王弟が愛した娘ー音に響く運命ー現代パロ

Aster22

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不器用な恋と、始まる暮らし

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不器用な恋と、始まる暮らし
「何買うんだ?」
「玉ねぎと、鶏肉とルーとスパイスかな....あとナンあったら欲しい。野菜は...」
「無しでいい。」
「ええ。」
「いいだろ。今日ぐらい。」
「もう.....付け合わせぐらい出すよ。にんじん、じゃがいも辺りは買っとこう。」
「よし、なら野菜からだな。」
勢いよくカゴを持つレオだがよく考えたらこの坊ちゃんはスーパーで買い物なんてしたことがあるのだろうか。
「じゃがいも何袋だ?3ぐらいか?」
「1で。」
「玉ねぎは何が違うんだ?色か....?」
「いいから適当に5つぐらい選んで。」
「セラ、鶏肉はこんなに種類があるのか?カレーに入ってるのはどれだ?脚か?」
学校トップの頭はどこいった。少し考えれば違うことぐらい分かるだろうに。
「......レオくん、スーパー行ったことないでしょ。」
「うっ....よく分かったな。」
「料理もしたことないね?」
「......ない。」
「それは別にいいんだけど、鶏は胸肉でいいよ。あとトマト缶とヨーグルトも買わなきゃ」
「.....ちゃんと同棲するまでに料理できるようになるから見捨てないでくれ。」
「何弱ってるの?別に経験ないのは悪いことじゃないでしょ。ほら、スパイスのとこ行くよ。」
この店はそう高くもないが安い店でもない。本音を言えばスパイスは別の店で買いたいが今日は仕方ないだろう。
「これと......これと、あとこれも。」
「こんなに使うのか?」
「カレーには何種類もスパイスが入ってるの。これでも少し減らしてるのよ。揃えると高いから。」
「そうなのか.....」
トマト缶と、ヨーグルトを入れる。会計に並んだその時――――
「レオくん?」
「え、嘘レオくんじゃん!」
「何でスーパーなんかいるの?」
甲高い女の声。過去に遊んでいた女だろうか。とにかく下を向いておく。顔を見られたらお終いだ。
「あー.....ちょっと親に頼まれてな。」
「え、後ろの子誰?妹?」
「まあそんなところだ。すっぴんで恥ずかしいから誰にも見られたくないんだと。」
「えー絶対可愛いのにぃ。レオまた遊んでよ。」
「それは無理。」
「なんでよぉ、最近のレオ、ほんと連れない。」
「連れなくて結構。これからはないから話しかけんなよ。」
「酷ーい。あのマンション連れて行ってくれないのー?」
マンション?何の話だろう。
「あ?あんなとこもうねえよ。」
レオが段々と苛立っていくのが分かる。
袖をつまむと一瞬黙ったレオは吐き捨てるように言った。
「妹が待てねえから行くわ。もう誘ってくんなよ。」
まだ何が言いたげな女たちを置いてスーパーを出る。
「悪かったな。大丈夫か?」
「うん、びっくりしたね。」
「マジで消えてくんねえかな俺の過去.....」
「過去は変えられないからね。しょうがない。」
本当は聞きたかった。あのマンションとはなんなのか。
「セラ、勘違いすんなよ。俺にはもうこれから先はお前だけだ。」
必死な顔。そんな顔するなら隠さなくったっていいのに。
「分かってるよ。帰ったら一緒にカレー作ろ?」
「ああ。」
レオが、少し安心した顔をした。私の不安気な顔には、気づかなかった。


