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プロローグ
それは…興味深い話ですね
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それなりに人柄も含めて信頼していた部下たちのあまりの言葉に動揺した琥珀は気がつくと口を開いていた
「………………それが何だと言うんです?」
それは自分でも驚くほど、思ったより低く、冷めきった声音だった。
「……………私が無表情で誰かに迷惑をかけましたか?あなた方に迷惑をかけましたか?仕事にだって支障は出ていません
寧ろ、
仕事に支障をきたしているのはあなた達でしょう」
「んなっ!?な、なんでそんなことを言うんだよ!!エイ達はお前のことを心配してるんだろ!!!?それを… そんなふうに言うなんてお前、最低だ!!
エイ達に謝れよ!そしたら、お前のことを許してやる!」
「勇者様…っ!なんて、優しいんでしょうか。それに比べ琥珀様は…」
勇者の言葉に震えるエイは琥珀に蔑みの目を向ける…
「なぜ、そんなことを言うかって……?」
眉根を寄せる
「……これはあなた方の管轄でしょう?エイ、ライ。あなた方の管轄区域の死者の魂の帳簿が全く合っていませんが、これは一体どういうことです?」
「……え!?そんなはずは…ッ」
「魂の帳簿が合わないなど… あってはならないこと。誤差が生じる年号を遡れば軽く千年も誤差が続いていたことになります。
それを気付くどころか、仕事怠慢にも程があります。……違いますか?」
「そ、それは‥っ!」
「なんでそんなことを言うんだよ!!!!エイとライはきちんと仕事してるだろ!?寧ろ、してないのは琥珀だろ!!」
「……何ですって?」
ピクリ、と眉が吊り上がる
「そ、そうですよ!!!私たちはちゃんと仕事をしています!寧ろ、していないのはいつも私たちに指示だけしてる琥珀様のほうじゃないですか!」
「確かに。アンタ、いつもそうだよな!自分は閻魔大王様の側近で第一補佐官を勤めてるお偉いさんだから下の者に指図するだけで自分は高見の見物だもんな」
………… ちょっと待って下さい。その言い方ではまるで私は下の者に指示だけして私自身は仕事していないと聞こえるんですが?
「あ『…何をされているんですか?』
口を開こうとしたそのとき、第三者の声が後ろから聞こえた。
「………………蓮見様?」
蓮見様、そう琥珀に呼ばれた少し高めの後頭部に一つの団子くくり、腰あたりまで伸ばされた艶やかな藍色の髪の青年は琥珀に魅惑的な笑みを向けた‥。
「何やら楽しそうな声が聞こえてきたものですから… ふふっ、私も交ぜてもらおうと思いまして」
袖を口許に当て、俄に笑う蓮見に一同は困惑を浮かべる。それは琥珀も同じだった。
「こ…『あ?あ゙ー… いたいた!おーい!琥珀ーっ!』
困惑した琥珀に蓮見が口を開きかけたとき、突然の乱入者によってそれは遮られた。
「……… 椿?」
その突然の来訪者に、
蓮見はその口許に笑みを浮かべつつ、目を細める…
「ったく!お前、あっちこち移動しすぎだっつーの!この馬鹿!捜すほうの身も考えろよ?………ったく、お前と一部の奴等くらいだぜ?閻魔大王弟の俺を走らせるなんて……って、聞いてんのか!?」
「あぁはいはい。聞いてますよ」
「おまっ…! はぁ… もういい。お前が前に言ってただろ?少し不審に思う点があるって。その件を少し探ってみたんだ。そしたら、面白いものを見つけたぜ?」
楽しそうに口角を突き上げる椿の言葉に、片方の眉がピクリ、と吊り上がる。
「………それは、また興味深い話ですね」
「だろ?」
くるりと振り返る
「え…?」
この場を立ち退くので、一言断りを入れようと振り返ったときだ。
儚げで美貌を兼ね添えた容姿で、憎悪という言葉とはかけ離れた存在のように思う彼が‥
「蓮見、さま……?」
「おや、どうしましたか?琥珀。椿に呼ばれているのでしょう?此処は私に任せて、お前は行きなさい」
――… ほんの一瞬、憎しみ- 憎悪を込めた目で私を睨んでいた。
けれど、気のせいだと思った。見間違いだと思った。
だから、気付かなかった。
二人の‥
『残念ですね、琥珀とはもう少しお話をしていたかったのですが…』
と、悲しげな表情の蓮見様に、
『毒花に触ると痛い目にあうからな。琥珀は大事なダチだから毒花の毒牙にかからせない』
―― 意味深な会話に。
椿がとびっきりの笑顔で言ったことなど、部下の仕事怠慢と不正をどう片付けるかで頭がいっぱいだった私は全く気付かなかった‥。
「………………それが何だと言うんです?」
それは自分でも驚くほど、思ったより低く、冷めきった声音だった。
「……………私が無表情で誰かに迷惑をかけましたか?あなた方に迷惑をかけましたか?仕事にだって支障は出ていません
寧ろ、
仕事に支障をきたしているのはあなた達でしょう」
「んなっ!?な、なんでそんなことを言うんだよ!!エイ達はお前のことを心配してるんだろ!!!?それを… そんなふうに言うなんてお前、最低だ!!
