断罪フラグを回避したらヒロインの攻略対象者である自分の兄に監禁されました。

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- 陰の王国と廻りだす歯車 -

ーーバクside ①

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ーープギュゥ!!

ジキルドの従者ジークが部屋に来た途端に、瞬時に身を隠した。

物陰からルティと話すジークをじっと観察していると、ジキルドの従者だというジークの瞳が一瞬、妖しく輝いたのを見逃さなかった。

ーーあれが人間だって?そんな馬鹿な!!確かにさっきまではあのジークという従者からは人間の気配しかしなかった!なのに、今の今まで朝だった時間から夜へと変わった瞬間、人間の気配からと同じ気配に変わった。そう… 闇の眷属の、それも僕以上に濃い闇の力を纏って。

 あれが人間だって?

ちがう!今ならわかる。この気配は…ッ!!


一度はルティに効かなかったジークの力も、二度目にはさらに力を強めたのか、ルティの瞼が力なく降りていく…

  最後には、

ジークの袖を掴むも、力尽きたように… 

だらり、と落ちる腕。くたりと崩れるルティの体を……

 ドサッ!

抱きとめたジークは… 

『ルティ!!』

急いで駆け寄る僕を真っすぐに見据えた。

「なんだ、もう… 隠れんぼはやめたのか?」

プキュゥ!

『ルティに何をした!?』

「うるさい。目の前にいるんだ、キャンキャン騒ぐな」

『ル…「ハァーッ。…まったく、少し落ち着け。俺は何もしていない。ただ、寝かせただけだ」

そう言って意識のないルティをベッドに寝かせて、布団をかけるジークを睨みつける。ルティに駆け寄ると、こっちの気も知らないで静かに寝息を立てていた。…本当に、ただ、寝ているだけのようだ。ホッと胸を撫で下ろす。

ルティの前で安堵する僕に、ジークは嘲笑した。

「…そんなに、この子供が大事か?」

ハッと、思い出したように後ろに振り返る。ルティを守るように… ジークと対峙した。

プギュゥッッ!

『お前…ッ!』

ジークの狙いがわからない。なんの目的があって、ルティを眠らせたのか。なんの目的があって… 朝と夜の時間を巻き戻したのか。

そして、

誰にも気付かれず、朝を象徴する陽を隠し… 夜を象徴とする陰の支配が出来たのか。それが出来るのはただ一人。

『この国の守護精霊、闇の精霊王 ジークォン!』

僕の言葉にジークはクツリと喉で笑う。

「…なんだ、知っていたのか。一つ、訂正入れるなら『元』になるがな」

プギッッ!

『ルティをどうするつもりで…ッ!』

静かに寝息を立てるルティを守るように前に出る僕はジークに詰め寄る勢いで問いただす。

   だけど、

そんな僕をジークは… 見つめた。笑いもせず、真っすぐに僕を見据えて、言い放つ。

「それはこっちの台詞だ。お前こそ、こいつを巻き込んでどういうつもりだ?」

嘲笑でもなく、怒るのでもなく… ただ、静かに口を開いた。

プギュゥ!

『巻き込む…?巻き込んでなんかいない!!僕はただ…』

「巻き込んでいない、だと?…この状況でよく言える。この子を違う世界から連れてきただろう?それを巻き込んでない、と… 本当に、そう言えるのか?」

『…………』


「ルティ」

『ッ!』

ジークの口から発せられた『ルティ』という単語に、体が過剰に反応するーー。
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