弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです

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プロローグ

『弟のカミングアウト』

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「え、えっ… な、なに!?何が起きたの!??」

ハッと我に返った弟の一声はそれで、また一口紅茶を口に含むと、コトリ、とテーブルにティーカップを置く。

「何って…」

そして私はというと、

そんな弟の驚きぶりに首を軽く傾げる。

「何って、可笑しなことを言いますね…。魔法を使ったに決まってるじゃないですか。使ったのは水の魔法で初級のものを応用した形ですが」

そんなに驚くこともないと思うのですが、と口にすれば弟の目が見る見る輝きが増した気がした。

「ま… 魔法!?魔法って言った!?」

「えぇ、だから最初からそう言っているではありませんか」

何度も同じことを言わせないで下さい、と冷たく言ったのに弟の目の輝きは増すばかりで…

ズサーッ!

  ビクッ!?

「な、なんですかいきなり…!?」

と、思えばいきなり勢いつけて土下座する弟に先ほどから驚きっぱなしです。

「黒薔薇の兄ちゃん!!!」

…まったく、不快です。

「誰が黒薔薇ですか、誰が!ハァ、仰々しい呼び方も不快になるだけなので、普通に兄さんと呼んでもらって構いませんから、その『黒薔薇の兄ちゃん』はやめて下さい」

呼び方にしても品がありませんと口にすれば、そういうところはゲームと変わらないと口にする弟。

「だから、そのゲームとは何ですか?聞きなれない単語なんですが」

渋って、なかなか教えようとしない弟に痺れを切らした私は弟が食いついた『魔法』を条件に聞き出すことに成功した。弟に『ズルい』と言われましたが、それに食いつく貴方はどうなんですかと言い返せば、弟は『だって…』と不貞腐れる。面倒ですね、まったく。

「……この世界が元々はゲームの世界ですって?」

聞けば弟は、この世界が元々はゲームという仮想世界で、人格が変わってしまった弟がいたという世界には魔法は存在せず、代わりに科学や医学が発達した世界だという。

「え、ちょっと待って下さい。やはり、精神疾『ちょっw 一旦、その話から離れようや、お兄サマww だから、正気だって!」

もうわかった!真面目に話すから!そう言いだした弟は溜め息つくと、カミングアウトした。

「俺、いわゆる腐男子ってヤツなんだよね!」

・・・ふ?

漢字という文字を紙に書き出す弟は、クサった男の子と書いて腐男子(ふだんし)って読むんだけど… という弟に私はなるほど、と頷く。

「つまり、あなたは… 腐ってる?人間ということになるんですよね?ハッ、まさか!意味不明な言動も頭の中が腐ってるから…『いや、ちがうから!』

つか、それもうゾンビじゃん!と突っ込む弟に、違うのですか?と、ごく真面目に聞けば断じて違う!!と返ってくる。


「腐男子っていうのは… 同性同士の恋愛を見るのが好きな男のことを言うんだ。因みに、女子は腐女子。あくまで自分じゃなくて、他人の恋愛模様を見て楽しむという…って、ちょっと待って!なんで、そんなあからさまに下がるの!?」

「すみません… 少し、自分の身の危険を感じまして」

ああ、俺か… と呟いた後に、Σって、俺!?ちがうよ!?俺の話、聞いてた!??と口にする5歳の自分より遥かに下の弟に半眼の目を向ける。半径2mは近づかないで下さいと冷たく突き放す。

「だから、いやまぁ確かにそういう系の乙女ゲームだったけど… って睨まないで!!黒薔… 失礼シマシタ。ゲームでは兄さん、そういう相手というかそういう展開はなかったよ?どちらかというと、異世界から召喚された勇者と、それを守る王子や騎士たちとの恋愛模様の… 乙女ゲームだったから、兄さんをそういう目で見たことはないよ!!(嘘だけどっ)だから、俺を信じて!」

俺を信じて!と目を潤ませる弟。きっと傍から見れば健気な5歳児にしか見えないでしょう。キラキラと光る瞳。

しかし、私には澱み濁った瞳にしか見えないのですが… まあ、いいでしょう。私は弟と再び向き直ると、冗談ですと短く言葉にして、

そして、弟と今後のことを話し合うことにした――。
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