リトル君の魔法学園生活

鬼灯

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27_前日

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先輩の部屋に行ったその日はすぐに休ませてもらえたが、次の日からは地獄だった。そして、俺は昨日から踊りっぱなしで前日を迎えている。はっきり言おう。まだ、形になってません…。

「ワン、ツー、ワン、ツー。違う!」

「すいません!」

こんな感じで昨日からずっと踊っている。足が痛い。痛いぞ…。

「あ、そうだ。お前の衣装だけどな。お前のサイズで俺が勝手に注文しといた」

踊りながら話しかけてくる会長。どこにそんな余裕があるんだ。

「は、い。どう、やってサイズを?」

「お前があほズラで寝てる間にパパッとな」


「色々、文句を言いたいですが、その前に一旦、休憩しましょう!喋っているとしんどい…」

会長は話しかけてはくるが踊りをやめてはくれない。会長ほど体力のない俺は酸欠になりそうだった。決して俺が軟弱な訳じゃない。会長が怪物なだけだ。

「チッ、しゃーねぇな」

会長は踊りをストップした。俺はその場で座り込む。疲れすぎて、フラフラする…。

「ほら」

「あ、マイスイートハニー、酸素ちゃん!ありがとうございます」

俺は酸素ボトルから酸素を吸収する。生き返った気がする。

「衣装は明日届くことになってる。せいぜい、衣装負けしないようにするんだな」

「会長はなんでも似合いそうですね」

「当たり前だ」

だろうな。予想どうりの答えだった。こんな事で謙遜するような人じゃない。俺は再び酸素を吸う。酸素ボトルを使うなんて事が俺の人生で起こるなんて。大抵、自分で回復させるんだけどな。今はミーナ先生に禁止されてるから。無視なんてしたら、俺の明日はないかもしれない。ミーナ先生は温厚そうで怖いから。

俺が考え事しながら、ひたすら酸素を吸ってると、視線を感じて顔を上げる。すると、会長と目があった。

「お前、俺様と舞踏会で踊るの怖くないか?あんな事があったんだし」

「…唐突で、すっごい今更ですね!?」

「あ"?今、ふと思ったんだよ。んで、どうなんだ?」



「だから、今更ですよ。イケメンと踊るなんて、歓迎じゃないです」

「答えになってねぇ。怖いのか?怖くねぇのか?」


「怖いですよ!でも、ここまで来たらやってやります。いざという時は会長がなんとかして下さいね」

俺がそういうと先輩は笑った。さすがイケメン。かっこいい。

「俺様に任しときゃ、なんの心配もいらねぇ。その恐怖も杞憂に終わるぜ」

「頼りにしてます」

「まぁ、お前が踊れずにブーイング受けるのは俺様じゃ庇いきれないがな」

「…」

俺はサァーっと血の気が引いていく。想像しただけでヤバい…。

「おら、練習するぞ」

「はい!」

俺はすぐさま立ち上がり、練習を再開した。失敗したら会長の足を踏むどころじゃない恐怖を味わわなくてはならなくなる…


------------------


今日も終わると同時に地獄のような練習も終わった。

「足が痛い…」

俺は1人部屋でそう呟く。ちなみに会長は隣の部屋だ。俺は余っていた部屋を使わせてもらっていた。

お風呂も入って、もう寝るだけなのだが、はっきりいって、この足で明日踊れる気がしない。やっぱり、先生は怖いが治療しよう。俺は足を掴み、魔力を集中させる。

ガシッ

「魔力は使うなと言われただろう」

俺の腕を掴んだのはもちろん会長だった。驚いた。会長は隣の部屋にいるはずなのに。

「会長、どうして?」

「お前の魔力を感じたから来たんだよ。まぁ、足が痛いはずだから今日の夜使おうとするだろうとは思っていたしな。たく、お前は…。俺様がいるんだから、俺様に頼れよ」

会長はそう言いながらポケットから白い勾玉を出した。

「それって…」

「光属性の魔力玉だ。ミーナ先生程じゃないが、治療ができる。俺様は属性が違うから、痛いだろうが我慢しろよ」

「え?」

そう言って会長は俺の足を掴むと、魔力玉に魔力を込めはじめた。

「ぐッ…あ…く」

痛い…。これは自分でするのより痛いかもしれない。

「よし、もう良いだろう」

「…意地でも自分で治せばよかった」

こんなに痛いとは思わなかった。マジで、痛かった。

「あぁ?ふざけんなよ。この俺様が直々に治してやってんのに」

「会長も人間なんだということを実感しました。光魔法は俺の方が上手いっす。イケメンに勝ったぜイェー」

痛みで変なことを口走っている気がするが、それくらい痛かったのだ。

「当たり前だろ。その代わり、火属性は俺の方が上手い」

「そこ比べないで下さいよ…。俺、魔力Cなんですから」

「はっ、どこまでも平凡だな」

「…イケメン滅びろ」

最初こそ遠慮して、この言葉を言わないようにしていたが、もう良いような気がする。もう知るか。会長はそんな小さい男じゃない。

俺がボソッとそういうと会長は笑った。

「お前は媚びないから楽で良いな」

「イケメンには媚びないっす…」

「それが良い」

会長は俺が使っているベットに横になる。

「ちょ、会長ここで寝ないで下さいよ?」

「あ?俺様が寝たってこのベット広いだろうが」

確かにこのベットはキングサイズで広い。だが、イケメンと寝るなんてごめんだ。

「会長ー」

「知らね」

そう言って目を閉じてしまった会長に、俺はもう諦めて布団の中に入った。まぁ、広いから良しとしよう。
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