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第57話 エピローグ
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順子は東京の残りの2年間で倶楽部でのリーダーとしての仕事をやり遂げる。
整形費用の借金もすべて返し終えた。
看護師国家試験に合格し、そして念願だった東北の地元の総合病院への就職も決まった。
ーーーーーー
大学を卒業し地元に戻ってきたーーー春の日。
雪解け水が光をはね返し、町の空気にほんのりと土の匂いが混じっていた。
順子は、新品の白衣のユニフォームを着て、カルテを手に病棟を歩いていた。
患者の笑顔、ナースステーションのざわめき、消毒液の匂い――
それらがすべて、今の順子には愛おしかった。
忙しく、慌ただしく、それでも一日一日が確かに前に進んでいる。
――ただひとつだけ、昔と違うことがある。それは、いつも近くに悟がいるということ。
仕事終わりに迎えに来てくれる悟の車。
助手席には、あの頃と変わらない笑顔があった。
たまに、休みの日に三人で集まる。
理恵もいて、高校のころのように賑やかに笑う。
だけど、もうあの頃の順子ではない。
自分の顔も、心も、少しずつ、自分で選んで変えてきた。
鏡に映る自分の姿を見て、もう“誰かに憧れるだけ”の自分はいないと気づく。
今は、ちゃんと“自分”として生きている。
その夜、勤務を終えて夜空を見上げる。
星が静かに瞬き、街の灯りの向こうに春の匂いが流れてくる。
「……私、幸せだな。」
小さく呟いた声は、夜風に溶けていった。
――自分が変われたから。
――そして、大切な人たちが待っていてくれたから。
順子の胸の奥で、穏やかで、確かな鼓動が響いていた。
ーーーーーー
ある日の静かな夜。
順子はソファに腰を下ろし、熱いハーブティーを手にひと息ついていた。
外では、初夏の夜風がカーテンをやわらかく揺らしている。
心地よい疲労の中、携帯がテーブルの上で震えた。
画面を見た瞬間、順子の顔がぱっと明るくなる。
「……麗子さん!」
久しぶりに見るその名前。
胸がいっきに熱くなった。
通話ボタンを押すと、スピーカー越しにあの懐かしい落ち着いた声が響いた。
「順子、元気?」
「もちろん! 麗子さんこそ元気? どうしてたの? もう全然会えないから寂しくて!」
電話の向こうで、麗子がくすっと笑った。
「ふふっ。仕事が忙しくてね。でもね、今度、長期休暇が取れたの。だから……東北に旅行しようと思って。」
「えっ、本当に⁉︎ やったぁ!」
順子は思わず立ち上がって、ソファのクッションをぎゅっと抱きしめた。
「もちろん悟の店、来て! 絶対、絶対だよ!」
「うん。行きたいと思ってた。久しぶりに二人の顔を見たくて。」
順子は少し間を置いて、ふと尋ねた。
「……あれ? 一人で来るの?」
受話口の向こうから、麗子の少し含みのある笑い声が聞こえた。
「ふふふ……順子、やっぱり鋭いね。」
「えっ、まさか! 好きな人できたの⁉︎ えっ! もしかして彼氏? きゃーっ! やばい、聞きたい! 見たい! 絶対、絶対来てね!」
順子はテンションが上がりすぎて、思わずクッションをぽんぽん叩いていた。
麗子は、そんな順子のはしゃぎっぷりに微笑みながら、静かに言葉を選ぶように口を開いた。
「……うん。すごく大切な人なの。」
その声には、かつて倶楽部で見せていた“女王”の強さではなく、一人の女性としての柔らかい響きがあった。
「あなたが悟を思うように、私も――彼を大切に思ってる。やっと出会えたの。」
順子は、胸がじんわりと熱くなるのを感じた。
麗子のそんな声、初めて聞いた。
「麗子さん……良かった。本当に……良かったね。」
電話の向こうで、少し照れたように笑う声がした。
「ふふ。ありがとう、順子。」
「ねぇ、その人の名前、聞いてもいい?」
順子は、息を潜めるように尋ねた。
麗子は少し間を置き、やがて、柔らかく、けれど確かな声で答えた。
「……私の、愛してる人。その人の名前は……」
