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- 陰の王国と廻りだす歯車 -
一一ジキルドside
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一一 ジキルドside
私の出した提案にもっと喜ぶかと思ったが、弟はただ困惑したように困ったように笑うだけだった。
まあ無理もないだろう。母上と兄である私の狭間に立つ弟は母と私が仲が悪い故に、どっち付かずの中立の立場を保ちつつ、正直、どう返せばいいかわからない。そんなところか…。
それに、今まで関わることがなかった私に襲撃事件がキッカケとはいえ、突然、優しく接して来られていることにも戸惑いと困惑を感じてるのだろう。まあ今まで全く歩み寄ろうとさえしなかった人間に急に優しくされれば戸惑うのは… 仕方ないか。
『でも…!ぁ…ッ』
何か言いたいことがあるのか、何か言いかけた弟はハッとしたように言葉を途切らせ、視線を彷徨わせた。
「何だ?」
『…いえ、すみ、ま…せん。何でもありません』
震える口で途切れ途切れに言葉を紡ぐ弟はこれ以上ないほど青ざめて その俯いた顔に、
――‥ああ、原因は私か。
人の口には蓋が出来ないように、城下町やこの城内にもいろいろな私の噂が出回っていることは知っている。『冷酷王』の言われの中の一つとして、私の反感を買った者は処刑台に送られる… そんな噂も出回ってると従者のジークから聞いたが、まったく人間とはもの好きな生き物だ。そんなことで一々処刑台に送っていてはこの城の人間など、皆、処刑台行きになるぞ?この国も成り立たなくなると言うのに。まったく、愚かだ。
そんなことを思いながら、
クツリと喉で笑うと、それを見た弟の肩がビクリと揺れた。
―― さて、どうしたものか。
まるで小動物のようにコロコロと表情をよく変えるこの弟を本心から守りたいと思った。あの、毒親である母上に染まらぬよう、この純真無垢なこの子を… この世界の汚い部分を知らないこの子の心を… 守り抜くと決めた。
一体、何がそうさせたのか。自分でもよくわからないが、そう決めた想いは… 紛れも無い自分の意思だ。
だから一一。
「……私が怖いか?」
『え?』
もっと、歩み寄ろうと思った。腹違いと言えど、愛らしい唯一の弟に。その心を守るために一一。
顔を上げ、不安と困惑が入り混じる瞳で見上げてくる弟を安心させるように… その髪を優しく梳く。
「私が… 皆からどう言われているか知っている。冷酷王と呼ばれていることもな…。だが、フッ、さすがの私も自分の意に沿わない人間を処刑台送りにすれば、この国は成り立たなくなる」
『えっ』
きょとん、とする弟の頭をクシャリと撫でると、弟は擽ったそうに身をよじった。
「…それほど、この国には野心深い人間が多いということだ。悲しい事実だが、人間とはそういうものだ。この城の人間もそうだ。皆、表向き国王である私に頭垂れているが、その内心ではいろいろキナ臭いことを考えているものだぞ?
だが、そういった者たちを処刑台に送ってばかりいたら、この城の人間もほとんどがいなくなる。この国の大貴族も、だ。……フッ、まぁ、城の人間や大貴族がいなくなれば、それはそれで静かになるだろうが。今度は私が仕事の山に埋もれるはめになる。……それでは私が困る」
おいで、そう言ってベッドにいる弟をヒョイと抱き上げる。しかし…
「しかし、思った以上に軽いな。お前はもう少し肉を付けるべきだと思うが」
『は、はわわわッ///え、えっ!?ぇえ゙ッ!?』
顔を赤くして、耳まで赤くなるオーディットは… 赤くなったり青くなったりと何かと忙しい。しかし、そんなテンパっているところもまた愛おしく感じる。抱き上げ、オーディットを膝の上に乗せると、
そのさらさらとした髪をまた撫でる…。
「確かに、処刑した者もいる。だがそれは、国家転覆を企みクーデターを起こそうとした者たちばかりだ。国家転覆、国家反逆罪はこの国では大罪だ」
大罪のほとんどは翌日に処刑台送りと決まっている。その罪の内容によっては観衆の前での公開処刑もあるが…。そう口にすると、腕の中でオーディットが少し震えたような気がした。
「だから、全てが全て処刑台送りになるわけではない。――‥ それに、これらは罪を犯した悪人共の話だ。お前には関係ない話だから、そう怖がるな」
いくらそう言っても、手をぎゅっと握りしめ、ぷるぷる…っと震えるオーディットは顔が酷く青くて。
「すまない。お前を… 怖がらせるつもりはなかった」
やはり、そう簡単にはいかないか。
「少し話が長くなってしまったな。…まだ、病み上がりだ。ゆっくり休め」
