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プロローグ
悪名高きハワード侯爵家の『黒薔薇の貴公子』
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◇◇◇
私の名前はセイ・ハワード。ハワード侯爵家の長男です。父はハワード侯爵家の現当主ですが、父に政治的発言権はほぼありません。
あるとすれば侯爵家という貴族の地位くらいです。なぜ発言権がないのかというと――‥
それは父上が… 政治に疎く、人望が無いから。
母上は前国王陛下の妹に当たるらしいですが、兄君であった前国王陛下とは昔から仲が悪かったとか。母上は昔、私にそう言いました。しかし、実際は贅沢三昧の暮らしぶりに、自分の思うようにならなければ周りに当たり散らし、気に入らない人間は事故や病と見せかけて排除。
時には拷問紛いなことも。
さらには自分が好意を寄せる者には王妹という権力を使って無理矢理に愛人にしたりと…。その人格は… 聡明で、歴代の王を抜いて初代の国王到来と言われる兄君であった前国王様の…
本当に妹君なのか、と言われるほど。とにかく性格が悪い。
その腐った性根に見限られ、しかし、外へ出せば国の恥。…いえ、もしかしたら、前 国王陛下は妹である母を諸国へ嫁がせたとき、何かあった際に外交問題に発展することを危惧したのかもしれない。
国外へ嫁がせるわけにもいかなく、敢えて政治に疎く人望もなく発言権のない地位だけの父の元に降嫁させたとか。
人の口には蓋が出来ない。二人の息子である私も二人の悪行に加担しているとかないとか。
もちろん、事実無根。
けれど、有りもしない事実無根の噂話のせいで、私は『悪辣令息』と囁かれています。
幼かった頃は
『ハワード侯爵家の ” 黒の貴公子 ” 』と。
けれど、体が大人に近づくに連れて、その美しい容姿とは裏腹に不用意に近寄れば薔薇のようにトゲが刺さる…と。そう揶揄して、
『ハワード侯爵家の黒薔薇の貴公子』
と、いつの間にか呼ばれるようになっていました。
私や母上達の目が無いところでメイド達がひそひそと私をそう呼んでいるのも知ってはいるけれど、全てにおいて無関心だった私にとってそんなこと、どうでもよかったので、放っていました。
自分の容姿がそれなりにいいのは知っています。その容姿の一つ、顎下くらいのところで無造作に切られた闇のような黒い髪の色のところから来ているのもあるのでしょうが、
私が飼っている真っ黒の鳥… 『死』を象徴とし、『魔の眷属』と昔からこの国で忌み嫌われる鴉という鳥を愛でているところから来ているのでしょう。
元よりこの国に存在しないこの鴉は…
その昔、王家より勇者召喚の儀が行われた際、異世界より召喚された勇者が持ち込んだ鳥でした。
本来ならば、勇者同様崇拝されるはずの異世界を渡りし鳥。しかし、その鴉は――‥ 実は魔族の眷属で、勇者の力を悪用しようとした魔族により遣わされた眷属の鳥で。
結局、神官が気付いたときには時すでに遅く、勇者は闇堕ちしたことで忌み嫌われた… 憐れな鳥。
まだ私が幼かった頃、薔薇の咲く庭園で一人、午後のティータイムをしていたところ、『ソレ』と出会いました。
その ” 憐れな鳥 ” が全身、傷だらけで死にかけていた。きっと、忌み嫌うこの街の人間にでもやられたのだろう…と、そう思うと、忌み嫌われているという部分が自分自身と似ているところに不思議と親近感が湧いたんです。
だから、ほんの気まぐれでした。
普段なら到底しないことを… してしまったのは。死にかけている鴉に治癒魔法をかけたところ、なぜか懐かれてしまいました。試しに撫でてみると… 気持ち良さそうに擦り寄る鴉に… 愛らしく思うのは必然です。
何処にいてもついてくる鴉に自然と笑みが生まれたのも… そう時間は掛かりませんでした。
どうせ外へ逃しても、また傷だらけになるかもしれない自分と似て似ぬ存在。
それならば、と…
私が飼っても構わないでしょう。元よりこのハワード侯爵家はいろんな噂が絶えません。寧ろ、悪い評判で塗り固められているくらいです。だから、また一つ、増えたところで既に地に堕ちているハワード侯爵家ならなんの問題もないだろうと解釈して、鴉を招き入れました。
そして、招いてから気付いた。
そういえば、父上や母上に報告していなかったことを。…けれど、別にいいだろうと勝手に解釈して部屋に招き入れました。
どうせ、父上や母上は私に関心が無いんです。言ったところで果たして耳に入るかどうか… 否、それ以前に知ったところで相槌さえ打たないだろうと思います。あの人たちはそういう人種です。――‥ かと言って、メイド達に伝えるのも色々と面倒です。それに、私が世話をすれば良いだけの話なんですから。
