目覚めたそこはBLゲームの中だった。

- 死は始まりに過ぎない -

帰るだけなのに、何でこんなにも緊張するんだろ…

玄関前で拳を握り締める…


自分の家なのに、帰るだけにこんなにも緊張するのはなんでだろう。

インターホンを押そうとした手を止め、植木鉢の下から合鍵を取った。…俺の父さんと母さんは共働きで仕事で海外赴任している。もう長いこと会っていない。あの人達は仕事人間で、俺が幼少期を過ぎた頃には姉ちゃんに世話を任せて、海外に行ったっきり…。


たまに、手紙は送られてくるけれど、写真も何もない簡素な文。

『元気ですか？学校はどう？お母さん達は…』


いつも決まって同じ内容の温かみの無い手紙を見て、送り主の母と父の顔や声を思い出そうとするも、遠い昔の朧げな曖昧な記憶に… 寂しかった幼少期を思い出す。

寂しかったあの頃は、姉ちゃんに母の面影をよく重ねていた…

友達がお母さんに迎えに来てもらうのを羨ましそうに見ていたら、その視線に気づいた姉ちゃんが微笑んで俺の頭を優しく撫でてくれた。


夜中に怖い夢を見て、グズっていた俺を姉ちゃんは優しく抱き締めてくれた。おいで、と一緒に寝てくれた。

だから、雅也と付き合うことになったときも、姉ちゃんに思いきって報告したら、手を叩いて喜んでくれた… まるで、自分のことのように。


『じゃあ！今日はお赤飯だね！』

そう微笑んでくれた姉ちゃんが……


ううん。きっと、違う！

そうだよ！だって、あの姉ちゃんだよ？いつも… そう、いつも… 


じわり、と滲む涙を制服の袖で拭い、玄関ほ扉の鍵穴に鍵を差し込んで扉を開けた――‥ 。