28 / 117
- 陰の王国と廻りだす歯車 -
一一バクside
一一バクside
ぎゅーっぎゅーっに抱きしめて、いつの間にか寝息を立てているルティ…
ちょっと力加減を考えて、と言わないのは心細かったのだろうルティへの僕なりの気遣い。薄っすら目尻に滲む涙の痕に少なからず胸が痛んだ。
ペロリと舐めると、夢の中のルティは擽ったそうに微かに身じろぎする…。それを愛おしげに見つめていると、部屋の外から徐々に人間の声が近づいて来た。
力いっぱいに抱きしめるルティの腕の中から、いそいそと… なんとかルティを起こさずに、脱出に成功した僕は急いで本棚の影に隠れた。キィーッという扉の開閉の音と共にこの部屋に足を踏み入れたのは…
『――‥ やはり、気のせいではないのか?』
ルティの兄の現国王ジキルドと、
『…だと、いいのですが。メイドから扉越しにオーディット殿下が誰かと会話しているような声が聞こえたという報告がありましたので。何ぶん、先日の襲撃の件があるので侵入者の疑いもありますし、念のために調べておきましょうか』
そのジキルドの忠実なる従者のジークという人間だった。
『しかしだな、そうは言ってもこの子はまだ幼い。こんな子供に尋問めいたことをするというのかお前は。…それに、周りがこうもピリピリしていては、ただでさえ 先日の件以降、この子は不安定だというのにこれ以上の不安を煽る気か?』
静謐な威圧感、抑揚の消えたジキルドの声に、ルティのことを兄の立場として按じていることにホッとする。ルティが兄のジキルドとの関係に不安を抱いているのは薄々気づいていたけれど、それに決定打を打ったのはルティが人知れず声を殺して泣いていたことだった。
ジキルドとルティ… 二人の歩む道のりに少なからず不安要素があったけど、どうやら僕の杞憂のようだ。今の会話をルティが聞いていたのなら、もう少しジキルドに対する恐怖心も和らいだろうに、と… 思わず苦笑してしまう。
『メイドが耳にしたというのは… 勘違いで、この子の寝言ではないのか?』
そっと覗いてみると、
ジキルドがルティの目尻を拭っていた。
『……泣いていたのか』
抑揚のない小さな声で呟くジキルドは拭った指先に付いた水滴に俄かに表情を曇らせた。
『今まで接して来なかったとはいえ、兄弟仲の修復というのは… なかなか上手くいかないものだな』
ルティが眠るベッドの端に腰を置き、ルティの頭を撫でて肩を竦めるジキルドは… 少し気落ちしているように見えたのは、きっと僕の気のせいではないはずだ。
ぎゅーっぎゅーっに抱きしめて、いつの間にか寝息を立てているルティ…
ちょっと力加減を考えて、と言わないのは心細かったのだろうルティへの僕なりの気遣い。薄っすら目尻に滲む涙の痕に少なからず胸が痛んだ。
ペロリと舐めると、夢の中のルティは擽ったそうに微かに身じろぎする…。それを愛おしげに見つめていると、部屋の外から徐々に人間の声が近づいて来た。
力いっぱいに抱きしめるルティの腕の中から、いそいそと… なんとかルティを起こさずに、脱出に成功した僕は急いで本棚の影に隠れた。キィーッという扉の開閉の音と共にこの部屋に足を踏み入れたのは…
『――‥ やはり、気のせいではないのか?』
ルティの兄の現国王ジキルドと、
『…だと、いいのですが。メイドから扉越しにオーディット殿下が誰かと会話しているような声が聞こえたという報告がありましたので。何ぶん、先日の襲撃の件があるので侵入者の疑いもありますし、念のために調べておきましょうか』
そのジキルドの忠実なる従者のジークという人間だった。
『しかしだな、そうは言ってもこの子はまだ幼い。こんな子供に尋問めいたことをするというのかお前は。…それに、周りがこうもピリピリしていては、ただでさえ 先日の件以降、この子は不安定だというのにこれ以上の不安を煽る気か?』
静謐な威圧感、抑揚の消えたジキルドの声に、ルティのことを兄の立場として按じていることにホッとする。ルティが兄のジキルドとの関係に不安を抱いているのは薄々気づいていたけれど、それに決定打を打ったのはルティが人知れず声を殺して泣いていたことだった。
ジキルドとルティ… 二人の歩む道のりに少なからず不安要素があったけど、どうやら僕の杞憂のようだ。今の会話をルティが聞いていたのなら、もう少しジキルドに対する恐怖心も和らいだろうに、と… 思わず苦笑してしまう。
『メイドが耳にしたというのは… 勘違いで、この子の寝言ではないのか?』
そっと覗いてみると、
ジキルドがルティの目尻を拭っていた。
『……泣いていたのか』
抑揚のない小さな声で呟くジキルドは拭った指先に付いた水滴に俄かに表情を曇らせた。
『今まで接して来なかったとはいえ、兄弟仲の修復というのは… なかなか上手くいかないものだな』
ルティが眠るベッドの端に腰を置き、ルティの頭を撫でて肩を竦めるジキルドは… 少し気落ちしているように見えたのは、きっと僕の気のせいではないはずだ。
あなたにおすすめの小説
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼不定期連載となりました。
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。
おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。
✻✻✻
2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。
僕、天使に転生したようです!
神代天音
BL
トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。
天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。
従者は知らない間に外堀を埋められていた
SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL
転生先は悪役令息の従者でした
でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません
だから知らんけど精神で人生歩みます