エイ達に謝れよ!そしたら、お前のことを許してやる!」
「勇者様…っ!なんて、優しいんでしょうか。それに比べ琥珀様は…」
勇者の言葉に震えるエイは琥珀に蔑みの目を向ける…
「なぜ、そんなことを言うかって……?」
眉根を寄せる
「……これはあなた方の管轄でしょう?エイ、ライ。あなた方の管轄区域の死者の魂の帳簿が全く合っていませんが、これは一体どういうことです?」
「……え!?そんなはずは…ッ」
「魂の帳簿が合わないなど… あってはならないこと。誤差が生じる年号を遡れば軽く千年も誤差が続いていたことになります。
それを気付くどころか、仕事怠慢にも程があります。……違いますか?」
「そ、それは‥っ!」
「なんでそんなことを言うんだよ!!!!エイとライはきちんと仕事してるだろ!?寧ろ、してないのは琥珀だろ!!」
「……何ですって?」
ピクリ、と眉が吊り上がる
「そ、そうですよ!!!私たちはちゃんと仕事をしています!寧ろ、していないのはいつも私たちに指示だけしてる琥珀様のほうじゃないですか!」
「確かに。アンタ、いつもそうだよな!自分は閻魔大王様の側近で第一補佐官を勤めてるお偉いさんだから下の者に指図するだけで自分は高見の見物だもんな」
………… ちょっと待って下さい。その言い方ではまるで私は下の者に指示だけして私自身は仕事していないと聞こえるんですが?
「あ『…何をされているんですか?』
口を開こうとしたそのとき、第三者の声が後ろから聞こえた。
「………………蓮見様?」
蓮見様、そう琥珀に呼ばれた少し高めの後頭部に一つの団子くくり、腰あたりまで伸ばされた艶やかな藍色の髪の青年は琥珀に魅惑的な笑みを向けた‥。
「何やら楽しそうな声が聞こえてきたものですから… ふふっ、私も交ぜてもらおうと思いまして」
袖を口許に当て、俄に笑う蓮見に一同は困惑を浮かべる。それは琥珀も同じだった。
「こ…『あ?あ゙ー… いたいた!おーい!琥珀ーっ!』
困惑した琥珀に蓮見が口を開きかけたとき、突然の乱入者によってそれは遮られた。
「……… 椿?」
その突然の来訪者に、
蓮見はその口許に笑みを浮かべつつ、目を細める…
「ったく!お前、あっちこち移動しすぎだっつーの!この馬鹿!捜すほうの身も考えろよ?………ったく、お前と一部の奴等くらいだぜ?閻魔大王弟の俺を走らせるなんて……って、聞いてんのか!?」
「あぁはいはい。聞いてますよ」
「おまっ…! はぁ… もういい。お前が前に言ってただろ?少し不審に思う点があるって。その件を少し探ってみたんだ。そしたら、面白いものを見つけたぜ?」
楽しそうに口角を突き上げる椿の言葉に、片方の眉がピクリ、と吊り上がる。
「………それは、また興味深い話ですね」
「だろ?」
くるりと振り返る
「え…?」
この場を立ち退くので、一言断りを入れようと振り返ったときだ。
儚げで美貌を兼ね添えた容姿で、憎悪という言葉とはかけ離れた存在のように思う彼が‥
「蓮見、さま……?」
「おや、どうしましたか?琥珀。椿に呼ばれているのでしょう?此処は私に任せて、お前は行きなさい」
――… ほんの一瞬、憎しみ- 憎悪を込めた目で私を睨んでいた。
けれど、気のせいだと思った。見間違いだと思った。
だから、気付かなかった。
二人の‥
『残念ですね、琥珀とはもう少しお話をしていたかったのですが…』
と、悲しげな表情の蓮見様に、
『毒花に触ると痛い目にあうからな。琥珀は大事なダチだから毒花の毒牙にかからせない』
―― 意味深な会話に。
椿がとびっきりの笑顔で言ったことなど、部下の仕事怠慢と不正をどう片付けるかで頭がいっぱいだった私は全く気付かなかった‥。
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