― 閻魔庁 琥珀の備忘録 ―

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プロローグ

『垣間見る過去と… 忘れた記憶』

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――…

「…椿、先ほど毒花云々なにか言っていたようですが何のことですか?」

「あ?いや、お前は知らなくていーの!」

「はぁ、無理には聞きませんが…… 
蓮見様は宋帝王ソウテイオウの補佐官なんですよ。言葉にはもう少し…」

「あ?あぁ、宋帝王の、な?わーかってるって!十王の中の三十七日目 邪淫の業について取り調べる裁判官… まぁ、宋帝王の補佐官ってのは、毒花には打ってつけなんだろうがな」

「………はぁ」

言っても無駄だと感じた琥珀は早々に諦めた。

「……ところで椿」
「何だ?」

「勇者様が今日1日、大王の代役だなんて私は聞いていませんが?」

どういうことですか、と少し責めるような口調になってしまったことに気付き、慌てて言い直す

「…いえ、すみません。忘れて下さい」

無表情、そう周囲からよく言われるがなんてことはない。

「気にすんな。俺も別に気にしてねぇーし」

琥珀は生前、人間だった。その環境もあり最初は人形のように、ただ与えられた仕事だけを淡々と熟していく‥
目の前で消える命にも何ら感情さえ浮かばなかった。物心つく前からずっとただの人形のように扱われ、幼すぎる年齢。そして強すぎる力は周りから畏怖の対象となる。。

――… 琥珀は中でも仕事が完璧で、どんな時も躊躇を感じさせなかった。どんな時も‥ 表情を崩さなかった。

それがさらに周りの人間の恐怖心を煽った。


  だから―

琥珀はある晩、
村長であり、自分の父親でもある男に

『"    "、お前は幼すぎる年に合わず、泣き言さえ言ったことがない。それは我々の仕事には素晴らしいことだ。

  ……だが、

感情さえ知らないお前のその強すぎる力に村人たちは怯えている… いつか、お前が村に楯突いたとき、殺されるのではないかと…』

『お前は強すぎたんだ』


強すぎた、その一言で


―― 殺された。

……まぁ、死んだ後の制約で本人は覚えてねぇんだろうが。
だから、あいつの罪は周りに比べて、より複雑だった。まだ七歳にも満たない年齢だったしなー。最近はようやく表情とか感情もわかるようになってきたってのに、

勇者、とかマジで面倒くせぇ匂いがプンプンすんだけど?

「まぁ、ただの気まぐれだろ。兄貴の気まぐれだなんて今に始まったことじゃねーし。ただ、兄貴の代役っつーのが気になるけどな」

「……と、いうと?」

「兄貴の代役はお前だけで十分だろ。……お前、まさかもう1つの肩書き忘れちまったのかよ?;」

呆れた目を向けてくる椿に何度か瞬きする。

「‥‥‥‥あ」

「はぁーっ、お前、やっぱちょっと抜けてるよなー。まぁ、そこがまたいいんだけど。『閻魔大王代行』兄貴がお前だけに与えた特権なんだぜ?
おいそれと特権ばっかり作ったら、そもそも特権じゃなくなるだろうが。

………それに安心しろよ。

兄貴はあの勇者に堕ちちゃいねぇし、何より、お前を大事にしてるあの兄貴がお前と同じ特権を与えるわけがねぇだろ」

「……大事にされている?何かの誤解では?」

大事にされるほど、関わってもいない話もあまりしていない… そんな自分が?と思わず耳を疑う

「ま、お前がそう思うのも仕方ねぇよ。
……けどな、気付く奴は気付くぜ?現に、さっきだって嫉妬されてただろ?」

「……嫉妬?え、この平凡の私に嫉妬?いつですか」

「……………マジかよ」

そう漏らす椿の目が少し呆れを含んでいる

「いや、何も… ない!とりあえず、この話は終わり!……はぁ、で、例の件に話を戻すが」

そこで椿はニヤリと笑みを浮かべる

「―― お前の読み、ビンゴだったぜ?」

「ほら、アイツ」

椿に言われて視線を向けると、そこには‥

『うっはw トリップとか転生とか一度は体験してみたいとか思ってた数分前の俺を殴りたい!!!
まさかの地獄とかww ホント、笑えねぇんだけどッ!!!』

頭を抱えて叫び声をあげている人間がいた。

「あ、椿?っつーことは、その連れてきた人が琥珀様?」

「……まさか、彼は」

「あぁ、疑惑が確証になった。こいつは隼人ハヤト、例の件の……… ま、被害者だな」

「彼が……」

隼人、という名前の少年に目を移すと、何やら震えている‥ 。そして、興奮しきった表情で叫んだ。

「平凡ktktr!!!ナイス平凡顔!!琥珀様は未来の総受けっ子なんですねww うっはwやばい悶える///しかも閻魔大王の側近とかキタキタキターーッ!!もはや、非凡目指してるとしか思えないんですだけど!!!」

「…………」

「…………」

「平凡、平凡と… 彼は、私に喧嘩を売っているのでしょうか」

「まぁ待てって!!落ち着けって!アイツは被害者なんだから、ちょっとは大目に見てやれって!;

  ったく。隼人、お前も…

お前の状況にはこっちにも非はあるが琥珀をあまり弄るなよ?俺がとばっちり受けるんだからな」

椿の諌める声に、小さく溜め息つく琥珀と一人妄想から帰ってきた隼人、今後の先行く不安に椿は知らず知らず溜め息を溢していた…。
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