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62_劇の配役
しおりを挟む「はぁ…」
「ちょっとお、ため息ばっかりつかないでよー」
「すいません」
俺は運動会の実行委員会議に向かっていた。。気が重い…足も重い…
「決まっちゃったものはしょうがないじゃない。私と頑張りましょう」
「はぁ…」
イケメンと一緒なのも嫌なんだよ。イケメン滅べ。
ゆっくりと進んでいるにもかかわらず、確実にその場所にたどり着いてしまった。
「グダグダ言わずに入るわよ。リトちゃん」
姐さんは俺の手を引いて中に入る。
「はぁーい❤︎1年2組の体育祭委員でーす」
「目立つ!目立つから!」
勘弁してくれ。テンションがおかしいから。もっとこそっと入ろうよ!
「君たちが最後だよー。待ってましたー。ん?リトルくーん!!」
テンマ先輩は俺に気づくと抱きつこうとして来た。俺は逃げようとするが、そもそもの運動神経が違う。終わった。と思った瞬間。
ぐい
俺は横にいた姐さんに引っ張られえた。
「…邪魔しないでくれるー?」
「あら、なんのことかしら」
2人は睨み合って動かない。怖いよ。2人とも。
「そのへんにしとけ。リトルが困っている」
「ゴウ先輩!」
俺はゴウ先輩に駆け寄る。ゴウ先輩に関しては顔面偏差値が高くてもその人柄でチャラにされる数少ない人物だ。
「おう。リトル。元気にしてたか?」
「はい。ゴウ先輩も体育祭役員だったんですね!」
「いや、俺は風紀委員会としてな」
「そうなんですね。でも、ゴウ先輩がいるってだけで安心です!」
役員が嫌だった俺には知り合いがいるって言うのはとても良きことだ。
「意外なところにライバルがいたー」
「ざまぁないわね」
「うるさい。役員揃ったし、打ち合わせするよー!役員の出し物も決めなきゃいけないんだから」
役員の出し物。それも俺は嫌だった。毎年、クオリティの高い劇をしてるんだ。体育祭の後夜祭で。おかしいだろう。体育祭で劇なんて。普通文化祭でしょ。まぁ文化祭も劇あるけど。中学の時に見たときは圧巻だった。なんでも、理事長が劇好きらしい。
「出し物はもう決まってるんだよねー!」
はいはーい。と勢いよくテンマ先輩が手を挙げた。嫌な予感しかしない。先輩は勢いよく黒板に字を書いていく。
「ズバリ、クリスフィアの物語!」
クリスフィアの物語。辺境のお姫様の父親が暗殺され、お姫様はその敵を取ろうと王権を引き継ぎ復讐を誓う。しかし、復讐の途中で大国の王子と恋をする。最終的にお姫様は王子の思いに答えることなく、復讐相手と心中するという物語だ。
「…何でまた、その話なんだ」
「いやまぁ、クリスフィアの物語主人公はお姫様!お姫様といえばドレス。そう!リトル君のドレス姿が見れる!」
「何ですかその理屈!」
「僕はリトル君のドレス姿が見たいの
ー!」
「強引ねぇ」
「お前一人で決めるな。クリスフィアの物語以外にやりたいものがあるか?」
誰も手を挙げない。そりゃそうだ。テンマ先輩の提案だ。ここにいるものの多くがテンマ先輩の親衛隊なのに反対するか。というか俺こんなに目立って大丈夫かな…。
「じゃあ、配役だな」
「リトル君がお姫様で僕が王子!」
「あみだくじだ」
ゴウ先輩は文句を言うテンマ先輩をものともせず、黒板にあみだくじを書いていく。あみだくじの下は数字になっている。
「どの数字がどの役になるかは分からんからな。劇に出ない俺が組んでいく。じゃあ、みんな名前を書いて行ってくれ」
みんなそれぞれ名前を書いていく。
「リトちゃんはどこにするの?」
「俺はここがか人が少なくて書きやすいからここで」
「じゃあ、私はその隣にしちゃうわ」
俺たちは適当な場所に名前を書く。
「リトル君はお姫様の役取らなきゃだよ!」
「そんなの分かりませんよ」
「よし、埋まったな」
ゴウ先輩はあみだをどんどん進め配役を決めていく。そして俺の名前で止まった。
「…姫だ」
「え?」
「リトル、お前姫だ」
「は…??」
なんで!こんなに十何名もいて俺な訳…。おかしいおかしい!!
「さすがトラブルメーカー!リトル君なら引いてくれると思った!そして王子は僕でしょう!?」
「いや、王子はルクスリアってやつだ。お前は姫の敵」
「あら、私?これって運命かしら!よろしくね、リトちゃん」
「い、嫌だ」
俺は不幸だ。そんな俺を無視して話は進んでいくし、最初不服そうだったテンマ先輩も「リトル君に追われるのも悪くない」とか言っちゃうしもう、俺は知らない。
体育祭がますます憂鬱になった。
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