リトル君の魔法学園生活

鬼灯

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68_幻迷のメディ

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俺は迷路に立っていた。転送魔法でどっかに飛ばされたらしい。目の前には看板がある。この文字は旧魔文だ。

「愉快な迷路にようこそ。君と私はここで勝負を行うんだ。君が本当の私を見つけることができたら君の勝ち。見つけられなかったら君の負け。負けたら君はここで死ぬまで迷い続けるんだよ。あはは。」

乾いた笑い声。楽しいのか、つまらないのかわからない。気持ち悪いやつ。

「私は幻迷のメディ。遊ぼうよ。ヒルエくん。君の負けは決まってるけどね。ゲームスタートだ」

ビビビー

「ち、勝手に始めんじゃねぇぞ」

とは言っても、なるべく早くこいつをどうにかしなきゃならない。セルトとギルは良いとしてリトルはやばい。しかも多分、リトルはラビと対面してることだろう。トラブルメーカーめ。

「このつまんねぇ遊びが終わったら絶対犯してやる」

だから、それまで生きてろよ。

「さて、まずはこの旧魔文か」

この字は一度見たことがある。読み方も知っている。ちょろいな。

「汝は蛇を望むもの。進むべき道は右の希望か左の絶望か。どちらかの道に潜む死を嗅ぎ分け、選んで見せよ。エデンの民よ」

なるほど、読めるだけでは先に進めないってわけか。んで、道を間違えれば死ぬと。

「普通に考えれば、希望と絶望なら希望の道を選びたいものだが。そんなに単純じゃないかもな」


エデンの民…
アダムとイブの話か。
なら、旧約聖書だな。

「我の知を形にせよ。知とはすなわち真であるーブック」

俺の手元には分厚い聖書が現れる。

「へぇー、自分の知識を本として取り出す魔法か。聖書まで入ってるとは驚きだ」

「なめんなよ、ガキが。これでも俺は頭がいい事で有名なんだよ」

自分でもわかるくらい不敵に笑う。

「そりゃ、楽しみだ。せいぜい悩みな」

「うぜえ」

俺は旧約聖書を開く。アダムとイブの章へ行く。

「蛇は悪魔の化身。悪魔は地獄より来た使者。蛇を望むんだから進むべき方向はこっちだな」


俺は足を進めて行く。暗く冷たい道を行く。しばらくすると明るい道に出た。

「絶望の道を選んだお前は正解だ。まぁ、旧魔文が読めればそんなに難しいものじゃないね。じゃあ、第2問」

目の前にモニターが現れる。そこに字が浮かび上がってくる。と同時にライオンの口に入った心臓が出てきた。

『君の心臓を食べたい』

「は?」

取り敢えず、そのライオンの心臓抜いてみた。「食べたい」ということは食べられないものだということだろう。

「っ…」

いきなりめまいに襲われて倒れる。俺は意識を手放した。


—————



俺は幼い姿でそこに立っていた。意識はしっかりしている。

「君の目の前には心臓がある。」

後ろから声をかけられて振り返る。そこには幼いリトルがいた。目の前には心臓が5つ並べられている。

「リトル…」

「ヒルエ。どの心臓を壊せば、ここから出られるでしょう?ヒントはこの中で1番大切な心臓を壊すんだよ」

この中で1番大切な心臓…。
といっても、大きさが違うだけであとはどれも同じだ。脈は打ってなく、血も付いていない。

「触ってもいいよ」

俺は試しに心臓に触れてみる。感触、温度共に同じだった。冷たくて、硬い。

「ちっ。かのモノの詳細を記せーサーチ」

試しにサーチをかけてみるが特に新しい情報は得られない。

見分ける方法は大きさしかないってことだ。俺と同じ年の心臓を大きさだけで見つけるのは容易じゃない。

とりあえず、1番大きい心臓と1番小さな心臓は除外しても良いだろう。可能性として低い。

残るは3つ。単純に考えるのならこの中で1番大きいのと小さいのを除外する。

「それで良いか?じゃあ、そこのナイフでその心臓を突き刺してくれ」

俺はナイフを手にする。本当にこの心臓で良いのだろうか。

「さぁ、早く」

俺は声につられるように手を振り上げる。この心臓で本当に良いのか。よく考えろ。大きさの違う心臓が。5つ…。

「そうか!」

俺は手を振り上げたまま体を反転させて、リトルを刺す。リトルからは赤い血が流れた。

「ど…して」

「この場にある心臓は5つじゃない。俺とお前リトルの心臓もある。そして俺は、俺よりお前リトルが大事だ」

「せい…かい」

リトルは意識を失う。それと同時に世界は歪み始めた。

「俺を騙そうなんて100年早いんだよ。ばーか」

リトルは歪みの中に消えていった。そして俺は大きな広間に立っていた。学園ではない。

「ち、とりあえずリトルを探すか」

俺は歩き出した。

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