リトル君の魔法学園生活

鬼灯

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63_練習

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「これから毎日リトちゃんとこうやって劇の練習できるなんて素敵!」

「俺は素敵じゃない。劇の台本長すぎだ…覚えられない」

俺は台本とにらめっこしながら答える。なんなんだ。この長い台本。意味わからない。こんなの覚えられるわけがない。自慢じゃないが俺は頭が悪い。

「じゃあ、みなさんセリフ合わせをしましょう。噛んでも良いので止まらず続けてください。リトセクトル君お願いします」

監督兼脚本の先輩が声をかけるとみんな持ち場へ行く。俺も慌てて準備を行い、台本を読み始める。

「今は幸せなのかもしれない。裕福な暮らし、優しい婚約者。でも、私はそんな日常に飽き飽きしているの。メルはどう思う?」

「飽き飽きするくらいでちょうど良いよ。不変ほど素晴らしいものはない。」

うまいな、テンマ先輩。無駄に。

「カ、カッート!!リ、リトセクトル君…?」

「な、なんでしょう?」

「貴方、下手すぎです!主人公なんですよ!?もっと感情込めて下さい!!」

「えー?僕はリトル君のそのたどたどしい演技も可愛くて好きだなぁ」

「好き嫌いではありません!」

「ごめんなさい…」

演技なんてものこの人生で一回もやったことない。ましてや、主人公は女性で俺とは似ても似つかない人生。無理だ。


「ルクスリアさん、貴方も試しにセリフを」

監督兼脚本は姐さんに勢いよく言った。姐さんまで下手だったら困ると言うことだろう。

「やぁ、こんばんわ。こんな美しい月夜に悲しそうな表情は似合わないよ。何かあったのかい?」

「…上手いです!ルクスリアさんは問題ないですね!!」

監督兼脚本は姐さんの両手を掴んで興奮気味に言った。確かに上手かった。

「私は女優だもの」

「…余裕が腹たつ。イケメン滅びろ」

そう言ったら監督兼脚本はばっと俺の方へ向く。なんか怖いんですけど…。

「リトセクトル君!猛特訓ですよ!今回の劇はテンマ様もいて話題になっているんですから!」

「が、頑張ります…」

「並みの努力ではいけませんよ!死ぬ気でしてください!」

机をバンバン叩きながら切実に訴える。うん。ごめん、下手で。

「リトセクトル君は常に練習あるのみです!休み時間も練習ですからね!」

「やだ!」

即座に声を出した。なんで休憩時間がなくなるんだ。

「わ・か・り・ま・し・た・か?」

「は、はい」

怖い。怖すぎる。なにこの黒い笑み。拒否権がないじゃん。なにこれ、頑張るしかないの?

「リトル君は僕が指導してあげるねー!」

「何言ってんのよ。相手役である私に決まってるでしょう?」

「どっちもごめんだ!ヒルエに習う!」

平凡love。イケメンに習うくらいだったらヒルエに習う。

「ダメよ!このメンバー以外に物語をバラしたらいけないんだから」

「そうそう!」

「じゃあ、監督に!」

「誰の教えも文句を言わず乞うてください」

「はい…」

さっきより黒い笑みですよ…。この人には逆らっちゃいけない。俺は悟った。
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