オーディットを抱き上げ、ベッドに戻すと、最後にクシャリ、と撫でてから中断していた公務をやるべく部屋を後にした一一。
私の出した提案にもっと喜ぶかと思ったが、弟はただ困惑したように困ったように笑うだけだった。
まあ無理もないだろう。母上と兄である私の狭間に立つ弟は母と私が仲が悪い故に、どっち付かずの中立の立場を保ちつつ、正直、どう返せばいいかわからない。そんなところか…。
それに、今まで関わることがなかった私に襲撃事件がキッカケとはいえ、突然、優しく接して来られていることにも戸惑いと困惑を感じてるのだろう。まあ今まで全く歩み寄ろうとさえしなかった人間に急に優しくされれば戸惑うのは… 仕方ないか。
『でも…!ぁ…ッ』
何か言いたいことがあるのか、何か言いかけた弟はハッとしたように言葉を途切らせ、視線を彷徨わせた。
「何だ?」
『…いえ、すみ、ま…せん。何でもありません』
震える口で途切れ途切れに言葉を紡ぐ弟はこれ以上ないほど青ざめて その俯いた顔に、
――‥ああ、原因は私か。
人の口には蓋が出来ないように、城下町やこの城内にもいろいろな私の噂が出回っていることは知っている。『冷酷王』の言われの中の一つとして、私の反感を買った者は処刑台に送られる… そんな噂も出回ってると従者のジークから聞いたが、まったく人間とはもの好きな生き物だ。そんなことで一々処刑台に送っていてはこの城の人間など、皆、処刑台行きになるぞ?この国も成り立たなくなると言うのに。まったく、愚かだ。
そんなことを思いながら、
クツリと喉で笑うと、それを見た弟の肩がビクリと揺れた。
―― さて、どうしたものか。
まるで小動物のようにコロコロと表情をよく変えるこの弟を本心から守りたいと思った。あの、毒親である母上に染まらぬよう、この純真無垢なこの子を… この世界の汚い部分を知らないこの子の心を… 守り抜くと決めた。
一体、何がそうさせたのか。自分でもよくわからないが、そう決めた想いは… 紛れも無い自分の意思だ。
だから一一。
「……私が怖いか?」
『え?』
もっと、歩み寄ろうと思った。腹違いと言えど、愛らしい唯一の弟に。その心を守るために一一。
顔を上げ、不安と困惑が入り混じる瞳で見上げてくる弟を安心させるように… その髪を優しく梳く。
「私が… 皆からどう言われているか知っている。冷酷王と呼ばれていることもな…。だが、フッ、さすがの私も自分の意に沿わない人間を処刑台送りにすれば、この国は成り立たなくなる」
『えっ』
きょとん、とする弟の頭をクシャリと撫でると、弟は擽ったそうに身をよじった。
「…それほど、この国には野心深い人間が多いということだ。悲しい事実だが、人間とはそういうものだ。この城の人間もそうだ。皆、表向き国王である私に頭垂れているが、その内心ではいろいろキナ臭いことを考えているものだぞ?
だが、そういった者たちを処刑台に送ってばかりいたら、この城の人間もほとんどがいなくなる。この国の大貴族も、だ。……フッ、まぁ、城の人間や大貴族がいなくなれば、それはそれで静かになるだろうが。今度は私が仕事の山に埋もれるはめになる。……それでは私が困る」
おいで、そう言ってベッドにいる弟をヒョイと抱き上げる。しかし…
「しかし、思った以上に軽いな。お前はもう少し肉を付けるべきだと思うが」
『は、はわわわッ///え、えっ!?ぇえ゙ッ!?』
顔を赤くして、耳まで赤くなるオーディットは… 赤くなったり青くなったりと何かと忙しい。しかし、そんなテンパっているところもまた愛おしく感じる。抱き上げ、オーディットを膝の上に乗せると、
そのさらさらとした髪をまた撫でる…。
「確かに、処刑した者もいる。だがそれは、国家転覆を企みクーデターを起こそうとした者たちばかりだ。国家転覆、国家反逆罪はこの国では大罪だ」
大罪のほとんどは翌日に処刑台送りと決まっている。その罪の内容によっては観衆の前での公開処刑もあるが…。そう口にすると、腕の中でオーディットが少し震えたような気がした。
「だから、全てが全て処刑台送りになるわけではない。――‥ それに、これらは罪を犯した悪人共の話だ。お前には関係ない話だから、そう怖がるな」
いくらそう言っても、手をぎゅっと握りしめ、ぷるぷる…っと震えるオーディットは顔が酷く青くて。
「すまない。お前を… 怖がらせるつもりはなかった」
やはり、そう簡単にはいかないか。
「少し話が長くなってしまったな。…まだ、病み上がりだ。ゆっくり休め」
オーディットを抱き上げ、ベッドに戻すと、最後にクシャリ、と撫でてから中断していた公務をやるべく部屋を後にした一一。
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