断罪フラグを回避したらヒロインの攻略対象者である自分の兄に監禁されました。

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- 王国の陰りと忌まわしき魔女の呪い -

『暗雲の兆しと秘薬モドキ』

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「あ… にうえ…?」

前に図書室で会ってから数日、最近は公務が忙しいのかなかなか顔を合わせることがなかった兄上。ですが久しぶりにその顔を目にしたとき、違和感を感じた。

「ん?なんだ… オーディットか、どうした?」


前に会ったときに比べ、少しやつれてるような…?それに振り向きざま、探るような眼差しとかち合ったのは… そして、ほんの一瞬、垣間見えた冷淡な瞳が… 言いようのない焦燥感に駆られる───。

「兄上…?どうされまし……!?」

額に手を置き、苦しげに俯く兄上の姿に驚きに目を見開く。

「兄上ッ!!」

僕に視えたのは… 苦しむ兄上を覆う禍々しい黒い影。その影を見てハッとする。そう、確かこれは… イベントで、兄上の弱みに付け込んで闇が兄上の心に巣喰い、兄上に成り代わろうとする兆候、母上たちが差し向けた罠───。

すかさず、周りの止める声を無視し、兄上に駆け寄ると兄上の両頬をそっと手のひらで包み込む。

『陛下!?』

「!」

「兄上ッ!気をしっかり持ってください!!兄上!!!」

確か… ありました!

この間、見つけた… エルフの秘薬、の紛い物。それをポケットから出し、兄上にぶっ掛けた。そう、通常のエルフの秘薬は飲む物ですが、このエルフの秘薬モドキはかつての何代か前の歴代の王がエルフと親交の証に授かったレシピから精製したモノ。

エルフの秘薬のレシピのことだけあって、それは誰でも読める代物ではなく、エルフの言葉で綴られたそれは… 解読できず、今までずっと図書室の閲覧禁止区域場所に保管されていました。

こちらに来てしまったことによるチート能力のせいか… あるいはオーディット本来の知識。僕にはわかりませんが、僕には難なく読めたので試しに作ってみたものなんですが…

「ぐ…ッ!ハァッ」

「もう、大丈夫です。ゆっくり… ゆっくり、息を吸って吐いてください」

大丈夫ですか?ともう一度聞くと、『ああ』と短く応えた兄上は脂汗をかいていて、持っていたハンカチでそれを拭うと兄上はまだ苦しげに。先ほどよりは… 些か回復したのか、少し。ほんの少しだけ、笑みを零ました。

「…心配かけてすまない」

「いえ、兄上が大事に至らなくて良かったです。…ところでジークは?」

「ジークなら、少し前に他の用事を押し付けてな、暫くは帰ってこない」

肩を竦める兄上は『こんな有り様では体調管理も仕事の一つだとアイツに怒られそうだな』と、少し余裕ができたのか苦笑いする。

「そうですよ!本当に… 公務も大事ですが少しは休んでくださいよ兄上」

「ああ、本当にすまなかった。…ところでそれは?」


なんだ?と聞く兄上に先ほど飲ませたエルフの秘薬モドキの入っていた小瓶が目に入り、咄嗟に… 嘘をついてしまいました。
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