トゥーリとヌーッティ<短編集>

御米恵子

文字の大きさ
43 / 163
欲望のトライアングル

4.ヌーッティの決断

しおりを挟む
「さあ、ラクリッツチョコレートを作りましょう!」
 意気揚々とリュリュが板チョコを半分にへし折った。半分をヌーッティに手渡すと、もう半分を素手で細かく粉砕した。
 いつもなら手渡されたお菓子を即座に食べるヌーッティであったが、これまでのリュリュの言動に怯えているのか、渡されたチョコレートに手をつけなかった。
 そんなヌーッティに構わずリュリュは、粉砕したチョコレートをククサという白樺のコブから作られたカップに入れると、詩を歌い始める。

 Suklaaスクラーtuleトゥレ kiroukseksiキロウクセクシ
 ——チョコレートよ、呪いになれ
 Mieleniミエレニsekoitaセコイタ siihenシーヘン
   わたくしの気持ちよ、それに混ざれ

 リュリュの歌に応えてククサの中のチョコレートの色が、香ばしい茶色から毒々しい紫色に変わった。
 それを見届けたリュリュが別の詩を歌うと、チョコレートは溶けて液状に変わった。リュリュはククサの横に置いておいたラクリッツを1粒手に取ると、それをチョコレートの中に入れた。ラクリッツは紫色のチョコレートでコーティングされた。リュリュはそれを手で掬い取ると、ふうっと息を吹きかけた。瞬く間にチョコレートが固まり、ラクリッツチョコが完成した。
「できたヌー?」
 恐る恐るヌーッティがリュリュに尋ねた。
「アレクシへのチョコはできましたわ。さて、次はトゥーリ様へのチョコを作らなくちゃですわ」
 発言の前半と後半で声色が変わっており、ヌーッティは、アレクシが今までに類を見ない危機的状況に置かれていることを察した。
「ヌ、ヌーはちょっと用事を思い出したから……」
「トゥーリ様に報告する気ではありませんわよね?」
 図星だったのかヌーッティは冷や汗をかき始める。リュリュの鋭く冷たい眼光がヌーッティを捉える。ヌーッティの目は泳ぎ、言葉に詰まっていた。
「報告する気ですか?」
「ち、ちがうヌー」
 ヌーッティはそう答えるほかなかった。
 返答を聞いたリュリュはククサの中のチョコレートを息を吹きかけ凍らせて中から抜き出すと、残っていたチョコレートを手に取り粉砕し、ククサの中へ入れた。
 そして、再び詩を歌う。

 Suklaaスクラーmuuta ムータ toivoksini トイヴォクシニ
 ーーチョコレートよ、わたくしの祈りに変われ
 Rakkaudeni ラッカウデニsekoita セコイタ siihen シーヘン
   わたくしの愛よ、それに混ざれ

 チョコレートが今度は輝く赤色に変わり、リュリュは別の歌でチョコレートを溶かした。
 それから、先程と同じ容量でラクリッツチョコを作ると、赤色のラクリッツチョコを赤色の袋で包装し、紫色のほうは黒色の袋に包んだ。
 ラクリッツチョコが完成すると、リュリュはメッセージカードを書き始めた。時々、歌を歌いながら書くリュリュをヌーッティは部屋の隅で怯えながら見ていた。
 しばらくして、メッセージカードを書き終えたリュリュは、ヌーッティに残りのチョコレートを食べて良いと伝えると、ヌーッティを残してその場を後にした。
 その時、ヌーッティは閃いた。
 ヌーッティはすぐさま行動に移した。
 はたして、アレクシは無事でいられるのか、 トゥーリに被害が及ばずに済むのか、その前に、ヌーッティ自身が生き延びることができるのかーーそのすべてがヌーッティの行動に委ねられていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

ナナの初めてのお料理

いぬぬっこ
児童書・童話
ナナは七歳の女の子。 ある日、ナナはお母さんが仕事から帰ってくるのを待っていました。 けれど、お母さんが帰ってくる前に、ナナのお腹はペコペコになってしまいました。 もう我慢できそうにありません。 だというのに、冷蔵庫の中には、すぐ食べれるものがありません。 ーーそうだ、お母さんのマネをして、自分で作ろう! ナナは、初めて自分一人で料理をすることを決めたのでした。 これは、ある日のナナのお留守番の様子です。

かつて聖女は悪女と呼ばれていた

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」 この聖女、悪女よりもタチが悪い!? 悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!! 聖女が華麗にざまぁします♪ ※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨ ※ 悪女視点と聖女視点があります。 ※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

稀代の悪女は死してなお

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

処理中です...