― 閻魔庁 琥珀の備忘録 ―

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プロローグ

も、もしかして… え、閻魔大王さま!?

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「な、なにその凄い桁の数…」

その数に顔が引き攣る。


「みんな3日待たず辞めてって、589代目で終止符を打ったのが琥珀だ。…ったく、どうすんだよ。あいつ、本気で帰って来ねぇぞ?」


「ちょっと待って。琥珀の名前ってもしかして…」

まさか、と思い当たった俺に椿はにやりと笑う。


「……なんだ気づいたか。

そうだ。琥珀という名前は閻魔大王があいつに付けた新たな名前だ。
生前の名前を使うわけにはいかない。だからと言って、名前は盟約の証となる。…だからこそ、その抜け道を知られたくはなかったんだけどなー…  なにせ、ようやく長く続けてくれる優秀な子が手に入ったと思ったのに。


…怒りたくもなるでしょ?」


ん?あれ……?途中から椿の言葉に違和感を感じた。それに声も何だか少し大人びているような…

あれ…?あれれ!?

どういうこと?勇者がなぜかイビキをかいて地面に眠り込んでいる。取り巻きになっていたエイとかライとか言うヤツはガタガタ震えて… 青ざめた顔で椿を凝視している。


「――‥ さってと、僕的には悪い子にはお仕置きをしたいところなんだけど」

ぼ、僕!?


椿ってばどうしたんだろ!?今まで一人称は俺だったはずなのに。いや、それもだけど、エイ達の様子もおかしい。青色を通り越して土気色の顔でガタガタ震える体で互いに抱き合っている様子はまるで恐慌状態に陥っているようで…。

「そんな時間さえ使うのが惜しい。僕に、もっと時間があれば直々に調教してあげるのに」


という椿を凝視する。

え゙、だれ、この人!?


「まぁ、いいや。……君達が今までやったことを今回だけ許してあげる」

「ほ、本当ですか!?」


「ただし、

あの子を無事に連れ戻すことが出来たらね」


「「「え゙…っ」」」

「君達がしでかしたことなんだから、落とし前は自分達でつけないといけないよね?
……まさか、ここまで来て僕に後始末をつけさせる気?」


凄みの利いた声にびくりとする。

「本当は僕が直接出向いたほうが早く収拾つくのだろうけど、…あいにく、仕事から抜け出せるなら椿という式を使っていない。もう少し、見守りたかったけど、君達のせいで明かすことになってしまったけど、

まぁいいや。そういうわけだから、あの子を早急に連れ戻して。……じゃないと、僕が過労で倒れる」


と言った椿に、

もしかして… 閻魔大王!? それならエイ達のあの震えように納得いった。


「え、閻魔大王さま!?」

引き攣った表情で椿に声をかける隼人は動揺のあまり声が裏返る…

「くすっ、そんなに緊張しなくていいよ。閻魔大王をやっていると、中々、下の者たちの本質が見えなくてね、
それで ” 椿 ” という式を使ったんだ。もちろん式にも人格を与えているから普段は椿なんだけど、椿が状況を考えて判断を委ねるとした時には術で私の意思が反映するようにしているんだよ。

……それにしても、

面倒なことになっちゃったねぇ色々と」


僕もいっそのこと辞めようかなと口にする椿もとい閻魔大王さまにエイやライたちが血相を変えてひたすら謝罪していた。

「まぁ、あの子の性格を考えると何処に行ったかは大体、検討つくけどねぇ…」

「ほ、本当ですか!?」

「確証はないけど。……性格とはすぐには変えれないものだよ。長期休暇、というのも… それも兼ねて恐らく、自ら ” 現場 ” に行ったんじゃないかなー?

仕事に生真面目な彼、だからねぇ。君たちが使えないとなると、あの子が考えそうなことだよ」


薄っすら笑みを浮かべる椿もとい閻魔大王にエイたちがさらに肩をビクつかせる。

「……それにしても、よくこんな状況で呑気に寝てられるな」

震えるエイたちを他所に呑気に眠りこける自称勇者に呆れていると、隣からくすっと笑う声が聞こえた

「自称勇者、というわりには…  呆気ないよねぇ彼…」

「へ!?」

「少し込み入った話をするからと思って彼には少し眠ってもらったんだけど。あまりにすんなり術にかかるから僕が驚いたよ」

「…………」

ヒクッ、と口角が引き攣る。 

「――‥ っと!ちょっと、こっちで立て込んでるみたいだから僕はそろそろ戻るけど、後のことは椿と頼んだよ?……君たちもわかってるよね?」

そう言ってちらりとエイたちを一瞥する閻魔大王に、


「「「は、はぃ!」」」

青ざめたまま返事をする。


「そう、じゃあ失礼するね…」

目を閉じた椿からフッと力が抜けると、目を開けた椿は…


「ったく、面倒ばかり押し付けやがって」

あぁ良かった!元の椿に戻ってホッとした。


――――――‥
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