断罪フラグを回避したらヒロインの攻略対象者である自分の兄に監禁されました。

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『乙女ゲームと断罪フラグ』

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先日、国王を継いだばかりの義兄を狙った暗殺者に誤って殺されかけたとき、前世の記憶が断片的に甦った。そして今自分がいるところが、まさかの乙女ゲームの世界の中だと気付いたとき、愕然とする。

手当てされベッドから跳ねるように跳び起き、慌てて部屋に備え付けの等身大の大きな鏡を覗くと、顔色が蒼白の… あどけなさが残るまだ幼い王子がそこにいた。試しに頬っぺたを抓ってみる。…痛い。夢じゃない!!

自分が今、『王宮ラビンス ~冷酷王の熱い眼差しに晒されて~』の乙女ゲームに出てくる… よりによって、悪役で近いうちに腹違いの兄王に断罪される悪辣王子オーディットになっているなんて… 最悪な展開もいいとこ、この先絶望しか無いんですが!?
鏡の前で項垂れる僕を見てメイドたちがよほど怖い目に遭われたのですね。とか、まだ子供なのにお可哀想に… とか口々に言っていますが、ちがいます!ちがうんです!!僕が項垂れてるのは… ここが乙女ゲームの世界だということと、自分の転生先が断罪フラグキャラだと言うことに絶望してるんです…ッ!

はぁ、と溜め息ついて握りしめていた拳を額に当て床にずるずると座り込み、乙女ゲームの内容と今までを軽く振り返ってみる。


――‥そう、確かこの部屋の背景にも身に覚えが。確か前世で妹が夢中になっていた『王宮ラビンス ~冷酷王の熱い眼差しに晒されて』の乙女ゲーム。魔王を倒す為に王家によって異世界から召喚されたヒロインの聖女が攻略対象者たちと様々な恋愛模様を繰り広げる王宮ラビンス。え、なにそれ。聖女様ってビッチ?って突っ込んだら妹に殴られたのを覚えてる…。
   前王妃が病死し、側妃だった母は国王によって空席となった王妃に迎え入れられた。国王には前王妃との間に一人息子がいて、僕と10歳以上も離れている兄にすれば新しく王妃に迎えられた母は継母になる。そしてこの母が所謂、毒花というもので――。実は前王妃の病死にもこの母が絡んでいるのは前世の妹にゲームに無理やり付き合わされたから知っています。

そして、その母が色々王宮で謀反を企て、7歳の息子である僕も一緒に兄王の暗殺を企てたとして、共に処刑される悪辣王子だということに。
改めて自分の立場を理解すると、あら不思議。少し冷静になれたような気がします。


しかし。

はぁー…っ。何度、鏡を見ても姿は変わらない。
ああ、酷い悪夢です。――それにしても、前世の記憶が曖昧なのが引っ掛かります。確か、表ルートと裏ルートがあったような…?ゲームの設定も前世の妹が前に裏設定が何とかって言ってた気がしますが、あくまでヒロイン視点の攻略に関する話だったので、ゲーム序盤で死亡予定の悪役は悪役でも超脇役なので、今の僕には関係ありませんね。…はぁ、しかし。こんなことなら、あのとき妹の話を真面目に聞くんだったと、今さらながら後悔しています…。
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