「今日ライは?」
「19時ぐらいかなあ。」
「カレーって作るのそんな時間かかる?」
「仕込みが終わったら待つ時間が長いかな。時間が経ったらあとはソース作って焼くだけ。」
「ならちょっとイチャイチャ出来るな。」
「ライに見られたら私死んじゃう。」
「だからこそのセキュリティマンションだ。」
違うと思う。
「で、何からやるんだ?肉を焼くのか?」
「焼く前にヨーグルトやスパイスを混ぜたものに浸すのよ。本来なら半日以上漬けたほうがいいんだけど。今日は2時間だけ。」
レオは隣でやり方をじっと見ている。
「はい、これでしばらく待つの......ってちょっと。」
「いいだろ?待てなかった。」
後ろから抱きしめられると不思議とレオの香りが強く感じる。この匂いが好きだった。
「もう、ここキッチンだよ?」
「ならソファに移動するか。」
そう言いながらネクタイを解きシャツの袖を捲る姿はどうしたって色っぽくて、意識してしまう。
「ん、セラ。」
言われるがままに膝に座る。屋上と違ってなんだか.....
「いいな。目線が合う。」
そう。屋上だと胸元にある顔がソファの上だと綺麗に合う目線が恥ずかしい。
レオが腰を引き寄せればもうない隙間に心拍が上がっていく。
「.....なあ、この姿他の男に見せたことあんの?」
「あるわけないでしょ。」
「なら俺だけか。.....可愛い。」
優しくて、甘い、軽いキス。いつもとは少し違う感じ。
「家だとさ、こうやってイチャイチャ出来るじゃん?昼休みとか時間なさすぎて余裕ないけど。」
絡められる手、髪を撫でる手に優しい眼差し。過去はわからないけど、この人が今私の方を向いてくれていることだけは分かる。
「これからやっと学校以外でもこうやってお前に触れられる。つーか学校さあ.....」
「何?」
「そろそろ、バラしちゃダメか?」
「来週には夏休みじゃない。今更バラさなくても....」
「分かってる。夏休み、男に誘われたりしてないよな?」
「したけど、全部断ったよ。でもエリシアたちとショッピングは行きたい。」
「それは行けよ。女同士だろ。うちの家族も全員個別にお前と出かけたがってるんだよな.....俺、時間あんのか?」
「レオとは庭園と、海デート行くんでしょ?それは絶対行こうよ。」
「そうだな。他はまあうちかここでいいか。スーパーデートも悪くないしな。」
忘れかけていた記憶が蘇った。今やっと少しの平和を手にしたばかりだ。自ら壊すような真似はしたくない。
「あ、あぶね。」
レオがセラを下ろし、カバンから何やら取り出している。
「これ、お前の香水。もらってたんだけど、バタバタしてたからな。引っ越し記念にいいだろ。」
「わあ!ありがとう!」
「つけてみろよ。」
「どうやってつけるの?」
「そうだな....自分だけが香りたいならウエスト辺りに1プッシュでいい。デートの時とかならうなじに1プッシュ、学校なら手首の内側でいいと思うぞ。」
「なるほど。じゃあ今はウエスト?」
「デート扱いしてくれないのか?」
「えっ....じゃあ。」
うなじにかけてみるとふわりと広がる匂い
「いい香り......落ち着くね。」
「......あ、ああ。お前そのものみたいだ、やばい。」
「ちょっと、レオ......」
「香水って不思議だよな。ムラっとする。」
「何言って......」
「セラ」
耳元で低い声。
振り向いたと同時に貪るようなキス。
「んんっ.....ゃ......」
「はぁ........そろそろソース作らなくちゃ。」
「は?もうかよ。待てって。」
「んっ......」
「はぁ.....ここでいいって言ったけど拷問だな....作るか。」
「うん。」
「玉ねぎ、どうやって切るんだ?」
「みじん切り、分かる?」
「流石に分かる。細かいやつだろう。」
「そう、それ....ってちょっと!」
「?なんだ?」
「指!丸めて!飛ばすつもりなの!?」
「お、おお。こうか。」
「そう。」
「なんなんだこれは!?涙が止まらん!」
「玉ねぎはそういうもんなの。諦めて。」
「何か武器に使えそうだな.....」
どんなサバイバルをやる気なんだ。
ガチャガチャと作っているとライが帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえりライ。」
「邪魔してるぞ。」
「いらっしゃいレオさん。今日はカレー?」
「そう。レオも手伝ってくれたのよ。」
「ライ.....お前は料理出来るのか?」
「はい、一通りは。姉ほど上手くはありませんけど。」
「くっ......必ずやお前に認められるよう腕を上げてくる。」
「いや、俺はそんな気にしてないんですけど。なんかあったんですか?」
「もう酷いのよ。じゃがいも3袋買おうとするし鶏肉の種類は分かってないし、指は切ろうとするし玉ねぎでボロ泣きだし......」
「.....なんかレオさんのそういうとこ見ると安心しますね。」
「それはそうね。また作らせましょ。」
「お前ら俺を何だと思ってるんだ....」
「とにかくもう出来るから。ライがシャワー終わったら食べよ。レオがチーズナンまで買ってくれたのよ!」
「チーズナン!やった!」
あんな素直に喜ぶライを見たのはいつぶりだろう。自分のことより、ライの笑顔が嬉しくてたまらない。
「お前ら兄妹は意外と子供っぽいよな。大人びてるだけで。」
「うーん、そうかもねえ。私もライも喜怒哀楽が激しいのよ。」
「是非もっと見たいものだ。ここには入り浸るかもしらん。」
「レオならライも文句は言わないと思うけど....ご家族の方はどうなの?」
「お前はたまに連れていく。そしたらライも友達呼べるだろ。」
「確かに....あの子友達いるのかしら。」
「そろそろ作ってもらわないとな。」
「さて、ご飯にしようか。」
「いただきまー.....」
「待て。グラスを持つんだ。お前たちの門出を祝って.......」
「乾杯!」
「水で....,」
「コーディアルでも買ってくるんだったな。」
「まあいいじゃないですか。気分の問題です。」
「流石だ、ライ。いいことを言う。」
18年。短いのか長いのか分からない月日の中で1番平和な食事だったと言えよう。
「次はコーディアル買ってくるな。あと何か作って欲しいもの考えとけ。次は俺が作る。」
「正気なの?」
「お前彼氏に優しくしろよ....元々器用なんだ。今日はおかしかっただけで。」
「期待せずに待っとくわ。」
「レオさんまた来てくださいねー!」
こうして新生活は幕を開けた。
 
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