小さく息を吸ってから、照れくさそうに――でも幸せそうに、こう続けた。
ーーーーー 「一平。」
完結
整形費用の借金もすべて返し終えた。
看護師国家試験に合格し、そして念願だった東北の地元の総合病院への就職も決まった。
ーーーーーー
大学を卒業し地元に戻ってきたーーー春の日。
雪解け水が光をはね返し、町の空気にほんのりと土の匂いが混じっていた。
順子は、新品の白衣のユニフォームを着て、カルテを手に病棟を歩いていた。
患者の笑顔、ナースステーションのざわめき、消毒液の匂い――
それらがすべて、今の順子には愛おしかった。
忙しく、慌ただしく、それでも一日一日が確かに前に進んでいる。
――ただひとつだけ、昔と違うことがある。それは、いつも近くに悟がいるということ。
仕事終わりに迎えに来てくれる悟の車。
助手席には、あの頃と変わらない笑顔があった。
たまに、休みの日に三人で集まる。
理恵もいて、高校のころのように賑やかに笑う。
だけど、もうあの頃の順子ではない。
自分の顔も、心も、少しずつ、自分で選んで変えてきた。
鏡に映る自分の姿を見て、もう“誰かに憧れるだけ”の自分はいないと気づく。
今は、ちゃんと“自分”として生きている。
その夜、勤務を終えて夜空を見上げる。
星が静かに瞬き、街の灯りの向こうに春の匂いが流れてくる。
「……私、幸せだな。」
小さく呟いた声は、夜風に溶けていった。
――自分が変われたから。
――そして、大切な人たちが待っていてくれたから。
順子の胸の奥で、穏やかで、確かな鼓動が響いていた。
ーーーーーー
ある日の静かな夜。
順子はソファに腰を下ろし、熱いハーブティーを手にひと息ついていた。
外では、初夏の夜風がカーテンをやわらかく揺らしている。
心地よい疲労の中、携帯がテーブルの上で震えた。
画面を見た瞬間、順子の顔がぱっと明るくなる。
「……麗子さん!」
久しぶりに見るその名前。
胸がいっきに熱くなった。
通話ボタンを押すと、スピーカー越しにあの懐かしい落ち着いた声が響いた。
「順子、元気?」
「もちろん! 麗子さんこそ元気? どうしてたの? もう全然会えないから寂しくて!」
電話の向こうで、麗子がくすっと笑った。
「ふふっ。仕事が忙しくてね。でもね、今度、長期休暇が取れたの。だから……東北に旅行しようと思って。」
「えっ、本当に⁉︎ やったぁ!」
順子は思わず立ち上がって、ソファのクッションをぎゅっと抱きしめた。
「もちろん悟の店、来て! 絶対、絶対だよ!」
「うん。行きたいと思ってた。久しぶりに二人の顔を見たくて。」
順子は少し間を置いて、ふと尋ねた。
「……あれ? 一人で来るの?」
受話口の向こうから、麗子の少し含みのある笑い声が聞こえた。
「ふふふ……順子、やっぱり鋭いね。」
「えっ、まさか! 好きな人できたの⁉︎ えっ! もしかして彼氏? きゃーっ! やばい、聞きたい! 見たい! 絶対、絶対来てね!」
順子はテンションが上がりすぎて、思わずクッションをぽんぽん叩いていた。
麗子は、そんな順子のはしゃぎっぷりに微笑みながら、静かに言葉を選ぶように口を開いた。
「……うん。すごく大切な人なの。」
その声には、かつて倶楽部で見せていた“女王”の強さではなく、一人の女性としての柔らかい響きがあった。
「あなたが悟を思うように、私も――彼を大切に思ってる。やっと出会えたの。」
順子は、胸がじんわりと熱くなるのを感じた。
麗子のそんな声、初めて聞いた。
「麗子さん……良かった。本当に……良かったね。」
電話の向こうで、少し照れたように笑う声がした。
「ふふ。ありがとう、順子。」
「ねぇ、その人の名前、聞いてもいい?」
順子は、息を潜めるように尋ねた。
麗子は少し間を置き、やがて、柔らかく、けれど確かな声で答えた。
「……私の、愛してる人。その人の名前は……」
小さく息を吸ってから、照れくさそうに――でも幸せそうに、こう続けた。
ーーーーー 「一平。」
完結
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