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- 陰の王国と廻りだす歯車 -
一一バクside
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一一バクside
ぎゅーっぎゅーっに抱きしめて、いつの間にか寝息を立てているルティ…
ちょっと力加減を考えて、と言わないのは心細かったのだろうルティへの僕なりの気遣い。薄っすら目尻に滲む涙の痕に少なからず胸が痛んだ。
ペロリと舐めると、夢の中のルティは擽ったそうに微かに身じろぎする…。それを愛おしげに見つめていると、部屋の外から徐々に人間の声が近づいて来た。
力いっぱいに抱きしめるルティの腕の中から、いそいそと… なんとかルティを起こさずに、脱出に成功した僕は急いで本棚の影に隠れた。キィーッという扉の開閉の音と共にこの部屋に足を踏み入れたのは…
『――‥ やはり、気のせいではないのか?』
ルティの兄の現国王ジキルドと、
『…だと、いいのですが。メイドから扉越しにオーディット殿下が誰かと会話しているような声が聞こえたという報告がありましたので。何ぶん、先日の襲撃の件があるので侵入者の疑いもありますし、念のために調べておきましょうか』
そのジキルドの忠実なる従者のジークという人間だった。
『しかしだな、そうは言ってもこの子はまだ幼い。こんな子供に尋問めいたことをするというのかお前は。…それに、周りがこうもピリピリしていては、ただでさえ 先日の件以降、この子は不安定だというのにこれ以上の不安を煽る気か?』
静謐な威圧感、抑揚の消えたジキルドの声に、ルティのことを兄の立場として按じていることにホッとする。ルティが兄のジキルドとの関係に不安を抱いているのは薄々気づいていたけれど、それに決定打を打ったのはルティが人知れず声を殺して泣いていたことだった。
ジキルドとルティ… 二人の歩む道のりに少なからず不安要素があったけど、どうやら僕の杞憂のようだ。今の会話をルティが聞いていたのなら、もう少しジキルドに対する恐怖心も和らいだろうに、と… 思わず苦笑してしまう。
『メイドが耳にしたというのは… 勘違いで、この子の寝言ではないのか?』
そっと覗いてみると、
ジキルドがルティの目尻を拭っていた。
『……泣いていたのか』
抑揚のない小さな声で呟くジキルドは拭った指先に付いた水滴に俄かに表情を曇らせた。
『今まで接して来なかったとはいえ、兄弟仲の修復というのは… なかなか上手くいかないものだな』
ルティが眠るベッドの端に腰を置き、ルティの頭を撫でて肩を竦めるジキルドは… 少し気落ちしているように見えたのは、きっと僕の気のせいではないはずだ。
ぎゅーっぎゅーっに抱きしめて、いつの間にか寝息を立てているルティ…
ちょっと力加減を考えて、と言わないのは心細かったのだろうルティへの僕なりの気遣い。薄っすら目尻に滲む涙の痕に少なからず胸が痛んだ。
ペロリと舐めると、夢の中のルティは擽ったそうに微かに身じろぎする…。それを愛おしげに見つめていると、部屋の外から徐々に人間の声が近づいて来た。
力いっぱいに抱きしめるルティの腕の中から、いそいそと… なんとかルティを起こさずに、脱出に成功した僕は急いで本棚の影に隠れた。キィーッという扉の開閉の音と共にこの部屋に足を踏み入れたのは…
『――‥ やはり、気のせいではないのか?』
ルティの兄の現国王ジキルドと、
『…だと、いいのですが。メイドから扉越しにオーディット殿下が誰かと会話しているような声が聞こえたという報告がありましたので。何ぶん、先日の襲撃の件があるので侵入者の疑いもありますし、念のために調べておきましょうか』
そのジキルドの忠実なる従者のジークという人間だった。
『しかしだな、そうは言ってもこの子はまだ幼い。こんな子供に尋問めいたことをするというのかお前は。…それに、周りがこうもピリピリしていては、ただでさえ 先日の件以降、この子は不安定だというのにこれ以上の不安を煽る気か?』
静謐な威圧感、抑揚の消えたジキルドの声に、ルティのことを兄の立場として按じていることにホッとする。ルティが兄のジキルドとの関係に不安を抱いているのは薄々気づいていたけれど、それに決定打を打ったのはルティが人知れず声を殺して泣いていたことだった。
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そっと覗いてみると、
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『……泣いていたのか』
抑揚のない小さな声で呟くジキルドは拭った指先に付いた水滴に俄かに表情を曇らせた。
『今まで接して来なかったとはいえ、兄弟仲の修復というのは… なかなか上手くいかないものだな』
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