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08_魔力測定
しおりを挟む魔力測定。
S組の選定のために行われるこのイベントはある意味とても人気がある。…ということを今日、初めて知ったよ。
「なんだこれ…」
俺がヒルエと教室に入ると、鏡を見ながら念入りに髪をセットしたり、制服を整えたりしている奴らばかりいた。
「しょうがないよ。新入生の魔力測定は代々生徒会がやることになってるから」
俺が自分の席で呆気にとられていると、朝練で先に来ていたセルトが説明してくれた。
「…悪い。俺そういえば今日調子悪いんだった。帰るわ」
カバンを持ち、俺は回れ右をした。
ガシッ
ガシッ
しかし、俺の両腕はセルトとヒルエに掴まれた。
「ズル休みはダメだよ、リトル」
「テメェだけ逃げるなんてさせねぇよ」
「離してくれ!俺はイケメンに極力関わりたくないんだ!生徒会って言ったらイケメンでエリートじゃねぇか!出来れば視界にも入りたくない!」
ぐっっとちからをこめるが前には進めない。そりゃそうか。
「サボっちゃダメだよ、リトル」
ガラガラ
「おい、お前ら保健室に集合だ」
「ほら、諦めろ」
「後で1人で受けるより、今受けといたほうが良いよ」
「俺は逃げ続ける!」
俺は拳を握りしめ決意を口にする。
「行かないなら校庭の真ん中でお前を犯すぞ」
「さぁ、行きましょうか。ヒルエさん、セルトさん」
俺の決意は弱かった。ヒルエはすると言ったら絶対する。たとえ、俺みたいな色気のかけらもない俺でも犯す。
保健室はすごい熱気だった。生徒会メンバーの誰がいるんだろうとみんなそわそわしている。せめて生徒会長じゃないことを願おう…。
「では、皆さん、出席番号順に並んでくださいね。呼ばれたらこの中に入ってくださいね」
カーテンで仕切られた所を指しながら先生は言った。
「今日も可愛いなミーナ先生」
「アンアン言わせてぇ」
保健室の先生であるミーナ先生はイケメンだ。長い緑の髪に眼鏡。優しそうな雰囲気ではんなり系イケメンだ。
「じゃあ、一番の人どうぞ」
始まったよ…。俺は最後の方だけど、結構サクサク進んでる。
あ、セルトが終わったみたいだ。
「どうだった?」
「B+だったよ。すぐ終わるし、ヒルエが言った通り、半分くらいしか魔力使わなかったよ」
「凄いなセルト!」
「僕なんて全然だよ。もっと上がいるしね」
「俺からすれば凄いよ」
「リトルがそう言ってくれると嬉しいよ」
セルトは俺の頭を撫でる。ちょ、セルトさん周り見て!みんなの目がめっちゃ怖い!
「お前ら…」
呆れたような声でヒルエが中から出てきた。
「あ、ヒルエはどうだったの?」
「Bだ」
「はぁ!?平凡ならCだろ!?」
「うるせぇ。しょうがないだろ」
「やっぱり、ヒルエは平凡の皮被った非凡だったのか…」
「それ以上言うと犯す」
俺は自分の口を押さえた。これ以上余計なことを言ってはいけない。気を取り直して俺は大事なことを聞く。
「なぁ…それで、イケメンは?」
「「…」」
ヒルエとセルトはお互いを見合って黙り込んだ。何なんだよ!?
「リトセクトル君ー!」
「え、もう!?はーい!」
俺が行こうとしたらヒルエは俺の肩を軽く掴んだ。
「…どんまい」
「…不吉なこと言うなよ…」
俺は嫌な予感をさせながらそっとカーテンの中に入る。
「…げ」
「げって酷いですよ、リトセクトル君」
そう言って苦渋の表情を浮かべる天使。長い髪を巫女のように結んだ。優しい顔立ちの好青年系イケメン。生徒会会計、ナツメ先輩がいた。その隣には、ゆるい口調に着崩した制服が特徴のゆるゆる系イケメンテンマ先輩がいる。どうして2人もいるんだ!
「あれ~!この子ってナツメ君の同室の子じゃーん!前に見たことあるよー。はじめましてぇ」
テンマ先輩は俺に手を差し伸べる。俺は仕方なくその手を握った。
「初めまして…」
「リトセクトル君ちょー平凡だね~」
「よく言われます…」
早く離してくれイケメン。お前が言った通り俺は平凡なんだ。その辺のモブだよ。
「君、僕が手を握ってるのにうれしくないのぉー?」
「いや、特には…。あ、いえいえ!超嬉しいですよ!」
やべ、本音言っちゃった。
「…」
肩を震わせ始めたぞ…!
「…ぷっ、あははは、良いねぇ面白いよ君!気に入っちゃった」
なんで!?どこに気に入る要素があったんだよ!俺は早く魔力測定して退散したいんだ。
「あの…」
「あ、ごめんごめん。ねぇ今度部屋に遊びに行って良い?」
「あ、いや、ナツメ先輩の許可ないと…」
「…僕は構いませんよ」
「だって!じゃあ、今度遊びに行くね!」
嫌だ!!!というか、俺あとで殺される…。
「ほら、リトセクトル君。そろそろ魔力測定しましょうか、テンマ君」
「はーい。リトセクトル君、この水晶に魔力を注ぎ続けてね。良いよーって言ったら離して良いから」
やっとだ。早くこの空間から逃げ出したい…。俺は両手で水晶を持つ。意外に重い…。でも、きれいな水晶だ。とても澄んでいる。
「じゃあ、始めてください」
「はい」
俺は水晶に魔力を注ぎ始める。ヒルエさん、いってたよりキツイんですけど…魔力をどんどん吸われていく気がする。俺の頬に汗が滴る。ヤバい…
「ちょ、リトセクトル君大丈夫!?」
「テンマ君、あとどれくらいですか!?」
「あと少し…。リトセクトル君、魔力測定は途中やめできないんだ!なんとか終わらせないと!」
「だ…いじょうぶ…です」
嘘です。強がってます。マジ辛い!
「テンマ君!?」
「もう少し…もう…よし!!リトセクトル君離して!」
俺は水晶を離す。水晶はコロンコロンと転がっていった。割れないんだすごい…。
「リトセクトル君!?」
あぁ、先輩たちが呼んでる。でも、ダメだ。体に力が入らない…。
誰かに倒れる体を支えられた感覚がした。そこで、俺の視界は真っ暗になった。
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