断罪フラグを回避したらヒロインの攻略対象者である自分の兄に監禁されました。

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- プロローグ -

『前世の記憶と僕の死因』

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「…オーディット?オーディット!何処にいるのです!?」


少し神経質そうなその声に ハッとして項垂れていた頭を上げてサッと服装を小綺麗にする。

「すみません!ここです。…母上」


そう、この乙女ゲームにおいて僕の断罪フラグはこの母上が原因なんですよね。昔は王の寵愛を一身に受けていたと… そんな自慢話を毎夜毎夜、子守歌代わりによく聞かされました。

ああ、急いで行かないと、この人はこの人でいろいろ面倒くさいですからね。機嫌が悪くなる前に姿を見せないと。いつ、ヒステリーを起こすかわからない…。


「ああ、そこにいたのね。随分、心配しましたよ。あなたは私とあの人との間の唯一の子供なのだから…。あなたが刺客に殺されかけたと聞いたとき、心臓が止まるかと思ったわ。…本当に心配したのですよ?」

そう言って僕を抱きしめる母に悪寒が走る。


(そう…。前国王陛下と母上の間に生まれた子供は僕だけだから。この人は僕を… 権力の道具としか考えていない。だから、前国王陛下と血の繋がりを持つ僕をこの人はとても大切にしている。
以前、母上を寵愛されていた前国王陛下が遺した形見としてと、その面影を求めて僕を見る母上の目は… 熱を含んでいて、正直、不快感・嫌悪すら感じる。そして、それと同時に王宮内での権力を振りかざす為の道具にされていることも――。)

……全て知っている。


「本当に可哀想に…。怖かったでしょう?」

・・・すみません。今の母上のほうが怖いです。だって、蛇のように熱を持った目で、体を舐め回すように じっとり、ねっとりとした視線で見つめてくるんですよ!?チロチロと舌を出す蛇に、まるで品定めされているようで気持ち悪い。母が熱を含んだ目で見つめて僕を抱きしめている間、こっちは視姦されてる気分です。


「まぁ!顔色が優れないわ… それに、こんなに震えて…」

そう言って、さらに強く抱きしめてくる母に体の震えが一層強くなる…。……言えない。まさか、前世の記憶が邪魔して女性恐怖症が再発しただなんて。前世の妹は思春期にグレてしまい、所謂ヤンキーになってしまった。そんな妹に毎日のようにパシられ、僕の言動によっては殴る蹴るの暴行を受ける日々… 父と母は仕事で海外に赴任。あれはそう… 僕にしたら地獄の日々でした。

そんな毎日を送っていて、女性恐怖症にならないほうがおかしい。よって、前世の僕は酷い女性恐怖症となった。僕が死んだあの日も、妹に新作の乙女ゲームの買い出しにパシられ、その帰り道、不運にも赤信号で突っ込んで来たトラックに轢かれた。そう、僕は事故死だった。

あの日、もしかしたら僕は助かっていたかもしれない。あのとき、突っ込んできたトラックの前を猫が歩いていた。だから、見て見ぬフリも出来たかもしれない。けど、僕には無理だった。


気付いたら駆け出していて…

身を乗り出すように、猫を掴んで歩道脇の草むらに向かって放り投げた。そして僕は、そこで意識が… シャットアウトした――。
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