目覚めたそこはBLゲームの中だった。

- ファンタジア王国と王都フィル -

出会いは必然か偶然か

「アクラス家の子供だったな… 名は何という？」

悪名高いアクラス家。巷で嫌でも聞く噂は吐き気がするものばかりで、その嫌悪から特に関わりを持ちたいなどと考えたこともなかったのだが、ふいに、この子供の名前が気になった。

「ル、ルイ…」

震える小さな唇が紡ぐ声は、

　　　『 ルイ・アクラス』

微かな、ようやく聞き取れる声の大きさで、ぷるぷるとまだ微かに震えるこの子はまだ警戒しているのだろう。悪名高きアクラス家、その家の子供ならば尚更、街中に姿を出せばイヤでも注目の的になるのだから─。

人という生き物は自分よりも強い者には強く出ないが弱い弱者には強く出る傾向がある… きっと、この子供も… いや、その点で言えば、今までアクラス家という一族を一括りに見ていた私自身も彼らとそう変わらないかもしれない。

そんな自分自身の至らぬ点に知らず知らず溜め息が漏れる…。


その私の溜め息一つでもビクリと肩が跳ねるこの子供の態度にやはり、解せぬ…という感情が沸々と湧き上がる。

「ルイ、と言ったか…？」

私の問いに、コクリと小さく頷いて目をパチパチさせるこの小動物… 否、ルイに思わず苦笑する。


「先ほども言っただろう？私は別にルイの敵ではない。だから、そう怯えるな」

小さい子供とそう接したことがない私は子供のあやし方がわからない。

　───だが、少なくとも… 

（…暫くは楽しめそうだ）

退屈な日常、飽きてきた人間界… 

そろそろ、エルフの谷へ戻ろうかと思っていたが、それをもう少し先へ延ばすのも… 悪くない、何故だかそう感じた──。