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第56話 将来の夢
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ホテルの部屋には、柔らかな照明が灯っていた。
カーテンの向こうには、夜の街の明かりがちらちらと瞬いている。
二人はお互い見つめるように部屋にいた。
悟が先に口を開いた。
「順子、来月から三年生だね。」
「うん、早いよね。」
順子は、視線を窓の方へ向ける。
「入学したころは、三年生なんて遠い先の話だと思ってたのに。もう半分終わっちゃった。」
悟は小さく頷いた。
「時間が経つの、ほんと早いな。」
そして、少しだけ間を置いて、
「……卒業したら、どうするんだ?」
順子の指が止まる。
持っていた湯呑みを、ゆっくりテーブルの上に置き椅子に座る。
その横顔が、少しだけ緊張に揺れていた。
「……どうするんだろうね。」
ぽつりと呟いたあと、順子は小さく笑った。
「ううん。ちゃんと決めてるよ。看護師になる。――それが、ずっとの夢だったから。」
悟は静かに聞いている。
順子は、視線を落としたまま、ゆっくりと言葉を続けた。
「東京の大学を選んだのはね……自分を変えたかったから。地元を出て、誰も私のことを知らない場所で、新しい私になりたかった。」
悟は黙ってうなずき、順子の言葉を受け止めるように目を細めた。
「もし、東京で変われた自分がいたら、ここで人間関係を作って、生きていこうって思ってた。」
順子の声は、少し震えていた。
「でも……」
静かな沈黙が流れる。
部屋の空調の音だけが、小さく耳に残る。
「でも、今は……違うんだ。」
順子が、少し身を乗り出す。
順子は、込み上げる気持ちを振り絞り、悟に伝える。
「ここには……悟がいないから。」
「――え?」
順子は小さく息を吐き、悟の目をまっすぐに見つめた。
その瞳の奥には、揺るぎのない決意と、ほんの少しの寂しさが混じっていた。
「看護師になる夢は、変わらないよ。」
順子はゆっくりと、言葉を選ぶように続けた。
「でもね、東京じゃなくて……地元に帰って看護師になる。その方が、私らしい気がするんだ。」
悟は黙って頷いた。
順子の声は、柔らかく、それでいて芯のある響きを持っていた。
「……ずっと、悟の近くにいたい。そう思うようになったの。」
少し頬を赤らめながら、順子は微笑んだ。
「あと2年だけ、ちょっと寂しいけど――待っててね。必ず戻るから。」
その微笑みは、泣き笑いのように優しかった。
悟は、胸の奥が熱くなるのを感じながら、何も言わずに順子を抱きしめた。
柔らかな髪が肩に触れ、彼女の小さな体が、自分の腕の中で確かに震えていた。
「……うん。待ってる。」
悟の声は低く、穏やかに震えていた。
「どんなに時間がかかっても、ずっと。」
順子は静かに目を閉じ、悟の胸に顔をうずめた。
そして、二人の距離がゆっくりと近づく。
唇が触れ合う瞬間――
窓の外では、夜の光が滲み、遠くの街の灯りが、まるで二人を祝福するように瞬いていた。
長い時間を経て、ようやくたどり着いた二人の想い。
それは、静かで、温かく、確かな約束。
この夜、順子と悟の心は、もう離れることのない絆で結ばれていた。
――完
カーテンの向こうには、夜の街の明かりがちらちらと瞬いている。
二人はお互い見つめるように部屋にいた。
悟が先に口を開いた。
「順子、来月から三年生だね。」
「うん、早いよね。」
順子は、視線を窓の方へ向ける。
「入学したころは、三年生なんて遠い先の話だと思ってたのに。もう半分終わっちゃった。」
悟は小さく頷いた。
「時間が経つの、ほんと早いな。」
そして、少しだけ間を置いて、
「……卒業したら、どうするんだ?」
順子の指が止まる。
持っていた湯呑みを、ゆっくりテーブルの上に置き椅子に座る。
その横顔が、少しだけ緊張に揺れていた。
「……どうするんだろうね。」
ぽつりと呟いたあと、順子は小さく笑った。
「ううん。ちゃんと決めてるよ。看護師になる。――それが、ずっとの夢だったから。」
悟は静かに聞いている。
順子は、視線を落としたまま、ゆっくりと言葉を続けた。
「東京の大学を選んだのはね……自分を変えたかったから。地元を出て、誰も私のことを知らない場所で、新しい私になりたかった。」
悟は黙ってうなずき、順子の言葉を受け止めるように目を細めた。
「もし、東京で変われた自分がいたら、ここで人間関係を作って、生きていこうって思ってた。」
順子の声は、少し震えていた。
「でも……」
静かな沈黙が流れる。
部屋の空調の音だけが、小さく耳に残る。
「でも、今は……違うんだ。」
順子が、少し身を乗り出す。
順子は、込み上げる気持ちを振り絞り、悟に伝える。
「ここには……悟がいないから。」
「――え?」
順子は小さく息を吐き、悟の目をまっすぐに見つめた。
その瞳の奥には、揺るぎのない決意と、ほんの少しの寂しさが混じっていた。
「看護師になる夢は、変わらないよ。」
順子はゆっくりと、言葉を選ぶように続けた。
「でもね、東京じゃなくて……地元に帰って看護師になる。その方が、私らしい気がするんだ。」
悟は黙って頷いた。
順子の声は、柔らかく、それでいて芯のある響きを持っていた。
「……ずっと、悟の近くにいたい。そう思うようになったの。」
少し頬を赤らめながら、順子は微笑んだ。
「あと2年だけ、ちょっと寂しいけど――待っててね。必ず戻るから。」
その微笑みは、泣き笑いのように優しかった。
悟は、胸の奥が熱くなるのを感じながら、何も言わずに順子を抱きしめた。
柔らかな髪が肩に触れ、彼女の小さな体が、自分の腕の中で確かに震えていた。
「……うん。待ってる。」
悟の声は低く、穏やかに震えていた。
「どんなに時間がかかっても、ずっと。」
順子は静かに目を閉じ、悟の胸に顔をうずめた。
そして、二人の距離がゆっくりと近づく。
唇が触れ合う瞬間――
窓の外では、夜の光が滲み、遠くの街の灯りが、まるで二人を祝福するように瞬いていた。
長い時間を経て、ようやくたどり着いた二人の想い。
それは、静かで、温かく、確かな約束。
この夜、順子と悟の心は、もう離れることのない絆で結ばれていた。
――完
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