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プロローグ
『黒薔薇の貴公子と黒き悪魔』
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◇◇◇
その鴉に――‥ 『ハイド』という名前を付けました。
関心を持たない両親や侮蔑の目を向ける周囲の人間に… 人間という生き物に興味さえ失い、一人のほうが気楽だと思っていた私に当然、仲のいい友人などいるはずもなく、ただ一人… 時間がだけが過ぎていく退屈な日常を…
ハイドは変えてくれました。
ハイドは人の言葉がわかるのか、時おり私の言うことに首を傾げたり、頷いたり… 鳴いたりする。
ハイドという名前を付けるときも、新しく出来た初めての友人に舞い上がっていたのかもしれない。いくつか名前の候補を上げると、
ハイドは… スルーしました。よっぽど、気に入らなかったのか、『ジョン』とか『パチ』、それに『ルー』悩んで悩んだあげく、次々に名前を呼んでみるも無視。
そして、
最後に『ハイド』と呼んだ瞬間、
グワァー!
黒く澄んだ瞳、見る角度によっては綺麗な赤色に見えるつぶらな瞳をぱちくりさせてダミ声で応えたハイドに… 嬉しくて抗議の声を無視して抱き上げたのは懐かしい思い出…。
だけど、その楽しい日々はそう続かなかった。
◇◇◇
そんなある日のことだった。
下の階から母の金切りの悲鳴が聞こえたと同時に、何やら酷くメイドや執事たちが慌ただしくしていました。見ると、赤い血の血痕らしきものが所々に付着していて、あの母上には珍しく発狂していました。
『悪魔がいた』と。
もしやと思い、近くにいたメイドに話しを聞くと、メイドは眉根を少し吊り上げて口にした。
黒い鴉がいた、と… そう口にしました。床や壁に付着した血痕に青ざめる。メイドや執事は気がついたら黒い鴉は消えていたという。屋敷の中を走り回った。あらゆるところを捜して… 名前を呼ぶも、
その声に応えることはありませんでした。
それから三日三晩、母上は寝込んだと言います。私にしたら、母上なんかよりハイドのほうが心配で溜まりませんでした。
大切な大切な大好きだった友人は結局、戻らなかった。
また、一人ぼっちになったことに少し寂しさを覚えると同時に… 自分の中でポッカリ穴が開いたような虚無感が生まれました。
また始まった、窮屈で退屈な日常… 過ぎていく時間。それに新しく加わったとすればそれは前には無かった虚無感に違いない。
部屋から出るのも億劫になって、次第に部屋に閉じこもるようになりました。だけど、もちろん咎める者はいない。
――‥ そして、あの日も
虚無感を抱えたまま、いつもと同じように椅子に腰をかけて窓際を見つめていた。
そこから見えるのは時おり、羽をバタつかせながら気持ち良さそうに空の彼方へ飛んでいく… 小鳥。自分の元からいなくなったハイドを思うと、少し切なくなる――。
これ以上、あの小鳥を見ていると悲しくなるから目を逸らした。過去から逃げるように… 目をそっと伏せたときでした。
彼が来たのは――‥。
ノックが聞こえ、入室の許可を出しました。けれど、あれ?と首を傾げた。この屋敷にいる人間は誰一人私に関心がないのに、この部屋でノックの音を聞いたのも、いつぶりでしょうか。
首を傾げつつも、入室の許可を出すと入って来たのは…
すらりとした長身を真っ暗な長衣もとい執事服に身を包み、首の付け根まである闇色の髪は無造作に切られていて、隙のない身の熟しがより洗練されて見える。瞳の色も同色で、それでいて、切れ長の目は時おり冷たさを宿していて、あのハイドを思わせるように見る角度によって、その瞳は綺麗な赤色でした。
肌は陶器のように白く艶めかしく… そこから大人の色香を感じさせなくもない。
そして、音もなく素早く参じた。
『お初目に掛かります。今よりセイ様にお仕えすることになりました執事のハイドと申します。今後、ご用がある際は私をお呼び下さい』
その同じ名前に、一瞬、ハイドが帰ってきたのかと思った。そして、思わず抱きついてしまいました。
ハッと我に返ってすぐに離れた。またメイドや他の者たちのように侮蔑の目を向けてくるのだろうか、と少し不安げに見上げると、
「えっ…」
そんな私を愛しむように、ほんの少し微笑んでいた。
その鴉に――‥ 『ハイド』という名前を付けました。
関心を持たない両親や侮蔑の目を向ける周囲の人間に… 人間という生き物に興味さえ失い、一人のほうが気楽だと思っていた私に当然、仲のいい友人などいるはずもなく、ただ一人… 時間がだけが過ぎていく退屈な日常を…
ハイドは変えてくれました。
ハイドは人の言葉がわかるのか、時おり私の言うことに首を傾げたり、頷いたり… 鳴いたりする。
ハイドという名前を付けるときも、新しく出来た初めての友人に舞い上がっていたのかもしれない。いくつか名前の候補を上げると、
ハイドは… スルーしました。よっぽど、気に入らなかったのか、『ジョン』とか『パチ』、それに『ルー』悩んで悩んだあげく、次々に名前を呼んでみるも無視。
そして、
最後に『ハイド』と呼んだ瞬間、
グワァー!
