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序章 英国フォルティア学院

楽園と聖杯

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「人間とは昔から不思議な生き物でしてね…。自分より強い者や知恵に長けている者には畏怖を覚え、彼らのことをこう呼んでいました。『魔女』とね。

自分の意見に異論を訴える者も『異端者』、そう呼ばれていましたよ。彼らは至って普通の人間なのですがね…」

昴は空になったカップに紅茶を注ぎ、一口飲むと思い出すかのように目を閉じて続きを語る…


「彼ら、魔女や異端者と呼ばれし者たちは…少しばかり周りの人間と違うからという理由で迫害され、追い詰められていきました。

流行り病や飢饉などで民が不満を訴えるなど、都合が事あるごとに悪くなると、全て彼らに責を押し付け、民間の興奮を抑えるために罪もない人間を処刑していました。


それから――…中世における異端審問の数が増え始めた契機として、1022年にフランスのオルレアンで起きた、異端者の処刑事件。

この事件が起きた際、オルレアンの会議に召集されたブルージュ大司教のゴーズランは、スペインのビック司教オリバに対し、異端の発覚を憂う手紙を書いています。

その後、11世紀中盤までに異端発覚の報告が17件を達し、急増。」

紅茶をまた一口と飲む‥。


「………その後、11世紀後半には異端発覚の数が沈静化したものの、12世紀に入ると再び急増し始めました。


12世紀に「中世の異端審問」と呼ばれる最初の異端審問が始まったのは、南フランスにおいてカタリ派がその影響力を拡大したことが直接の契機でした。

異端問題は政治問題であり、地域の領主たちが治安を乱すとして個別に地域内のカタリ派の捕縛や裁判を行っていましたが、

そういった従来の方法をまとめた形で出された1184年の教皇勅書『アド・アボレンダム(甚だしきもののために)』(ルキウス3世)によって教会による公式な異端審問の方法が示されたんです。


そこで定められた異端審問は各地域の司教の管轄において行われていきました。司教たちは定期的に自らの教区を回って異端者がいないかを確かめていたんです。
……異端審問制度はドイツやスカンジナビア諸国など北ヨーロッパへも拡大し、もはや彼らに逃げる道はありませんでした」


「……ですが、ある教会だけは彼らに手を差しのべたのです。それが後にあの大聖堂となりました。ヒューマン牧師らが捜している禁断の地下への扉、それは“楽園“という名の… 安息の地、そしてもう一つは――…

               “不老不死の力“」

ふぅ… と憂鬱げに眉を寄せる昴は尚も話を続ける


「そう…

あそこには“聖杯“が眠っているんですよ」


……なんだと!?

「……うそ」

「いえ、本当です」

俄かに信じられないと吃驚するクリフェイドに昴は困惑げに溜息ついた。
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