室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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第1章 月森ヶ丘自由学園

人間、やろうと思えばやれるものなんですよ

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「行きますよ? ‥‥3‥‥2‥1‥…」


岬が”1”と数え終わったと同時に光は岬の言葉を信じ、閉ざされた瞼をゆっくりと開けた。そこには、驚きの顔だが涙をいっぱいにした望が顔を覗き込んでいた。

「に、兄さんっ!!!」


まさに、感動の再会。……のはずだが、光は微動だにせず、ぼーっとしている。

その様子に皆が違和感を感じる中、あっ!声を上げるや岬は光のいるベッドに駆け寄ると、光の目の前でパンッ!!!と両手を叩く。


すると、今まで、ぼー…としていた光は一度瞬きをするや、笑顔で泣き顔の望に抱き着いた。


「!?」

よくわからない望だったが、兄の光が目を開けてくれた喜びで構わず同じように抱き着いた。


「…ど、どうなってるんや!!?委員長の言葉と同時に目を覚ましたさかい、それもさっきのあれは…」

首を捻る幸村同様に、結城も同じく、状況について行けず、混乱していた‥。


「…別に大したことではありませんよ。あれは… まぁ、一種の暗示。催眠術と言っておきましょうか‥。

戻るも戻れないのも、全ては気持ちの問題なんですよ。光先輩は分からないからと‥‥戻れないと決めつけていました。
ですから、僕の言葉は神の言葉というふうに暗示をかけ、僕の言葉に難なく従うようにしたんです。


…それで、さっきの状態だったのは暗示がかかった状態だったんです。ですので、本人の目の前で何か刺激的な衝撃を与える必要があり、僕は先輩の目の前で両手を叩き、音を出し…


先輩はその音に暗示が解け、今の状況になったというわけです。が‥‥わかりましたか?お二人共。」



岬は結城と幸村に一応聞くが二人から来る返事は曖昧なものだった‥。


「わからないのなら、わからなくて結構です。別に理解してもらおうとは思いませんし」

「…なぁ、委員長?暗示とか催眠術とか…一体、何処で取得したん?」


疑問に思い、岬に幸村は聞くも、



「…どこもなにも、そんなもの、本を読んで勉強したに決まっているでしょう…? 君は僕を馬鹿にしているのですか?」

岬から放たれる若干、怒りの籠もった凍てつくような冷めた目で睨まれた幸村はすぐに否定した。


「ち、ちゃうちゃう!!!委員長、そんな目でわいを見んといて!!ホンマにちゃうって!!その、今でも人を射殺せそうな目を向けんといてや!!!」

幸村は言いたいことだけ言うと、そそくさと結城の後ろに隠れた‥。



そんな幸村の代わりに結城が応えた。


「あのなぁ?つまり、コイツが言いたいのは何でそこまで詳しいんだってことなんだよ」


「……ハァ、そんなことですか。何故、僕がそこまで詳しいのか‥。

それは、僕が一通り、心理学を学んでいるからです。実践したのは初めてだったのですが…… 案外上手く行くものなんですね」


と、平然と言ってのける岬だが、その岬の言った最後の言葉が引っ掛かった。


「…おい、ちょっと待て。今、物凄く聞き捨てならない言葉が出てきた気がするが…

 実践初めてって言わなかったか!!?」


と言ったのは、今まで望と抱き合っていた光で…

「案外上手く行くって…お前っ!!失敗したら、どうする気だったんだよ!!?」


と怒鳴るのは結城で、

そして、岬はというと……そんな二人をただ、煩わしそうに眉間を寄せ、冷めた目で見つめ返した。
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