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76_クリスファアの物語
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開幕、クリスフィアの物語。
幸せだった。
王都の女性のように華やかではなかったけれど、ドレスが着れる。大国よりずっとずっと小さな国の武力のない国だけど、平和だ。
些細な幸せがクリスフィアの周りには溢れていた。あふれていたはずだったのにそんな幸せが崩れるのはいとも簡単だった。
「王の首をはねよ」
その行為に意味などはない。隣国の王子(テンマ先輩)の気まぐれ。人の命の遊戯。
「待って!待って下さい。父は、王がなにをしたと言うのですか!?戦争でもないのにどうして!?」
クリスフィアが大きな声で講義をする。
「何もしていない。だからつまらないのだ。こんなことで戦争でも起きれば、少しは楽しいだろう」
「そんなの…」
「お前も国に帰れ。せいぜい足掻けよ。箱の中の可憐な姫君」
クリスファアは力なく座り、兵士に引きずられながら王座を後にする。
そこで幕が変わる。
クリスファアの国の王室にて、
「私が王座を引き継ぎます」
「クリスファア様にはまだ早うございます。そもそも、女性が国王になるなど…!」
「これは国の挙げての復讐です。民の怒りはこの手に収めましょう。そして、私の憎しみも」
クリスファアは王冠を頭に乗せ、王座をものにした。民たちの歓声。
「私はこの国を守ります」
そこで幕が変わる。
とあるお茶会にて、
「素敵ね。あの方はどこの国の方?」
「まぁ、ご存知ないの?南の大国の王太子様よ」
御令嬢が噂をする先にいたのは、とても整った顔をしている王子(ルクスリア)だ。
「こんにちは」
王子はクリスファアに話しかける。クリスファアは綺麗にお辞儀をする。
「初めまして。私はクリスファアと申します」
「レギナーです。よろしくお願いします。良ければ一曲いかがですか?」
「喜んで」
クリスファアとレギナーが踊り始める。リトルに施した会長の特訓はこういう場面でも役に立っていた。
「今度、貴方の国に会いに行ってもいいかな?」
「はい。ぜひいらしてください」
親密になる両者に
周りは喜ぶ。このまま復讐など忘れてくれればと。
幕は変わり、
隣国の王室へ
「貴様は腑抜けだな。結局、戦争も犯さず、自国の財力のみ蓄えおって」
「戦争は、命の無駄ですわ。国の王となられる方ですのにご存知ないとはかわいそうに」
「何?」
「私は貴方を許しません」
「では、おまえは私に嫁ぐか?私のそばで飼い慣らされる哀れな豚…」
「はしたない。あなたには嫁ぎません」
そう言い切り部屋を出て行くクリスファア。その背中で不敵な笑みを浮かべる王子。
クリスファアが部屋を出ると以前会った南の国の王子がいた。
「やぁ、クリスファア。君はこの国の王子と結婚するのかい…?」
「いたしません。願わくば…」
目を伏せた先の言葉は相手に伝えることはない。そのかわり優しいキスを交わす。
もちろんフリのつもりだ。つもりなんだ。ルクスリアが近過ぎやしないか?どんどん近づいてないか?ちょっと待ってくれ。これはキスしようとしてるんじゃ…
ちゅ
交わされたキスの間には人差し指があった。
「本当のキスはリトちゃんの気持ちを手に入れてから奪ってみせるわ」
俺にしか聞こえないように呟く。
ウインクする姿はまさしくイケメンだ。
滅びろ。
赤い顔を隠しながら、舞台袖に隠れた。
幕が変わる。
結婚式の控え室にて、
「あなたはどこまでも非道で、
私のことが嫌いなのですね」
「私は君が面白くてね。つい、私の妻にしたくなった」
クリスファアは二つのグラスを用意する。
「どちらかに毒を入れます」
クリスファアはワインを注いで、白い粉を両方に入れた。
「どちらかが無害な粉。どちらかが毒物。いかがですか?」
「いーねぇ。退屈しないゲームだ。私は左をいただこう」
