リトル君の魔法学園生活

鬼灯

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71_精霊門

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「私の後ろに隠れていて下さい」

なんてクロはイケメンなんだろう。声かっこいいしな。

「俺も戦うよ」

「その怪我では無理です」

「どうにか動けるから」

クロばかりに戦わせるわけにはいかない。俺も頑張らないと。

「では、背に乗っていて下さい。」


「それじゃ、俺が邪魔だろう」

「いい加減にして下さい。我は主を守りに来たのです。乗っていて下さい」

「は、はい」

迫力に押されて降り損ねた。重くないだろうか。というか、なんか急に大人だ。

「準備は整ったのー?」

「ええ。お陰で」

「じゃあ、行こうか」

ラビは指をパチンと鳴らした。ティラノサウルスは進み始める。

「蠢く隠り世の手はかの者を掴むーダークハンド」

無数の手が俺たちを襲ってくる。しかし、クロは軽やかに避けていく。


「光り魂を神の元へ導くーカタルシス」

浄化の魔法をかけてみるが数が減るくらいで勢いがおさまるわけじゃなかった。

「ガルルルル」

クロは唸り声を出すと口から火をはいてティラノサウルスに攻撃する。ティラノサウルスはみるみる燃えて行った。

「ふん。ティラノサウルスと精霊じゃ、精霊に軍配があがるか…邪魔だね、君」

ラビの目が鋭くなった。

「精霊界に帰りなよ、子猫ちゃん」

「そなたが消えてくれるならば」

クロは気丈に答える。俺は全然話には入れない。おいてけぼりだ。

「精霊界の門よ。時間の狭間より、おいでませ。我、汝ら精霊を愛するものである」

ラビがそう唱えると、地面が揺れ始めた。


「なんだ!?」

「精霊界と人間界をつなぐ門を召喚しようとしてるのです」

「そんなこと出来るのか…」

「かなり高等な魔法になりますが、可能です」

それが使えるラビはやっぱり桁違いの魔法使いってことだな。

「主、逃げます」

クロは力一杯飛び上がり、割れた地面に落ちないようにする。割れた所から大きな門が出てきた。

「門が開いたらどうなるの!?」

「精霊がこちら側に流れます。召喚されてない精霊は門を呼び出した者の命令に背けません」

「それじゃあ…」

「圧倒的に不利になり、死にます」

なんてことだ…

「しかし、門がすぐ開くことはありません。門が開き切る前に其奴を倒せれば…」

「そんなことできないよ。僕、強いもん」

知ってるよ。でも、もしかしたらあの魔法なら…。俺はクロの上から降りる。

「主?」

「クロはそばにいて」

俺は大きく息を吸う。鼓動は早まり、手は震える。でも、しなきゃ殺される。

「蒼白の月は天使の影を映し出し、世界は白き翼に包まれる」

俺の足元には魔法陣が展開される。それと同時に俺の背に羽が現われる。

「ロストマジック…!リトル君、やっぱり、君は…」

ここまでは出来る、この次だ。

「いずれ…」

パリンッ

ガラスが割れるような音がして、羽と魔法陣は消えた。俺は地面に座り込む。上手くいかなかった。

「あははは、ハッタリだね。君にはまだその資格がないんだよ。ほら、もう少しで門が開いてしまう。破滅へ誘う、美しき門が」

門の中が見えていた。暗き闇に染まった空間。恐ろしい。

「主、門から距離を取りますよ」

クロは俺の首根っこを咥えて投げると自分の背に乗せた。

「我、天命の罰に繋がれし咎人なり願わくば、我…苦しみの海に消えることを…」

門が開いてしまう…
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