断罪フラグを回避したらヒロインの攻略対象者である自分の兄に監禁されました。

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- 乙女ゲームの世界観と宿命 -

『現実逃避と夢現』

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『…ぇ、……ねぇ、ッ!』

ぱちくり、瞬きする。その大きな声にハッとして周りを見渡すと何故か何もない白い空間に僕と《それ》はいた。


『まいったな。そろそろ起きて貰いたいんだけど』

「………」


ぎゅ、頬を試しにつまんでみると、痛い。…夢じゃない!!そして何だろうこのデジャヴは…。

白い空間。モコモコした真っ白な毛玉。黒い小顔に、ちんちくりんのつぶらな瞳…。目の前でふよふよと宙に浮く白い羽の生えた… それは、


――‥ ひつじ だった。


「………」

あれ?おかしいな。幻覚が見える…。いくら目をゴシゴシ擦っても目の前の《それ》は僕の視界から一向に消えてくれない。もしかして、悲観のあまり現実逃避し過ぎてファンシーな夢にぶっ飛んでしまったのでしょうか。


『おっかしいな…?より親しみやすいように、キミから読み取った記憶を元にぬいぐるみに姿を変えてみたんだけど。反応が鈍いし、失敗だったかな?』

モコモコしたひつじは僕の存在も無視して独り言を喋り始めた。


『よしっ!』

ようやく、独り言を終えたのか、一人… いえ、この場合は一匹?になるんでしょうか。一匹、決意するとボフン!と音を立てて、モクモク上がる煙のような靄。そして、現れたのは・・・


   プモッ!

さらに小さくなった黒を基調とした体に、鼻がほんの少し長めの…


「黒ブタ…?」

プギュッ!!!


「いっったッ!」

納得いかなかったらしいソレは僕の頭をかぷっ!と噛んできた。…地味に痛い。


『ちょっとキミ!これのどこがブタに見えるのさ!?どっからどう見てもプリティーなプーモでしょ』

プンスカと怒る《それ》に僕は首を傾げる。


「……プーモ?」

『こっちの世界でこの生き物はプーモって呼ばれてるんだ。因みに属性は精霊。キミの前の世界では悪夢を食べると言われてるバクになるのかな…。』


まぁ、僕のこの姿は仮の姿になるけど。と自分でプリティーだと言った《それ》はつぶらな瞳を向けて言った。


「バク?」

『そう、バクだよ。この世界の神は夢を司る…。乙女ゲーム… キミはそれに心当たりあるはずだよ』


乙女ゲーム…?どういうことでしょうか。

『ふぅ、まったく。今回は本当にイレギュラーなんだよ?キミがあれをトラックから庇おうとした勇気は認めるけど、おかげで色々ややこしいことになったんだから』

「………」


プンスカと怒る黒ブタもどき、もといバクが意外と可愛いかもしれないと思った僕は試しに抱きついてみました。

 プギュゥッ!

『……キミさぁ、僕の話、真面目に聞いてる?』


すみません、聞いてないです。…意外とその小さな体はぷにぷにしてるんですね。

『ぷにぷに…?』


声音が低くなった。
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