室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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第1章 月森ヶ丘自由学園

副室長サマは苦労人。



「………それで?」

「「………;」」


英国国家機密情報機関特殊組織内--


憮然とした表情の金髪美形の青年は、眉間に皺を寄せつつ、ボフッと椅子に深く腰をつける


くるっ…と椅子を回転させ、目の前にいる青い顔のシフォンとレオを睨み据え、脚を組み、構える青年の額には青筋が浮かんでいた


「…それで?

私は連れて帰れと言った筈なのですが…? 出る幕もなく、のこのこと帰って来たわけですか」


(…怒ってますね;)

(やっべ‥。目が据わってる;)

青筋を額に走らせるマコーネルに、その場にいた全員が凍りつく-


マコーネルは盛大に溜息つく

「まぁ大方、予想はしていましたが……ここまで予想通りだと笑えてきますね」

「「すみません……;」」


鼻で笑うマコーネルに、いたたまれないシフォンとレオは、頭垂れる。

「…はぁ、もういいです。先日のスクワット・ブランドンの事件のおかげで、今まで把握出来なかったクリフェイド室長の身元がわかりました。

家に連れ戻されたのなら、ご自宅に直接伺うまでです」


「身元…マジでわかったのかよ!?」

切り替えの早いレオを些か睨むも、マコーネルは言う
 

「えぇ‥。FBIとCIA幹部のニ名の男が生中継にも関わらず叫んでくれましたからね。"弟に息子"宣言されれば、身元が把握したも同然です。彼らの家を調べれば直ぐに出て来ましたよ。

クリフェイド室長は、ご自分の身元が割れないようガードを固くしていましたが、父親と兄の方は個人情報…身元がすぐに割れました」


住所は、こちらですね…とデスクの上にバサッと書類を置き、肘を立てて両手の指先を突き合わせる

「…ですが、今、足を運ぶわけではありません」


淡々と告げるマコーネルにまどろっこしさを感じるレオは顔をしかめて話の先を急かした。


「というと?」

「門前払いされるのがオチです。それどころか、とくに父親に警戒されるのが目に見えます。あの二人…彼らは、FBIやCIAの幹部をやっているようですが、シュバルク家と言えば、五本の指折りに入るほどの世界有数な由緒ある有名な大貴族。

父親のあの動揺……溺愛っぷりを見れば、室長なんていう危険な役職、許されるとは思えませんからね。 持ち前の貴族の権力を使ってでも、室長と会わせてはくれないでしょう」


何でも噂では‥ マコーネルの顔に段々と皺が寄っていく

「――…何でも噂では、父親より長兄の方が末っ子に対して心配性だとか囁かれてるようですが…私にしたら、父親も長兄も同じですね」


学園前でのクリフェイドと父親らのやり取りを思い出したシフォンは苦笑し、レオに至っては‥

「ああー…。同感」

マコーネルの言葉に頷いていた。


「何にせよ、今、会うのは得策でないことは確かです」

椅子に深く腰を入れ直すマコーネルはふぅー…と息を吐く

「じゃあ、どうするんだよ」

「今から一週間後に大統領主催のパーティーが開かれるのですが、各業界の著名人や貴族達も招待されているようです。私も、その一人で、室長不在責任者、代理として呼ばれていますが、貴方々にも国の官僚として出席してもらいます」

「マジかよ!? …パーティーとか、かったりいな‥;」

レオは面倒くせぇ…とばかりに顔を歪め、


「レオ」

それを見たマコーネルはレオを窘めた

「ご存知のとおり、貴族や著名人が呼ばれているんです。由緒ある大貴族のシュバルク家が招待されないわけがないでしょう…?

室長と接触する機会はその時です。

…時おり、遠隔操作でセキュリティを強化したりと仕事はなさってくれているようですが、室長が不在であること事態が問題なことに何故、気づかないんでしょうかね」


はぁー…と溜息つくマコーネルにシフォンとレオは互いに顔を見合わせた

「「…は!?」」

声がハモる。


「ちょっと待て!室長は仕事をしてんのかよ!?」

「えぇ…。ハッキングして侵入し、いろいろとセキュリティーシステムを強化されたりチェックしたり仕事はなさってくれているようですよ?

………ただ、追跡出来ないよう細工されていますがね」


「それじゃあ、室長を連れ戻さなくてもいいんじゃ…」

「室長がいなければ、誰が組織を、此処を統率するんです?維持するんです?…嫌ですよ、私一人で維持するなんて。室長が不在の分、私にその分ツケも廻るんですから。……それに、ハッキングに関しては、世界一というほどまでの腕。職場にいるといないとでは違うんですよ。


何か不測な事態が起こった場合にも、室長という人間は必要不可欠なんです。彼は指揮を取るのも上手いですからね…。私など、この現状を維持するので精一杯。何より喧しい頭の固いジジイ連中に知れたら、なに言われるか分かりません」


国の重役をジジイ呼ばわりのマコーネルにシフォンは困った顔をし、レオはマコーネルのジジイという言葉を聞くなり、顔をしかめる。

「ああ……あの、死に損ない連中か」


酷い言われようである。

「…そのパーティーは大統領主催ですからね、彼らも参加するでしょう…?」

「ん!? ちょっと待て!つぅことは何だ!?室長と鉢合わせしちまうんじゃ‥」


はぁー… マコーネルは盛大に溜息つく

「えぇ。室長の父親と長兄がFBIにCIAの幹部なんですよ?その上、シュバルク家なんです。貴族としても幹部としても会場の他の招待客に挨拶に回ったりするでしょう。……室長が最も毛嫌いしているジェイムズ・ウィンディバンク財務大臣も、その招待客の一人です」

つまり、マコーネルが危惧しているのは――…


「ウィンディバンク財務大臣もですが、室長が鉢合わせして、何も起こらないという確証がありません。…というよりも、あの二人の性格を考えて何も起こらない方が不思議と言って過言ではないんです。

因みに私や貴方達も大統領からパーティーに招待されていますが、通常とは異なり、今回は任務として出向きます」

「…パーティーの時までも仕事かよ?」


不満たらたらなレオは文句言いたげにマコーネルを見る


「仕方ないでしょう? 大統領から直接の依頼なんですから!その上、関わる人が室長なだけに断りたくとも断れないんです」

こっちの心境も分かって下さい…と漏らすマコーネルは悩ましげに頭を抱える


「室長と財務大臣の仲の悪さと言ったら、各官僚達にも知られているくらい有名なんです。大統領は実に良い方なんですがね。…ま、その大統領も二人の仲の悪さを知っているからこそ、お二人の性格も熟知している上でパーティー当日に騒動を起こさないか大変不安を感じているようです…

私もフォローしようとしましたが、なにぶん事実なものでして、おまけに室長は前に近隣国の王の髪を引っこ抜くという暴走を起こした前科持ち。否定しようにも、出来ませんでした。



普通ならば、私はそこでフォローする立場なのでしょうが。フォロー…、否定出来なかった私の、非常に複雑な心境も貴方々にも知ってもらいたいです」

マコーネルはマコーネルなりに苦労していた‥。
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