そう思うと、
この窮屈で退屈な日常が、少し変わるような気がした。
私の名前はセイ・ハワード。ハワード侯爵家の長男です。父はハワード侯爵家の現当主ですが、父に政治的発言権はほぼありません。
あるとすれば侯爵家という貴族の地位くらいです。なぜ発言権がないのかというと――‥
それは父上が… 政治に疎く、人望が無いから。
母上は前国王陛下の妹に当たるらしいですが、兄君であった前国王陛下とは昔から仲が悪かったとか。母上は昔、私にそう言いました。しかし、実際は贅沢三昧の暮らしぶりに、自分の思うようにならなければ周りに当たり散らし、気に入らない人間は事故や病と見せかけて排除。
時には拷問紛いなことも。
さらには自分が好意を寄せる者には王妹という権力を使って無理矢理に愛人にしたりと…。その人格は… 聡明で、歴代の王を抜いて初代の国王到来と言われる兄君であった前国王様の…
本当に妹君なのか、と言われるほど。とにかく性格が悪い。
その腐った性根に見限られ、しかし、外へ出せば国の恥。…いえ、もしかしたら、前 国王陛下は妹である母を諸国へ嫁がせたとき、何かあった際に外交問題に発展することを危惧したのかもしれない。
国外へ嫁がせるわけにもいかなく、敢えて政治に疎く人望もなく発言権のない地位だけの父の元に降嫁させたとか。
人の口には蓋が出来ない。二人の息子である私も二人の悪行に加担しているとかないとか。
もちろん、事実無根。
けれど、有りもしない事実無根の噂話のせいで、私は『悪辣令息』と囁かれています。
幼かった頃は
『ハワード侯爵家の ” 黒の貴公子 ” 』と。
けれど、体が大人に近づくに連れて、その美しい容姿とは裏腹に不用意に近寄れば薔薇のようにトゲが刺さる…と。そう揶揄して、
『ハワード侯爵家の黒薔薇の貴公子』
と、いつの間にか呼ばれるようになっていました。
私や母上達の目が無いところでメイド達がひそひそと私をそう呼んでいるのも知ってはいるけれど、全てにおいて無関心だった私にとってそんなこと、どうでもよかったので、放っていました。
自分の容姿がそれなりにいいのは知っています。その容姿の一つ、顎下くらいのところで無造作に切られた闇のような黒い髪の色のところから来ているのもあるのでしょうが、
私が飼っている真っ黒の鳥… 『死』を象徴とし、『魔の眷属』と昔からこの国で忌み嫌われる鴉という鳥を愛でているところから来ているのでしょう。
元よりこの国に存在しないこの鴉は…
その昔、王家より勇者召喚の儀が行われた際、異世界より召喚された勇者が持ち込んだ鳥でした。
本来ならば、勇者同様崇拝されるはずの異世界を渡りし鳥。しかし、その鴉は――‥ 実は魔族の眷属で、勇者の力を悪用しようとした魔族により遣わされた眷属の鳥で。
結局、神官が気付いたときには時すでに遅く、勇者は闇堕ちしたことで忌み嫌われた… 憐れな鳥。
まだ私が幼かった頃、薔薇の咲く庭園で一人、午後のティータイムをしていたところ、『ソレ』と出会いました。
その ” 憐れな鳥 ” が全身、傷だらけで死にかけていた。きっと、忌み嫌うこの街の人間にでもやられたのだろう…と、そう思うと、忌み嫌われているという部分が自分自身と似ているところに不思議と親近感が湧いたんです。
だから、ほんの気まぐれでした。
普段なら到底しないことを… してしまったのは。死にかけている鴉に治癒魔法をかけたところ、なぜか懐かれてしまいました。試しに撫でてみると… 気持ち良さそうに擦り寄る鴉に… 愛らしく思うのは必然です。
何処にいてもついてくる鴉に自然と笑みが生まれたのも… そう時間は掛かりませんでした。
どうせ外へ逃しても、また傷だらけになるかもしれない自分と似て似ぬ存在。
それならば、と…
私が飼っても構わないでしょう。元よりこのハワード侯爵家はいろんな噂が絶えません。寧ろ、悪い評判で塗り固められているくらいです。だから、また一つ、増えたところで既に地に堕ちているハワード侯爵家ならなんの問題もないだろうと解釈して、鴉を招き入れました。
そして、招いてから気付いた。
そういえば、父上や母上に報告していなかったことを。…けれど、別にいいだろうと勝手に解釈して部屋に招き入れました。
どうせ、父上や母上は私に関心が無いんです。言ったところで果たして耳に入るかどうか… 否、それ以前に知ったところで相槌さえ打たないだろうと思います。あの人たちはそういう人種です。――‥ かと言って、メイド達に伝えるのも色々と面倒です。それに、私が世話をすれば良いだけの話なんですから。
そう思うと、
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