聖女だったのはお城で召喚された彼女ではなく、前世の記憶を取り戻した嫌われ王女の私だったようです。

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- 序 -

音一族と音巫女

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──────……
───…

「ふわぁーぁ…っ」

ジリリリリリ…!ガシャンッ 鳴り響く五月蝿い目覚まし時計を欠伸をしつつ、止める。

(仕事、か…)

ん、んッ!と背伸びをして眠い眼を擦りながら渋々起き上がる。…体が重く感じるのはきっと気のせいじゃない。朝起きるのは昔から苦手だ。

「これっ!音巫女よ、御本殿にご挨拶を…」

「おはよー。おじいちゃん、いつも言ってるけど、私は乙見よ!乙見!そもそも、音神社を継ぐ気はないって言ってるでしょ」

起きるのはもちろん、同居しているおじいちゃんに決まっていつも言われる言葉…。

「なにを言う!?お前こそ、我が音神社の後継者だといつも言っているじゃろう!そもそもお主には125代目の音巫女という自覚が無さすぎるのじゃ!!良いか!?この音神社にはそもそも…」

毎度のことながら繰り返す同じ会話にうんざりする。あ゙ー… また始まったわ。おじいちゃんの、音神社の謂れ。いつもみたいにおじいちゃんの言葉を適当に聞き流し、靴を履く。

「やっ…だ!遅刻しちゃう!!おじいちゃんッ遅れるから行くね!」

「これ、音巫女!わしの話はまだ…!」

腕時計をちらりと見て慌てて玄関を出る。

…おじいちゃんは私に神社を継げって言うけど、私には私の生活があるのよ?まあ、それも…

(ちょっとした反抗心もあるけど)

───私に、父と母はいない。私が小さい頃に事故に巻き込まれて亡くなり、一人残された私はおじいちゃんに引き取られた。おじいちゃんは母方の実家で、母はこの神社で生まれたものの、私がまだ小さかった頃に父と共に事故に巻き込まれてそのまま亡くなった。だから、私は両親の顔を覚えていない。おじいちゃんに引き取られ、音巫女の後継者として育てられてきたけど正直どうでもいいのよね…幼かった私を引き取って育ててくれたおじいちゃんには悪いけど。

(私は… )

チリン、

──バシュッ!

鈴の鳴る音と共に邪霊を祓う。

(くっ!また… やってしまったわ)

そう… いい加減、この日常から抜け出したい!私は『普通』を望んでるのよ!!そして普通に恋愛がしたい!!職場恋愛して…それから素敵な人と出会って… 結婚して、充実した人生を送りたいって望んでもいいじゃない!!別に高望みしてるわけじゃないのに…!

神社で巫女さんやってたって、出会いなんてしれてるし、おじいちゃんときたら神社関係の人に対象絞った婿養子リストなんて毎日のように持ってくるし…。ハァ、…ただ、それだけの為に一般企業に就いたのに。一向に減らないってどういうことかしら。時々こうして私を襲う邪霊もまた一向に減らない。

毎回毎回、至る所に現れる邪霊。他人なんてどうでもいいのに、つい癖で人知れず祓ってしまう。幾つかの小さい鈴が編み込まれた組紐がくくり付けてある腕を見つめる…。いつもは神通力で払うのだけど、人前であまり術式って使いたくないのよね…。変な目で見られるし。だから、人前では鈴を使うようにしている。音を鳴らす鈴は音巫女の自分としては勝手がいい呪具のモノだけど、あくまで道具だ。許容範囲を超えると… 壊れる消耗品。相手の力にもよるけど。

(はぁ、)

思わず溜め息が零れた。

(おじいちゃんの言っていることもわかるんだけどね…)

我が一族が率いる音家、音一族。音神社の歴史は古い。その名の通り、音を使って人為らざるモノや邪霊を祓い、瘴気を祓い土地を空気を清め、この地を守る音一族。───それが私の一族らしい。

そして、おじいちゃん曰く、先代にあたる音巫女だった母よりも私のほうが音巫女としての力を濃く継いでいるらしい。まあ、いやでもこんな日常を送ってるんだもの。…納得せざるを得ないのだけど。

(ハァ、仕事と家と…。いろいろ憂鬱ね)

元々、この音一族ではあるモノ・・・・を敷地内に封じ込めているとか。だから、この地において絶対的な力を持つ音巫女の存在は欠かせないってことらしいんだけど、いつの話よ?

(時代錯誤もいいところだわ)

───…そう、思っていた。今までは…。まさか、あんなことになろうとは… このときは思ってもいなかった。

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