教祖様と贄

阿良々木五男

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8, 罰

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 助かるかも、という良子の希望はすぐに打ち砕かれた。目の前に現れたのはヒーローでも警察でもなく、今の状況を引き起こした元凶の男だったからだ。志々目は腕を組みながらにっこりと笑って良子を見下ろしている。

「駄目だよ、みんな修練で忙しいんだからそんなに騒ぎ立てたら。っていってもこの屋敷は修練場からはそれなりに離れているから、向こうに聞こえているかは怪しいけどね。あ、ちなみにこの屋敷を出れてもこの屋敷は土塀に囲まれているし、門にも鍵がかかっているから逃げるのは大変だと思うよ」

「そ、そんな……。どうしてこんなこと、するの?」

「え? 君は大切なお客様だし、祭儀までに逃げ出されたら困るし」

「矛盾してる……」

「そんなこと無いよ。ほら、大切なものは鍵のついた箱にしまっておくのが常でしょう?」

 そう言いながら志々目は格子の鍵穴に鍵を差して格子を開けた。良子はその隙を狙って家を飛び出したが、当たり前のように志々目の腕に阻まれた。

「聞き分けが無いなぁ。ねぇ、もしここを逃げ出したとして、三百万はどうするの? 返すの? それとも踏み倒す?」

「そ、それは。えっと」

「それとも借金が帳消しになったのを良いことに、またホストクラブに入り浸るのかなぁ」

「……」

 ぐぅの音も出ない。二度とホストクラブに行くな、と言われても、絶対に約束できる自身が無かった。

「さ、家の中に戻ろうか」

 志々目はぐいと良子を押し戻すと、中から格子の鍵をかけた。それから玄関扉を閉め、良子の腕を引っ張った。成すがまま良子は家の中へと引き戻され、再び寝室へと舞い戻ってきた。見た目はヒョロくて色白なのに手は案外大きいんだなぁなんて現実逃避じみたことを考えながら、良子は志々目を見ていた。

 寝室へ戻ってくると、良子は布団の上に座らされた。彼女が座った後、志々目も向かい合うようにして布団の上で胡坐をかいた。見知らぬ男と布団の上で二人きり、という状況に嫌でも意識してしまう。それを隠すように良子は目を逸らした。

「一つ、言っておかなければいけない事がある」

 さっきまでの朗らかな笑顔を剥がして、志々目は言った。赤い眼が良子の心中を見透かすように煌めいている。

「ここの指導者は僕だ。そしてこの土地もこの屋敷もここの信徒も僕のもの。そこに踏み込んできた時点で君も僕のものだ。――君をもらうにしては三百万は安すぎるかもしれないが。まあそれはさておき、この土地においては僕の言う事に逆らうのは許さない」

「そんな、横暴なっ」

「横暴? なぜ? 良子ちゃんは僕に従いたくないのだということ?」

「そりゃあ、だって他人だし」

「なるほど。それなら他人から一歩踏み込む必要があるみたいだ」

「え?」

 志々目は突然良子の胸倉をつかむと、着ていたシャツを思い切り左右に引っ張った。シャツを留めていたボタンは引きちぎれ、良子の丸みを帯びた胸が露わになった。

「き、きゃああッ!?」

「だから叫んでも仕方ないんだってば」

 抗おうとする良子の腕を、志々目が掴んで抑える。そのまま両腕を片手で掴み上げると、志々目は自分の帯を解いて、それで良子の両腕を縛り上げてしまった。
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