― 閻魔庁 琥珀の備忘録 ―

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プロローグ

『地獄の三途の川』

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「隼人、念のためにこれを…」

「なにこれ‥?豆??」

緑色の小さな丸い豆のようなものを渡された隼人は、指でつまみ上げ、しげしげと見つめた後、それを口に入れた。

「いえ、それは‥ 三途の川の水を濃縮させたものです」

「お゙ぉェーッ!!!」

琥珀の口から出たまさかの事実に嗚咽する隼人に椿は同情の目を向ける

「飲んじゃったよ!?呑み込んじゃったんだけど!!?どーしてくれんの!?」


喉元を押さえながら、隼人は青ざめた表情でパニックも同然。琥珀に詰め寄るが、ものともしない琥珀は隼人の苦情をさらっと聞き流す‥

「はぁーっ、別に飲んだところで問題ありませんよ。……わかったら、少し離れて下さい。顔が近いです」

少し鬱陶しそうに軽くあしらわれる隼人を不憫に思った椿が横から口を出してきた。


「琥珀も、言葉が少し足りない。はぁ、あのな隼人。三途の川の水は確かに生理的に受け付けねぇかもしれねぇが、
   三途の川の水ほど、地獄の濃度が高く、さらにそのエネルギーを手っ取り早く取れるものはない。あいつが呪と掛け合わせることで、より、お前のリスクを下げたんだろ」


途中、琥珀を一瞥し、隼人に話しながら肩を竦める。

「そ、っか‥。ごめん。そうだよね… 二人とも俺の為に色々考えてくれてるのに… 」


そう口にする隼人に

「別に問題ありません。慣れていますから」


「え?」

「あ゙ー… 気にするな。こいつの場合、無表情が多いからよく周りから誤解されるんだよ。……ったく、琥珀もたまには愛想よくしろよ?」

「…………笑え、と言われて笑えませんよ。大体、毎日毎日休む暇もなく、仕事漬けのハードな毎日を送る私にそれを言いますか」


「ぐっ!」

(はぁ… 。さっきから溜め息ばかりが出てしまいます)

「とりあえず、椿は隼人に地獄を一通り案内して下さい。彼が死者でないことを誤魔化せても、地獄の住人が地獄の各、名称を知らなければ怪しまれます」


椿に隼人を押し付け、踵を反す琥珀に椿が呼び止める。

「待てって!お前は何処に行くんだよ?」


俺にだけ面倒を押し付けんなよ、と琥珀に文句を言うが、

「………… 少し、気になることがあるので、私は今からそちらに向かいます。なので、隼人の案内はあなたに任せます」


もういいですか、と再び背を向けようとした琥珀を椿が待ったをかけた。

「…………あなたは、先ほどから何なんですか」


何度も呼び止められ、いい加減、うんざりしてきたのか琥珀の声のトーンが下がる‥

「怒るなって。ってか、気になることってなんだ?」


「確証がないので、まだ何も言えません。…ただの憶測ですよ」

「いやいやいや、お前のその憶測の一つが実際に起きてたんだろうが。お前がいう新たな憶測が実際にまた起きてたらって、こっちは警戒するだろ」


腕を組んで呆れた目を向ける椿に琥珀は小さく、そうですか‥ と答えた。
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