和泉くんの受難

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- 出逢い -

…だからって、いきなり顔を覗き込むのはやめてほしい

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「翁は――‥ 俺の昔を知って、いるの?」


辛うじて出た声は震えていて、どうしようもない焦燥感に囚われる。

「…………」


思わぬ動揺に身構える俺を翁はお面ごしに、ただ ジッと見つめる… お面に隠れて、その表情が笑っているのか怒っているのか悲しんでいるのか、わからない。

どうしたらいいのか分からなくて、口を開くも言葉に詰まり、口を閉ざしてしまうと、翁がお面ごしにフッと目を細めて手を伸ばす――‥ 


びくり、と体を震わせると翁は一度、手を止め、そして俺の頭に手を乗せた。

「キミはいつも一人で抱え込みますねぇ」

「え…?」


「キミも少しは周りを頼りなさい。……子供は甘えていいんですよ」

そう、キミはそんなところもあの頃と変わらないと呟く翁に目を見開く

「翁…?」


「…………」

フッと小さく笑ってくしゃりと頭を撫でてくる翁に俺は目をぱちくりさせた。


――――――‥ 
――‥ 

『おやおや、幽玄の世界にどんな迷い子かと思えば… 
まだ、年端もいかない子供ではないですか』

『――ッ!だれ?』


『酷い怪我ですねぇ…。あなた自身もまるで手負いの獣のようですよ』

『………』


『おっと!誰の問いにはまだ答えていませんでしたねぇ。私は、"        "…。まぁ、キミとは違う世界の住人になりますかねぇ』

『…違う世界の住人?』


『さぁ、もうお帰り…。此処は人間ヒトが住まう場所ではないよ。それでも、何れキミが望むなら…  迎えに行くよ。それにキミとはまた…』

『――‥ え?』


――――――――‥ 
――‥ 

「――‥ みくん!和泉くんっっ!!」


「え?」

「え?…じゃありませんよ。もう!本当にキミは昔から人の話を聞かないですねぇ」


一瞬、朧げな記憶が横切ったけど、喋っていた相手の顔が思い出せない。……なんとなく、翁の気もしなくもないけど、いつのものだったか… もう忘れてしまった昔の、朧げで曖昧な俺の記憶。

少しぼーっとしていると、


「ぅわっ!」

「……ハァ、キミよくそんなんで今まで無事でしたねぇ。いくら人間でないからと言っても少し無防備すぎですよ」


翁が俺の顔を覗き込んでいた。
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