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- 王国の陰りと忌まわしき魔女の呪い -

『気持ちの - 葛藤 - 』

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『…ルティ?』

プギュウ!と鳴くバクに、僕はそれを口にすることを躊躇する。けれど、悩んでいても仕方がないと意を決した僕は口を開く。

「バク」

改まった僕の言い方に必然とバクの表情も強張る。

「この世界は乙女ゲームと共通した世界だと前に言っていましたよね?僕はこの世界でオーディットとして存在し、イレギュラーであると…」

   プゥ!

『確かに前にそんなことを言ったね…』

此処は乙女ゲームと類似した世界であり、何かと影響を受けやすい。ゲームの強制力などを考えるとこれは…

「これって、ゲームの強制力の上でのオーディットの死亡フラグ…ではありませんよね?」

『………』

僕の言葉にバクは神妙な面持ちで無言になる。けれど、バクにもそれはわからないと首を横に振るだけでした。

『キミのいう乙女ゲームっていうのが、キミの前の世界でどう存在していたのか、正直 僕にはわからないんだ。乙女ゲームとして存在していた、それは僕も知っている。

…だけどね、前にも言ったと思うけどその内容までは把握していないんだ。キミの前の世界では物理的に存在する無機質なモノだったけど、此処は… 無機質なモノではなくて、みんな生きている。つまり、常に前に進んでいる進行形なんだよ』

プキュゥッ!

『でもね、だからこそ… まだ未来は変えられる。
ルティ、これから先、キミが選んだ選択で未来はどうとでも変わる。キミの一つ一つの行動で… 一つの選択のうちの未来は変わることができるんだ。

    だから、

覚えておいて。未来は絶望だけじゃないって。明るい未来をその選択一つで切り開くこともできることを───。』

真摯に見つめる僕を見つめるバクの眼差しは真剣そのもので…

プモッ、

『ジキルドの今回の件にしてもそう。キミがどう動くかルティ、キミが決めていいんだよ?』

これを機にジキルドと距離を置くのも良し、縮まった兄弟仲を機にさらにジキルドと関わることも良し。……それはキミが決めることだから』

そう僕をまっすぐに見据えるバクの言葉に、一瞬目を逸らす。

「僕は…」

   プギュウ?

『うん?』


バクの優しく促す問いかけに僕は目を少し彷徨わせて… それから意を決して口にする。

「僕は兄上を救いたいです。でも、」

僕自身は弱いから…


「怖いんです。もしも、乙女ゲームのオーディットの結末を現実に迎えてしまうのではないかと…!見たとおり、今の僕は小さな子供です。大人に… それも、権力のある人間を相手に子供一人、もがいたところで… 未来の結末は変わらないのではないかと、そう思わずにはいられないんです」

兄上を助ける方法を聞いておきながら、怖いと思う気持ち。自分でも矛盾しているとわかっています。
でも、その『怖い』という感情が拭いきれない、そんな自分自身に嘲笑の笑みさえ浮かぶ。
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