黒く澄んだ瞳、見る角度によっては綺麗な赤色に見えるつぶらな瞳をぱちくりさせてダミ声で応えたハイドに… 嬉しくて抗議の声を無視して抱き上げたのは懐かしい思い出…。
だけど、その楽しい日々はそう続かなかった。
◇◇◇
そんなある日のことだった。
下の階から母の金切りの悲鳴が聞こえたと同時に、何やら酷くメイドや執事たちが慌ただしくしていました。見ると、赤い血の血痕らしきものが所々に付着していて、あの母上には珍しく発狂していました。
『悪魔がいた』と。
もしやと思い、近くにいたメイドに話しを聞くと、メイドは眉根を少し吊り上げて口にした。
黒い鴉がいた、と… そう口にしました。床や壁に付着した血痕に青ざめる。メイドや執事は気がついたら黒い鴉は消えていたという。屋敷の中を走り回った。あらゆるところを捜して… 名前を呼ぶも、
その声に応えることはありませんでした。
それから三日三晩、母上は寝込んだと言います。私にしたら、母上なんかよりハイドのほうが心配で溜まりませんでした。
大切な大切な大好きだった友人は結局、戻らなかった。
また、一人ぼっちになったことに少し寂しさを覚えると同時に… 自分の中でポッカリ穴が開いたような虚無感が生まれました。
また始まった、窮屈で退屈な日常… 過ぎていく時間。それに新しく加わったとすればそれは前には無かった虚無感に違いない。
部屋から出るのも億劫になって、次第に部屋に閉じこもるようになりました。だけど、もちろん咎める者はいない。
――‥ そして、あの日も
虚無感を抱えたまま、いつもと同じように椅子に腰をかけて窓際を見つめていた。
そこから見えるのは時おり、羽をバタつかせながら気持ち良さそうに空の彼方へ飛んでいく… 小鳥。自分の元からいなくなったハイドを思うと、少し切なくなる――。
これ以上、あの小鳥を見ていると悲しくなるから目を逸らした。過去から逃げるように… 目をそっと伏せたときでした。
彼が来たのは――‥。
ノックが聞こえ、入室の許可を出しました。けれど、あれ?と首を傾げた。この屋敷にいる人間は誰一人私に関心がないのに、この部屋でノックの音を聞いたのも、いつぶりでしょうか。
首を傾げつつも、入室の許可を出すと入って来たのは…
すらりとした長身を真っ暗な長衣もとい執事服に身を包み、首の付け根まである闇色の髪は無造作に切られていて、隙のない身の熟しがより洗練されて見える。瞳の色も同色で、それでいて、切れ長の目は時おり冷たさを宿していて、あのハイドを思わせるように見る角度によって、その瞳は綺麗な赤色でした。
肌は陶器のように白く艶めかしく… そこから大人の色香を感じさせなくもない。
そして、音もなく素早く参じた。
『お初目に掛かります。今よりセイ様にお仕えすることになりました執事のハイドと申します。今後、ご用がある際は私をお呼び下さい』
その同じ名前に、一瞬、ハイドが帰ってきたのかと思った。そして、思わず抱きついてしまいました。
ハッと我に返ってすぐに離れた。またメイドや他の者たちのように侮蔑の目を向けてくるのだろうか、と少し不安げに見上げると、
「えっ…」
そんな私を愛しむように、ほんの少し微笑んでいた。
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