― 閻魔庁 琥珀の備忘録 ―

プロローグ

戦うときは全力で！

― 椿side -

「―― で、閻魔大王は審判を下し、来世を言い渡す‥ ここまでは理解できたか？」

「う、ん‥ たぶん; 一人の人間の死後、こんなにも審判を通過しないといけないなんて… っていうか、十王だっけ？王さま多すぎるよ」


ちーぃっと詰め込み過ぎたか、うんうん唸る隼人に苦笑いする。

「ちっと違うな。厳密に言やぁ、十王はあくまで死後、罪人らの生前の罪を裁く裁判官だ。……おいおい、大丈夫か？」

頭を抱え、混乱がった頭を整理しようとまるでお経のようにブツブツ呟く隼人に肩を竦める。


「ったく、仕方ねぇな‥ 。いいか、おさらいすんぞ？まず、死者は死後、案内役の死神に黄泉に連れて行かれ、そこで天国か地獄かに行き先を振り分けられる… ここまではいいな？」

「う､ん‥」

「地獄行きになった者は次に三途の川を渡るわけだが、緩やかな浅瀬から激流まであって、渡る場所は生前の犯した罪の深さで決まる」


「うん…」

「三途の川を渡りきると、十王による審査が始まる。死後７日目にまず第一の王『秦広王(ｼﾝｺｳｵｳ)』が生前の殺生、虫や動物に無駄な殺生をしなかったかを調べる。」


「……… 殺生… 秦広王…」

必死に復唱し頭に叩き込もうとする隼人に苦笑が浮かぶ。が、説明を続けた。

「それから――『待ちなさい！！！』…何だ？」


後ろから聞こえた聞き覚えのある声に振り返ると‥

「ちょっ‥」

鬼と、

自分目掛けて飛んでくる大きな炎の球体が目の前に迫っていた‥。


ドンッ！

  「ぅわっ!!」


咄嗟に椿は隼人を突き飛ばし、慌てて印を組み術を放つ。双方の巨大な力はぶつかり、相殺し砕け散った‥


「――っぶな！！！お前はもうちっと周りに気を配れ！！俺らを殺す気か!?」

引き攣った顔で怒りをぶつける先にいたのは…


「そんな簡単にくたばる貴方ではないでしょう？文句なら後でいくらでも聞きますから… それより今はあの鬼を捕らえることが――」

スッと目を細め、一言二言呟き中指と人指し指を２本揃えて突き出す


「――優先でしょう？」


そう口にし、放たれた術はカッ!!と眩い光を放った。

 それと同時に、


新たに印を組み、鬼に術を放つ


  ズドォォォオン！！！


「「…………」」

地面は抉り取られ、木々は薙ぎ倒され、元々荒れていた地がさらに荒れた。軽く目の前の地形が呆気なく変わったこの光景に‥


椿と隼人は固まる。

椿は表情が引き攣り、隼人は青ざめている…


  しかし、

瞬発力の高いだけあり、鬼も早々に捕まらず、琥珀はさらに術を放とうと印を構えた。…が、椿が慌ててそれを止めた。