王は左を手に取ると飲み干す。それを見届けたクリスファアは右のワインを飲み干す。
飲み干すと王に抱きしめられた。クリスファアは抵抗せず、王の言葉を待つ。
「どうせ、どちらも毒なのだろう。本望だ。この世で一番興味のある女と死ねるなら」
「私も本望です。この世でいちばん憎い男と死ねるなら」
お互い純白の衣装は、
お互いの吐いた血で染まっていく。
「レギナー。せめて最後に抱きしめて欲しかったわ」
クリスファアのその言葉を最後に王もクリスファアも動かなくなった。
「憎しみとは、怒りとは、愛しいとは何か。この結末意外に他に選択肢はなかったのか。私は今でもクリスファア、君を愛しているよ」
レギナーはそのまま降りる幕に消えていった。
俺は幕が下りると、床へ座り込む。緊張で未だ震えていた。
「リトル君、すっごく可愛かったよー」
座り込んだ俺の頭をテンマ先輩が撫でる。
「可愛くないです」
「イケメンの僕が言うんだから可愛いに決まってるでしょー?」
「イケメン滅びろ」
何気ない会話をすると、緊張が解れる。
「「リートル」」
「うべぇ」
後ろから抱きついてきたのは生徒会の双子だ。
「可愛かったよ。さっきの声以外ね」
「うんうん、可愛かったよ、さっきの声以外ね」
「なんでお前らがいるんだ」
そして、何でここにヒルエがいないんだ。顔面偏差値下げようよ。
「これから生徒会の挨拶だもん」
「そうだよ。会長もいるよ」
アオが指差す方向にはレンがいた。俺は頭を少し下げる。レンは口パクで何か伝える。
「トラブルメーカー」
イラッとしたがそこで何か言い返したり、行動したりできる俺ではない。
「リトセクトル君、折角の衣装が汚れてしまう。立ちなさい」
梵先輩がそばに来てそう告げる。怖いので、すぐ立ち上がる。
「行くぞ」
会長のかけ声で生徒会メンバーは舞台に並んでいく。
「リトル、ありがとう」
ルクスリアがそばに来てお礼を言う。
「こちらこそだ」
なにぶん、俺の演技は棒読みだったし、ほぼ他の人の手柄だろう。
「楽しかったわね」
「おう!」
幕が上がり、開会宣言をしている会長を見てた俺はルクスリアが握りしめている拳には気づかなかった。
幸せだった。
王都の女性のように華やかではなかったけれど、ドレスが着れる。大国よりずっとずっと小さな国の武力のない国だけど、平和だ。
些細な幸せがクリスフィアの周りには溢れていた。あふれていたはずだったのにそんな幸せが崩れるのはいとも簡単だった。
「王の首をはねよ」
その行為に意味などはない。隣国の王子(テンマ先輩)の気まぐれ。人の命の遊戯。
「待って!待って下さい。父は、王がなにをしたと言うのですか!?戦争でもないのにどうして!?」
クリスフィアが大きな声で講義をする。
「何もしていない。だからつまらないのだ。こんなことで戦争でも起きれば、少しは楽しいだろう」
「そんなの…」
「お前も国に帰れ。せいぜい足掻けよ。箱の中の可憐な姫君」
クリスファアは力なく座り、兵士に引きずられながら王座を後にする。
そこで幕が変わる。
クリスファアの国の王室にて、
「私が王座を引き継ぎます」
「クリスファア様にはまだ早うございます。そもそも、女性が国王になるなど…!」
「これは国の挙げての復讐です。民の怒りはこの手に収めましょう。そして、私の憎しみも」
クリスファアは王冠を頭に乗せ、王座をものにした。民たちの歓声。
「私はこの国を守ります」
そこで幕が変わる。
とあるお茶会にて、
「素敵ね。あの方はどこの国の方?」
「まぁ、ご存知ないの?南の大国の王太子様よ」
御令嬢が噂をする先にいたのは、とても整った顔をしている王子(ルクスリア)だ。
「こんにちは」
王子はクリスファアに話しかける。クリスファアは綺麗にお辞儀をする。
「初めまして。私はクリスファアと申します」
「レギナーです。よろしくお願いします。良ければ一曲いかがですか?」
「喜んで」
クリスファアとレギナーが踊り始める。リトルに施した会長の特訓はこういう場面でも役に立っていた。
