17 / 41
プロローグ
少しくらいなら… 大丈夫、ですよね?
しおりを挟む
――――――‥
――‥
「…さてと、ここまで来れば大丈夫でしょう」
その頃、琥珀はというと、輪廻の川の畔に立っていた。
「あそこでは邪魔をされるでしょうから、少し離れた此処なら… 私があの鬼を追って輪廻に飛び込んだことはバレないでしょう」
そう、なにしろ輪廻といっても、 ” 川 ” ですからね、もちろん流れてますし繋がっているんですよ。だから別にあそこで飛び込まなくても、此処からでも入れるんです。
……あのときの気配は消えていないのでまだ追えるはずです。
先ほど、鬼が持っていた亡者の思い出のモノに対する隼人の意味ありげな視線が些か気になるところですが、
「ま、大丈夫でしょう…
しかし、
やはり地獄界以外の世界では… もふもふした生き物がいるのでしょうか?」
死後の世界である地獄界は罪を背負う者が堕ちる場所。当然、そこに温かみはない。琥珀は巷に聞くもふもふした動物に興味があるものの、今まで閻魔大王第一補佐官という肩書き故に、そういったものに触れる機会がなかった。否、休み返上の忙しさで当然触れる機会もない。毎日見るのは裁きを待つ者ばかり、その上、死後の世界故、もちろん全員死者である。
だから、琥珀は生きている温かみのある生き物との触れ合いに少しばかり夢を見ていた。
しかし、ずっと胸の内に秘めていた為、閻魔大王さえ知らなかった。故に、第一の誤算はそこかもしれない。
こてり、と首を傾げる…
「Σハッ!!!私としたことが…!」
一瞬、もふもふと出会えるかもしれないという誘惑に駆られそうになった琥珀は頭をブンブン振る
「…だ、だめです!そう、これは… 仕事なんですから!部下の後始末の為なんです。私まで… 一緒に考えてどうするんですか」
で、でも…!
「仕事も兼ねて、なら… 大丈夫ですよね?今までの休暇も兼ねて少しくらいなら…」
もし、この琥珀の言葉を椿が聞いていたのならきっと頭を抱えていただろう。
けれど、良いのか悪いのか…
このとき、
琥珀以外、周りには誰もいなかった。
「それに、私がいなくても…」
無意識に出た言葉は少し寂しささえも感じて――‥ けれども、琥珀は後ろを一度として振り返ることなく、意を決すると、鬼が逃げたであろう此処とは異なる世界に繋がった輪廻の川に…
―― ドボンッ!
飛び込んだ。
しかし、それを…
「あーーっ!待てよ!!琥珀!」
自称勇者が見ていて、
琥珀の後を追って飛び込んだのを、もちろん先に飛び込んだ琥珀が知るはずもなかった。
――‥
「…さてと、ここまで来れば大丈夫でしょう」
その頃、琥珀はというと、輪廻の川の畔に立っていた。
「あそこでは邪魔をされるでしょうから、少し離れた此処なら… 私があの鬼を追って輪廻に飛び込んだことはバレないでしょう」
そう、なにしろ輪廻といっても、 ” 川 ” ですからね、もちろん流れてますし繋がっているんですよ。だから別にあそこで飛び込まなくても、此処からでも入れるんです。
……あのときの気配は消えていないのでまだ追えるはずです。
先ほど、鬼が持っていた亡者の思い出のモノに対する隼人の意味ありげな視線が些か気になるところですが、
「ま、大丈夫でしょう…
しかし、
やはり地獄界以外の世界では… もふもふした生き物がいるのでしょうか?」
死後の世界である地獄界は罪を背負う者が堕ちる場所。当然、そこに温かみはない。琥珀は巷に聞くもふもふした動物に興味があるものの、今まで閻魔大王第一補佐官という肩書き故に、そういったものに触れる機会がなかった。否、休み返上の忙しさで当然触れる機会もない。毎日見るのは裁きを待つ者ばかり、その上、死後の世界故、もちろん全員死者である。
だから、琥珀は生きている温かみのある生き物との触れ合いに少しばかり夢を見ていた。
しかし、ずっと胸の内に秘めていた為、閻魔大王さえ知らなかった。故に、第一の誤算はそこかもしれない。
こてり、と首を傾げる…
「Σハッ!!!私としたことが…!」
一瞬、もふもふと出会えるかもしれないという誘惑に駆られそうになった琥珀は頭をブンブン振る
「…だ、だめです!そう、これは… 仕事なんですから!部下の後始末の為なんです。私まで… 一緒に考えてどうするんですか」
で、でも…!
「仕事も兼ねて、なら… 大丈夫ですよね?今までの休暇も兼ねて少しくらいなら…」
もし、この琥珀の言葉を椿が聞いていたのならきっと頭を抱えていただろう。
けれど、良いのか悪いのか…
このとき、
琥珀以外、周りには誰もいなかった。
「それに、私がいなくても…」
無意識に出た言葉は少し寂しささえも感じて――‥ けれども、琥珀は後ろを一度として振り返ることなく、意を決すると、鬼が逃げたであろう此処とは異なる世界に繋がった輪廻の川に…
―― ドボンッ!
飛び込んだ。
しかし、それを…
「あーーっ!待てよ!!琥珀!」
自称勇者が見ていて、
琥珀の後を追って飛び込んだのを、もちろん先に飛び込んだ琥珀が知るはずもなかった。
11
あなたにおすすめの小説
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
BLゲームの脇役に転生したはずなのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。
しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。
転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。
恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。
脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。
これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。
⸻
脇役くん総受け作品。
地雷の方はご注意ください。
随時更新中。
悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!
伊月乃鏡
BL
超覇権BLゲームに転生したのは──ゲーム本編のシナリオライター!?
その場のテンションで酷い死に方をさせていた悪役令息に転生したので、かつての自分を恨みつつ死亡フラグをへし折ることにした主人公。
創造者知識を総動員してどうにか人生を乗り切っていくが、なんだかこれ、ゲーム本編とはズレていってる……?
ヤンデレ攻略対象に成長する弟(兄のことがとても嫌い)を健全に、大切に育てることを目下の目標にして見るも、あれ? 様子がおかしいような……?
女好きの第二王子まで構ってくるようになって、どうしろっていうんだよただの悪役に!
──とにかく、死亡フラグを回避して脱・公爵求む追放! 家から出て自由に旅するんだ!
※
一日三話更新を目指して頑張ります
忙しい時は一話更新になります。ご容赦を……
最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??
雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。
いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!?
可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる