【R18】【挿絵多い】ラバーマスクガール

まへまへ

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第56話 将来の夢

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ホテルの部屋には、柔らかな照明が灯っていた。

カーテンの向こうには、夜の街の明かりがちらちらと瞬いている。

二人はお互い見つめるように部屋にいた。

悟が先に口を開いた。



「順子、来月から三年生だね。」

「うん、早いよね。」

順子は、視線を窓の方へ向ける。

「入学したころは、三年生なんて遠い先の話だと思ってたのに。もう半分終わっちゃった。」

悟は小さく頷いた。

「時間が経つの、ほんと早いな。」

そして、少しだけ間を置いて、

「……卒業したら、どうするんだ?」

順子の指が止まる。

持っていた湯呑みを、ゆっくりテーブルの上に置き椅子に座る。

その横顔が、少しだけ緊張に揺れていた。

「……どうするんだろうね。」

ぽつりと呟いたあと、順子は小さく笑った。

「ううん。ちゃんと決めてるよ。看護師になる。――それが、ずっとの夢だったから。」

悟は静かに聞いている。

順子は、視線を落としたまま、ゆっくりと言葉を続けた。

「東京の大学を選んだのはね……自分を変えたかったから。地元を出て、誰も私のことを知らない場所で、新しい私になりたかった。」

悟は黙ってうなずき、順子の言葉を受け止めるように目を細めた。

「もし、東京で変われた自分がいたら、ここで人間関係を作って、生きていこうって思ってた。」

順子の声は、少し震えていた。

「でも……」

静かな沈黙が流れる。

部屋の空調の音だけが、小さく耳に残る。

「でも、今は……違うんだ。」

順子が、少し身を乗り出す。



順子は、込み上げる気持ちを振り絞り、悟に伝える。

「ここには……悟がいないから。」

「――え?」

順子は小さく息を吐き、悟の目をまっすぐに見つめた。

その瞳の奥には、揺るぎのない決意と、ほんの少しの寂しさが混じっていた。

「看護師になる夢は、変わらないよ。」

順子はゆっくりと、言葉を選ぶように続けた。

「でもね、東京じゃなくて……地元に帰って看護師になる。その方が、私らしい気がするんだ。」

悟は黙って頷いた。

順子の声は、柔らかく、それでいて芯のある響きを持っていた。

「……ずっと、悟の近くにいたい。そう思うようになったの。」

少し頬を赤らめながら、順子は微笑んだ。

「あと2年だけ、ちょっと寂しいけど――待っててね。必ず戻るから。」

その微笑みは、泣き笑いのように優しかった。

悟は、胸の奥が熱くなるのを感じながら、何も言わずに順子を抱きしめた。

柔らかな髪が肩に触れ、彼女の小さな体が、自分の腕の中で確かに震えていた。






「……うん。待ってる。」



悟の声は低く、穏やかに震えていた。



「どんなに時間がかかっても、ずっと。」



順子は静かに目を閉じ、悟の胸に顔をうずめた。

そして、二人の距離がゆっくりと近づく。

唇が触れ合う瞬間――
窓の外では、夜の光が滲み、遠くの街の灯りが、まるで二人を祝福するように瞬いていた。

長い時間を経て、ようやくたどり着いた二人の想い。

それは、静かで、温かく、確かな約束。

この夜、順子と悟の心は、もう離れることのない絆で結ばれていた。






――完
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