「今度、貴方の国に会いに行ってもいいかな?」
「はい。ぜひいらしてください」
親密になる両者に
周りは喜ぶ。このまま復讐など忘れてくれればと。
幕は変わり、
隣国の王室へ
「貴様は腑抜けだな。結局、戦争も犯さず、自国の財力のみ蓄えおって」
「戦争は、命の無駄ですわ。国の王となられる方ですのにご存知ないとはかわいそうに」
「何?」
「私は貴方を許しません」
「では、おまえは私に嫁ぐか?私のそばで飼い慣らされる哀れな豚…」
「はしたない。あなたには嫁ぎません」
そう言い切り部屋を出て行くクリスファア。その背中で不敵な笑みを浮かべる王子。
クリスファアが部屋を出ると以前会った南の国の王子がいた。
「やぁ、クリスファア。君はこの国の王子と結婚するのかい…?」
「いたしません。願わくば…」
目を伏せた先の言葉は相手に伝えることはない。そのかわり優しいキスを交わす。
もちろんフリのつもりだ。つもりなんだ。ルクスリアが近過ぎやしないか?どんどん近づいてないか?ちょっと待ってくれ。これはキスしようとしてるんじゃ…
ちゅ
交わされたキスの間には人差し指があった。
「本当のキスはリトちゃんの気持ちを手に入れてから奪ってみせるわ」
俺にしか聞こえないように呟く。
ウインクする姿はまさしくイケメンだ。
滅びろ。
赤い顔を隠しながら、舞台袖に隠れた。
幕が変わる。
結婚式の控え室にて、
「あなたはどこまでも非道で、
私のことが嫌いなのですね」
「私は君が面白くてね。つい、私の妻にしたくなった」
クリスファアは二つのグラスを用意する。
「どちらかに毒を入れます」
クリスファアはワインを注いで、白い粉を両方に入れた。
「どちらかが無害な粉。どちらかが毒物。いかがですか?」
「いーねぇ。退屈しないゲームだ。私は左をいただこう」
王は左を手に取ると飲み干す。それを見届けたクリスファアは右のワインを飲み干す。
飲み干すと王に抱きしめられた。クリスファアは抵抗せず、王の言葉を待つ。
「どうせ、どちらも毒なのだろう。本望だ。この世で一番興味のある女と死ねるなら」
「私も本望です。この世でいちばん憎い男と死ねるなら」
お互い純白の衣装は、
お互いの吐いた血で染まっていく。
「レギナー。せめて最後に抱きしめて欲しかったわ」
クリスファアのその言葉を最後に王もクリスファアも動かなくなった。
「憎しみとは、怒りとは、愛しいとは何か。この結末意外に他に選択肢はなかったのか。私は今でもクリスファア、君を愛しているよ」
レギナーはそのまま降りる幕に消えていった。
俺は幕が下りると、床へ座り込む。緊張で未だ震えていた。
「リトル君、すっごく可愛かったよー」
座り込んだ俺の頭をテンマ先輩が撫でる。
「可愛くないです」
「イケメンの僕が言うんだから可愛いに決まってるでしょー?」
「イケメン滅びろ」
何気ない会話をすると、緊張が解れる。
「「リートル」」
「うべぇ」
後ろから抱きついてきたのは生徒会の双子だ。
「可愛かったよ。さっきの声以外ね」
「うんうん、可愛かったよ、さっきの声以外ね」
「なんでお前らがいるんだ」
そして、何でここにヒルエがいないんだ。顔面偏差値下げようよ。
「これから生徒会の挨拶だもん」
「そうだよ。会長もいるよ」
アオが指差す方向にはレンがいた。俺は頭を少し下げる。レンは口パクで何か伝える。
「トラブルメーカー」
イラッとしたがそこで何か言い返したり、行動したりできる俺ではない。
「リトセクトル君、折角の衣装が汚れてしまう。立ちなさい」
梵先輩がそばに来てそう告げる。怖いので、すぐ立ち上がる。
「行くぞ」
会長のかけ声で生徒会メンバーは舞台に並んでいく。
「リトル、ありがとう」
ルクスリアがそばに来てお礼を言う。
「こちらこそだ」
なにぶん、俺の演技は棒読みだったし、ほぼ他の人の手柄だろう。
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