」

「でもおいしそう! ね、頼んでみよ?」

「いいよ。順子の好きなの、どんどん頼んで」

順子は目を輝かせて次々に注文ボタンを押す。

そのたびに、悟は満足そうに頷きながら微笑んでいた。

――料理の腕も、職人としての誇りも関係ない。

今夜はただ、好きな人が「美味しい!」と笑う姿を見ていたい。

湯呑みに入ったあたたかいお茶の湯気が、二人の間の空気をやわらかく包み込んでいた。

湯気の立つ湯呑みを手にしながら、二人の前のレーンには、色とりどりの皿がゆっくりと流れていく。

「見て、悟。ほら、これ見て!」

順子が目を輝かせて取ったのは、マヨネーズたっぷりの炙りサーモン。

「炙りサーモンチーズ! 私これ大好き!」

「おぉ……完全に“庶民の幸福の塊”だな。」

悟が笑いながらも、興味深そうに一口食べる順子の動作を見つめている。

「どう? 美味しい?」

「うんっ! お店で出すのとは違うけど、これはこれで最高!」

順子の頬が、嬉しそうにふわっとほころぶ。

悟はその表情に、自然と目を細めた。

「よかった。順子が笑ってると、なんか安心するな。」

順子は少し照れながら、お茶をすする。

「悟って、ほんと料理のときと雰囲気違うよね。今、すごく穏やか。」

「仕事中はね、真剣になっちゃうんだよ。包丁握ると、余計なこと考えられなくなる。」

「へぇ……なんかカッコいい。」

順子は箸を止め、悟を見上げた。

その真っ直ぐな瞳に、悟は思わず目をそらし、苦笑する。

「カッコいいとか言われ慣れてないんだけど。」

「じゃあ、慣れてよ。」

順子がイタズラっぽく言うと、悟は吹き出した。

「じゃあ順子も。『かわいい』って言われ慣れておけ。」

「なっ……!」

順子の顔が一気に赤くなる。

「それ、今のタイミングで言う?」

「言いたくなったから言っただけ。」

悟は悪戯っぽく笑って、回ってきたエビ天ロールを取る。

二人の笑い声が重なり、テーブルの上の湯気がゆらゆらと溶けていく。

――恋人として自然に過ごす夜。

肩の力が抜けて、どちらも素のままで笑える時間。

「ねぇ悟。今日はほんと楽しかった。朝からずっと、夢みたいな一日だった。」

「俺も。最高の思い出になったよ。」

そう言って、悟は湯呑みを軽く掲げる。

「じゃあ……今日一日に、乾杯。」

順子も微笑んで、湯呑みをコツンと合わせた。

二人の間に、あたたかい湯気と、穏やかな幸せの空気が広がっていた。
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